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「ひまわり」の裏バージョン?~「昨日・今日・明日」

いまだ戦火止まぬ世情の中、それがオーバーラップする作品として1970年公開の傑作「ひまわり」が注目を浴びている。監督はヴィットリオ・デ・シーカ、主演はマルチェロ・マストロヤンニとソフィア・ローレン。
このトリオによる作品が実は7年前にもあったという。それが1963年公開「昨日・今日・明日」

これは3部からなるオムニバス形式。3つの話は無関係。ただ、男女の艶笑話をモチーフにしている点で、一本筋を通している。

これを見ると、むしろ「ひまわり」が例外的な作品なのではないかと思えてくる。まさに真逆の印象。
でもそれは底抜けの明るさというよりは、誰しも愁いや哀しみを抱えながらも、それを笑い飛ばすかのようなバイタリティに溢れている。

三部構成は「アデリーナ」「アンナ」「マーラ」と、それぞれ主役たる女性の名前が冠されている。中でも一番気に入ったのが3番目の「マーラ」。
ソフィア・ローレンの魅力はもちろんのこと、娼婦に振り回される情けない男をマルチェロ・マストロヤンニがいい塩梅に演じている。
ソフィアが服を一つずつ脱いでいく中、待ちきれないマルチェロが思わず「ウォー!」と叫んでいる場面とか、「ひまわり」の渋い演技からは想像つかないだろう。

「ひまわり」を観て哀しみに共感するのも良し、本作を観て笑って生きる力を得るも良し。映画の幅広さを同じ3人の作った作品から感じることができよう。

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