岸壁の”妻”とのん気な夫~「ユリシーズ」
日本ではあまりこのようなジャンルはないのだが、海外映画には神話モノが存在するようだ。
1954年公開「ユリシーズ」だとピンときにくいかもしれないが、言いかえればオデュッセウス。英語にすればオデッセイである。
英語のオデッセイとは、長い放浪の旅のことを指す。それがいまでは自動車のブランド名にもなっているわけである。
本作はその起源の冒険譚なのであるが、トロイア戦役に勝利した知将ユリシーズがトロイアの占い師カッサンドラに呪いをかけられたがゆえに、まっすぐ故郷へ帰れずに困難を極めていくという話。
妻である絶世の美女ペネロペは、何人もの求婚者から言い寄られているのを10年もかわし続けながら夫の帰りを待っている。10年って。。さすが神話、スケールが大きい。
この戦争からの帰りを待つ妻という設定。
公開した1954年当時ではけっこう身近にあったシチュエーションなのではないだろうか。第二次大戦で戦争に駆り出された夫の帰りを待つというのは、かのイタリア映画の傑作「ひまわり」でも描かれているとおりだ。
もちろん日本も同じような家族が多くいた。
とりわけ今でも鮮烈な印象とともに記憶に残っているのが、歌謡曲「岸壁の母」であろう。
この曲の元はユリシーズと同じく1954年に菊池章子が歌ったものがオリジナルだが、上の動画の二葉百合子版は1972年に発表されたもの。20年を経た後でも大ヒットしたという。
そう思うと、件のユリシーズは寄り道がてら魔女・キルケに歓待されてまんざらでもなかったり、キュクロプスの住処で飲み食いしたり、割といい気なものである。
ユリシーズといえば知恵でならした英雄なのに、その知性を垣間見ることができなかったのは少々残念ではある。
しかしカーク・ダグラスもアンソニー・クインも40才前!
なんともはや。。
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