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【企画書】パンフレットとしての読み物


Introduction



3歳になる友達の子供が東京に遊びに来るというので、原宿のど真ん中で待ち合わせをした。

長野県の田舎町で生まれ育った、ごく普通の女の子だ。東京がどんなところなのか知っているのかは分からなかったが、ひとまず原宿の竹下通りへ行き、カラフルな飴やキラキラのグミなんかを一緒に沢山買った。

長野県では出来ないような体験だと思って、特別な日の思い出をプレゼントしたつもりだった。

3歳児は首から下げているミッキーマウスのカンカンにポイフルを入れて、上機嫌で神宮前を歩いていた。

お昼に、パンケーキが食べたいと言うので、贅沢にもbillsへ連れて行った。

「パンケーキが出来上がるまでに、20分かかります」とお姉さんが言うと、3歳児は「待っている間にYouTubeを見ればいいね」と言い、スマートフォンを慣れた手つきで操作し始める。

YouTubeのアプリを開き、広告をスキップしたり、おすすめ動画をクリックしたりしながら、容易にアプリを扱い出した。

生まれ育っている場所が長野県だとかそんなことは、全く関係ないのだな、と、その時、この時代を生きる「α世代(Z世代の次の世代)」を目の当たりにして思った。

3歳児の小さな手に操作されるスマートフォンは、大人がそうするのとまるで変わらない。どんどんと次へ次へ、画面が切り替わっていく。

幼少時代からスマートフォンやパソコンが身近にあり、小学校にあがってからもタブレット端末で授業が行われる世代だ。

すごいね、と言う私のことを、むしろ何がすごいのか分からないという顔で見つめてきた。

私達ミレニアル世代とはまるで異なる文化を創り出し、まさに手のひらの上でこれからの未来を変えていく世代なのだなぁ、と、なんだかはっきりと、そう思った瞬間だった。

そして、考えた。

今のα世代やZ世代は、どんな大人になるのだろう。どんな夢を持ち、どんなことを仕事にして、この世界を、どんな眼差しで見つめるのだろう。




◇◇◇


Production note #1



1994年生まれの私が、生きていれば80代を迎える2070年代。

その頃に、この世界はどこまで、どのように変わっているのだろうと、時々思いふけってしまうことがある。

「どこまで世界は変わるのか」そう考えたときに、根本として抱えるこの”地球上の大問題”は、そんなに大きく変わっていないのではないか、と思った。

2070年、なんて聞くと、随分と遠く先の話に思えるかもしれないが、戦争や紛争、核問題、テロ、増え続けるゴミ、地球環境破壊・・・それに加えて、宗教やジェンダーなどの、個に対する社会の在り方や、貧困問題・・・それらが、2070年になったからと言って、きれいさっぱり”終止符”が打たれる、いわば「答え」が出ているとは、到底思えなかった。

今のこの混沌とした時代は、「Volatility:変動性」「Uncertainty:不確実性」「Complexity:複雑性」「Ambiguity:曖昧性」という4つのキーワードの頭文字からとった言葉で、「VUCA(ブーカ)の時代」なんて、そう呼ばれている。

世界規模で感染症が大流行したり、戦争がずっと終わらなかったり、経済状況は混迷を極めていくばかりで、1年先の未来すらよく見えない。

そんな時代を生きながら、「もしこのまま私がおばあちゃんになるまで生きていたとしたら、その時は、自分が晩年を過ごすかもしれない80代くらいの時、この地球は、果たして、どうなっているんだろう。」だなんて、想像もつかないことだった。

だけど、それならば。

逆に、予測不能な未来だからこそ、どうなっているのかと、想像してみたくなった。

今、無邪気にこの「混沌」とした時代を生きるZ世代、そしてその次の世代とされるα世代が創る未来は、どんな場所なのか。

そして、私はおばあちゃんになった時、その未来で、どんなふうにして生きているのだろうか。

そんな疑問を、そのまま全部物語に詰め込んで、物語の中で、勝手に想像してみよう、そんなふうに思い書き始めたのが、小説『テレスコープ・メイト』の、発端だ。

1990年代中盤から2000年代初頭生まれの世代である『Z世代』。

”人類発のデジタルネイティブ世代”とも言われている。

・「モノ(商品)」よりも「コト(サービス・経験)」など娯楽や経験に価値を見いだす傾向が強い
・「持つ」ことより「シェア」することを好む
・競争に勝つことよりも自己実現や社会貢献への欲求が高い

CRITEO



そして、その次の世代は、全員が21世紀生まれの『α世代』だ。

この世代を調べた時に、ひとつ、大きくひっかかることがあった。

「Z世代・α世代を、生んで育てている多くは、ミレニアル世代なんだよな」ということ。

子供は、少なからず親の影響を受けて育つ。

ミレニアル世代は、破綻した経済状況の影響を受けながら育ち、かつ9.11や大きな自然災害などをリアルタイムで経験している。そのため「サステナビリティ(持続可能性 ※今後長期間にわたって地球環境を壊すことなく、資源も使いすぎず、良好な経済活動を維持し続けること)への意識が高い傾向にある世代」と言われている。

