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お父さん、あなたの娘でよかった。


「結婚する前は両目を見開いてよく相手を見極め、
   結婚したら片目をとじてあげなさい。」

こんな名言みたいなことを、幼少期の頃から大人になるまで再三言われて育った。父にだ。

友達がお母さんとお洋服を買いに行く中、私は父に服屋に連れて行ってもらったし、他の女子がお母さんとおでかけする中、私は父と映画館に行った。

車でいろいろな場所に連れてってくれた帰り道、車の中で寝てしまった私を家についても起こさずに、お姫様抱っこでベッドまで運んでくれる父だった。甘えたいさかりの幼少期、たまに抱っこで運んでほしいがために、家に帰ったことに気付いても寝たフリをした時もあった。

成長の過程で父と手を繋いで歩くことに恥ずかしさを覚えるようにはなったが、父と並んで歩くことに恥ずかしさを感じることはなかった。

父は、自分の幸せより他人の幸せを重んじ、困難や面倒事があるなら自分が買い被り、自分が我慢すればまるくおさまるようなことであれば先陣を切ってそうする、そういう生き方をする人だった。

父の生き方は、時に窮屈で、時に正直すぎて馬鹿をみる。ビックな成功も掴みにくいかもしれない。

だからと言うわけではないけれど、裕福な家庭ではなかった。

しかし、何か失敗して、例えばものを壊してしまったりだとかしてお金がかかるようなことがあっても
「失敗は次成功するための勉強代だ」と
ただそれだけ言ってお金を払ってくれた。
怒られるよりも反省した。

父に学ぶことはとても多かった。

そして、そんな父を羨ましく思うこともあった。
私にはない、趣味と特技があるから。

父の趣味は、ラジオ番組への投稿とライブ遠征。自分でギターも弾く。架空の「global music Office」なるものまで構えている。無類の音楽好きであり、無類の昭和男子だ。

70年代〜80年代のフォーク、ロックが大好きで、
ラジオ番組にその曲にまつわる自分の話などを交えた投稿をしては、採用されると喜んでLINEで報告してくる。

中でも愛してやまないのは浜田省吾。

彼にどれだけの影響を受けたかわからないが、
父の人生は浜省のおかげでとても楽しそうだということはわかる。

浜省のライブTシャツを着て、グッズのネックレスをして、やっと使い慣れてきたスマホに電車乗り換えアプリとGoogle mapをインストールし、楽しそうにライブのためにあちこち出かけていく。

結婚し、子供を成人まで育てあげ、自分の趣味を楽しんでいる父は偉大だ。

私は、あなたの子供でよかった。

あなたの遺伝子を引き継いでいると思うと、とても心強いから。あなたみたいに幸せになりたいという希望を持って生きていけるから。

父に、初めてギターを買った日のことを聞いた。

「中学卒業式の翌日、相方の家に5日間ほど下宿した初日に相方とともに街へ買いにいったのが最初のギター。モーリスのW-35つまり、35000かな、ハードケースその他もろもろで約50000ほどの買い物やったんやないかな。今はそのguitar訳あって手元にはない。」

そう、返信がきた。
父の中学時代の日本の物価からいって、とても高価な買い物であったと思う。
そしてそれは父がそれほどまでにほしかったものだったんだと思う。

私も音を奏でてみたい。

父をみていて純粋に何度も思ってきたことだったが、なぜだか手を出せずにいた。

だけど、父の影響で私も聴くようになった浜田省吾の「日はまた昇る」をしみじみと何度も聴き込むうちに、今の情勢ともリンクして、その歌詞がやっぱり私もギターを始めてみようかなという気持ちにさせた。

ちょうど外出も控えている。
ちょうど趣味も模索している。

打ち込むものをみつけるのには、丁度良すぎるタイミングかもしれない。独学は難しいかな、と一瞬ひるんだが、私は独学ではないな、と思い直した。

わからなければ、父に聞こう。
ほら、またこうして心強くいられるんだ。

父の特技は家族を愛し、守り、何も言わずとも進むべき道を照らせることかなぁと、勝手に思っている。


海鳴りの聞こえる丘で 青空を見上げて想う
この旅の途上で 愛した人の懐かしい面影を
今日まで何度も厄介な事に
見舞われて来たけれど
今も こうして暮らしてる
これからも 生きてゆけるさ
夕日が空を 染めてゆく
明日の 朝も 日はまた昇る
おれが ここにいるかぎり
おれが そこにいようといまいと
激しい河の流れを 静かに見つめて
闇の向こうに何があるのか
誰ひとりわからない
わからぬことを わずらうよりも
今日 この時を 生きていたい
河を渡り 谷間をぬって 頂きを越えて
長い旅路の色んな場所で
数えきれぬ人に出会う
誰もが 皆 自分の人生と闘っている
荒野にひとり君は立ってる
行く道は幾つもある
だけど たどりつくべき場所は
きっとただ ひとつだけ
どの道を歩いて行こうと
君は君の その人生を 受け入れて楽しむ他ない
最後には 笑えるように




最後まで読んでいただき、ありがとうございました。 このnoteが、あなたの人生のどこか一部になれたなら。