竹井隆人

京都在住の政治学者(博士)です。大学非常勤講師。「まちづくりシンクタンク」たる(株)都…

竹井隆人

京都在住の政治学者(博士)です。大学非常勤講師。「まちづくりシンクタンク」たる(株)都市ガバナンス研究所の代表。主に京都の歴史や文化を発信するギャラリーの製作監修、地域貢献施設の開発に注力中。著作多数、文章は多くの大学入試問題に採用されています。

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『京都・未完の産業都市のゆくえ』を読んで

(本稿は 2024/3/27 に『不動産経済Focus&Research』に発表した、有賀健著『京都・未完の産業都市のゆくえ』(新潮選書)を評しつつ、リベラルやグローバリゼーションの弊害と、その見直しについて述べた論考を再公表するものです。)  先般、京都では16 年ぶりに新市長が誕生した。しかし、市長選は白熱したものの「人口減少日本一」の現況を改め、若者の人口流出やオーバーツーリズムの課題解決に至るには枝葉末節の、それも対症療法をめぐる論議に終始したように映り、物足りなさ

    • 大阪万博と「多様性」の行方

      (本稿は 開催が危ぶまれる大阪万博のテーマともなっている「多様性」の矛盾を、先に成立したLGBT理解増進法と絡めて論じ、2023/11/15に『不動産経済Focus&Research』に発表した論考を、ここに再公表します。) 【前掲写真は議論を呼んでいる万博での木製リング】 「多様性」のパラドクス  大阪万博の開催が近づくにつれ、その準備の停滞がクローズアップされ、縮小や中止を望む声も大きくなっている。私はこれまで万博を観に行ったことがなく、今回も関心はまるで無いのだが、

      • コロナ禍におけるジェンダー論を憂う

        (本稿は高まるジェンダー論に接し、それに疑問を投げ掛けた2021/4/14に「不動産経済Focus&Research」に発表した論説です。ジェンダーどころかLGBTなどが持て囃される世論にいよいよ憂いをもつため、ここに再公表します。)   序論  発端は森元総理大臣による「女性は話が長い」の発言だったように思うが、男女平等を目指す政治活動めいた主張がいよいよ喧(かまびす)しい。それがジェンダーだのフェミニズムだのと似た意味の外来語を次々に繰り出す時点ですでに怪しさを覚え

        • グローバリズムと「本能寺の変」

          (本稿は、2023/7/5に「不動産経済Focus&Research」で発表した論考です。私が本能寺の再現模型を製作し、また、それを取り上げていただいたTV番組への出演を機に、当時の事変と現代社会とを重ね合わせて考察した内容となります。)【上掲写真は筆者が製作した本能寺再現模型】  先日、テレビ朝日「謎解き!伝説のミステリー~本能寺の変・黒幕の真相」から取材を受けた。私が当時の本能寺の再現を試み、その模型を製作して「粟田ギャラリー&ライブラリー」に展示していたからだ。それは

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          トランプ氏勝利に寄せて(グローバリズムの幻想)

          (本稿はトランプ氏が大統領選で勝利した直後の2016/12/28に「不動産経済Focus&Research」に発表した『TPPと建設市場(トランプ氏勝利に寄せて)』です。現在に至っても我が国がグローバリズムへの幻想にしがみつき経済成長(賃上げ)を達成できぬ現状を憂い、ここに改題して再公開します。) トランプ氏勝利への期待   先般の米国大統領選でトランプ氏が勝利した。我が国のマスコミや専門家たちは、前回の大統領選でのオバマ氏勝利では「黒人初の大統領」とこぞって狂喜乱舞し、果

          トランプ氏勝利に寄せて(グローバリズムの幻想)

          「文化」と「自立」 ―“ゴミ拾い”と“ポイ捨て”―

          (令和4年12月28日に「不動産経済Focus&Research」で発表した論考を公開します。写真はカタールW杯で敗戦後も清掃活動を行う日本人サポーター、『サッカーダイジェストWEB』12/27より。) “ゴミ拾い”と“ポイ捨て”  サッカーW杯で日本の躍進が話題になったが、それとともに世界中から賞賛の的となったのは日本人サポーターたちの“ゴミ拾い”であった。これを多くの有識者(コメンテーター)は、日本人の美意識の表れと持ち上げ、日本の伝統的な「文化」なのだと自賛した。

          「文化」と「自立」 ―“ゴミ拾い”と“ポイ捨て”―

          国葬から憲法とデモクラシーを問う

          (令和4年9月21日、つまり故安倍宰相の国葬儀の一週間前に「不動産経済Focus&Research」に発表した論考を公開します。) 憲法は全能なのか?  以前より、私は「改憲」だの「護憲」だのと互いに言い募る論議を、苦々しく眺めてきた。なぜなら、「改憲」は憲法を修正しさえすれば、一方で「護憲」は憲法を不変のままにしさえすれば、つまり、いずれの主張も憲法さえ(自分たちが考えるところの)「良きもの」であれば我が国が良くなるとの、憲法をただ崇める「信仰」に近いとさえ思うからだ。

          国葬から憲法とデモクラシーを問う

          神社と政教分離について

          (本稿は6年前の平成28年5月18日付「不動産経済Focus&Research」で発表した論考ですが、いま統一教会問題で揺れる「政教分離」を扱って、「信心」から離れていく世相を憂いたものであり、ここに再公表します。)【冒頭写真の左が下鴨神社、右が問題となったマンション】  式年遷宮の費用捻出 遷宮費用捻出をめぐって 世界遺産でもある京都の下鴨神社の境内における分譲マンション建設計画が波紋を呼んでいる。先日、その周辺住民たちが当該マンションの開発許可の取り消しを求めて提訴した

          神社と政教分離について

          「ウィズ・コロナ」なる業界と社会の虚妄

          (本稿はほぼ1年前、コロナ禍一色となった世相に対し、違和を覚えたことについて、2021/9/29に「不動産経済Focus&Research」に発表し、その後に https://fk-online.jp/archives/6520 として公開された論考です。) 同調圧力による専制  いつも不思議に思うのだが、現代日本人は日頃から「自由」が大切との言説に酔い痴れるクセに、ひとたびある種の「自由」を抑制する風潮が席巻するや、その同調圧力にシブシブ従うどころか、むしろ進んでその支配

          「ウィズ・コロナ」なる業界と社会の虚妄

          (追悼)デモクラシーの「申し子」だった安倍元首相

          (本稿は安倍元首相が2年前に首相を辞めると表明した報に接し、2020/9/9に「不動産経済Focus&Research」に発表した『首相の辞意とデモクラシーの虚妄』を改題して、追悼の思いを込めて再公表します。) 首相の辞意  先日、歴代最長の長期政権を担った安倍首相が辞意を表明した。出張先でその様子をテレビで見ていた私は驚き、かつ、この国の行方を思い、暗澹( あんたん)たる気持ちにとらわれた。  私はいわゆる「安倍信者」ではないし、その実行された政策には多々の異論を抱い

          (追悼)デモクラシーの「申し子」だった安倍元首相