『その世代の親に育てられる子供』という観点から見ても、Z世代やα世代がデジタルネイティブとなり「変わっていく」ことが協調される半面、価値観や考え方は親世代に引きずられ、まさに負の遺産のようなものを多く残されているこの現実に、もう、どうしようもなくなりつつある『地球の大問題』を、この先の子供たちはどう処理するのか・はたまた、処理などしきれないことを分かった上で、”自主的ビックバン”を起こすのだろうか、という想像をした。

物語は、地球にはもう住めないからと、月移住を試みるZ世代と、「月に住むのは所詮人間、また同じ未来を繰り返し、月すらも環境破壊をしてしまう」と対抗するα世代。

その対比を、言葉足らずだが、それでも言葉を尽くして、書いてみている。

今のZ世代・α世代が大人になった時の物語を描こうとすれば、私が80まで生を全うしてさえいられればまだ生きているということになる。もしも、この物語の世界の中で生きるとしたならば、自分はこの世界で晩年をどう過ごすのか。主人公たちとともに、「それでも地球を選ぶのか。」
自分とも、深く対峙しながら、創作した。


◇◇◇


『テレスコープ・メイト』前編(第1話~3話)までを読んでくださった方々へ


心から、感謝いたします。

初めて物語を書いたので、時系列など、分かりにくかったと思います。

下記を、物語の解読に、少しでもお役立ていただけますと、幸いです。

近い未来を、本当に生きているかもしれない人々だと思いながら、登場人物を考えました。後編は、それらをもう少し分かりやすく、物語の中で描けるよう、善処します。


2010年 延沢(テレス創設者)誕生
(2023年現在13歳 Z世代として誕生

2020年 聡一郎・伸弥 誕生
(2023年現在3歳 α世代として誕生
 ※introductionでの3歳児との体験を下に想起

2039年 延沢29歳、『テレス』社設立
 ※今の自分の年齢と同い年にしました

2042年 聡一郎・伸弥『テレス』に新卒入社 
 ※2人には、新卒でベンチャー企業に入るようなイメージ

2048年 「ロケットのエンジンを応用し、月までいける旅客機をつくる」
  →延沢から聡一郎・伸弥へテレスコープを渡す。作中の「”私利私欲のための宇宙開発になってはならないよ”」

2055年 内閣府「宇宙省」より、ロケットエンジンを応用した旅客機を国の政策のひとつとしたいと申し出を受ける
(→宇宙省に呼ばれる延沢、ここでショーン・鶴岡太一と出会う)※未公開シーン。後編で登場。

2060年 アカリツヅミ 誕生 
(聡一郎・伸弥40歳、延沢50歳)
→8月23日:ショーン45歳・人類初の月移住者となる 

2065年 星・鼓 5歳 
→オリオン座流星群の夜、聡一郎・伸弥からテレスコープを貰う『テレスコープ・メイト』

2070年 星・鼓 10歳 小学4年
 4月  rocketjet開発成功
 5月  お披露目飛行 羽田ーNY間20分 世界の『テレス』へ
 9月  聡一郎は延沢から社長就任を依頼され、同時に延沢が企てていたある事実を知る(延沢60歳・聡一郎50歳) 
 10月20 日 聡一郎、星と『あの言葉』を共有。延沢のある企てについて、調査を開始。

2071年 3月 延沢、月へ移住
 4月 聡一郎、『テレス』に社長・伸弥『テレス』宇宙開発事業部長に就任

2073年 星・鼓 13歳 中学入学式 
サクラダリッカとの再会
→聡一郎、『あの言葉』を言うが何も起きず

2075年 星・鼓 15歳(中3)
 4月 飛行機墜落事故多発
 5月1日 星たちの隣町にも墜落 聡一郎、『あの言葉』を星へ
 5月2日 (第1話)朝の登校での会話
(第2話)社会科の授業後にTwōtterサービス終了、理科室にいるリッカの下へ走る2人。

星と鼓、そして聡一郎と伸弥。
後編、それぞれが、「真実」を探し始めたところから、スタート予定。


◇◇◇



『テレスコープ・メイト』後編、近日公開いたします。

話の展開の仕方など、筆力不足が目立つ箇所も、多くあるかと思います。

私が、ずっと考え続けてきたことを、ようやく形にすることができて、ようやく半分終わった、というところで、少し、息もたえだえです。

「生みの苦しみ」って、あるよなぁ・・・と、しみじみと思います。


それでも、誰かが読んでくれるって、本当に嬉しいことだなぁって、改めて、そう思えました。

感謝しています。



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