”羅生門”と”生きる”の間~「白痴」
海外の映画ではいまでも文芸作品の新作が上映されることがあるけれども、最近の邦画はとんと観なくなった。戦後まもなく、文芸作品の中でも最難関とも言われるドストエフスキーの作品を映画化したのが、黒澤明である。
当時のみなさんは、これを喜んで見に行ったのだろうか。。
1951年公開「白痴」である。
昔の角川映画のコピーに「見てから読むか、読んでから見るか」というようなものがあったけど、自分にとってこの「白痴」は「読んでから見る」だった。なので、それなりに理解はできたのだが。初見だと人間関係やストーリーがわかりにくいような気もする。
主たる登場人物を、森雅之、原節子、三船敏郎、久我美子が演じている。それぞれ迫真の演技で、それだけは観ていて引き込まれるポイントだと思う。特に主人公の森は、なかなかああいう演技できるものではない。
とはいえ、札幌を舞台としていながら、まったくリアリティが感じられない。どこかパラレルワールドのお話のように、ふわふわしているというか。生身の人間から遊離してしまっているのだ。
興行的にも奮わなかったようだが、それが次作「生きる」につながっていくというのだから、歴史はわからない。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?