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絶望と救済の物語~「バッファロー'66」

人間はなんと見栄っ張りなのだろうと思うことがある。特に男性に顕著だろうか。
でもその本性を知ってしまうと、腹立たしく思うより愛おしく哀れに思ってしまうことも、これまた多いようだ。
そんな男を描いた作品、1998年公開「バッファロー'66」である。

両親に妻を紹介すると約束してしまったために、偶然通りがかった女性を強引に連れまわして妻を演じさせるというところから、二人の物語が始まる。

こんな女性いないだろう!
と思いつつ、両親に愛されず仕事でもうまくいかず、生きることに絶望していた主人公ビリーの苦しみが次第に明かされてくる。

ビリーに対し無条件の愛を注ぐ、少女レイラ。その存在は正に聖母そのもの。すべてに絶望した人間を無償の愛で救済するというのが本作の大きなテーマなのではないかと、自分は鑑賞して感じたのだがどうだろう。

一方で、先にも書いた通りこんな女性はいない!というほど献身的なレイラは、全男性の希望というか妄想を体現した姿として描かれている。でもそれが決して下品に堕してなくむしろ崇高ささえ醸成しているのが素晴らしいと思う。

絶望と救済、欲望と愛情。全編通して静かなトーンで進む中、こういった普遍的なテーマを抽象的でもなく俗っぽくもなく描き出せているという点で、純粋にすごい映画だなと思った。

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