ウィー・ウィル・ロック・ユー/クイーン We Will Rock You / Queen
高校に入学してまず最初に思ったのはとにかくバンドを組みたいということだった。
いや、俺は高校へバンドをやりに来たのだ。
そうに違いない。
神は俺にバンドをやれと告げたのだ。
中学時代はまわりにバンドやりたいやつなんていなかったし、中学の時デビューコンサートに壮絶な失敗して以来どこかで名誉挽回したいと思っていた。
まず入学初日に同じクラスの前の席に座っていたO合君に声をかけた。
「ねえ、一緒にバンドやらない?」
彼の答えはこうだった。
O合君「クイーンのロボットの絵のレコードは聴いたことあるよ」
俺「おー、クイーン知ってんだ。あれかっこいいよな」
実は「オペラ座の夜」「華麗なるレース」と続いたあの英国ならではのエンブレムのアルバムジャケットがカッコいいと思っていたので、最初にロボットのイラストのアルバムジャケットを見たときは少しがっかりしたのを覚えている。
俺「最初の曲のドンドンパン、ドンドンパンてところの頭に『あー』って小さい声みたいな音が入ってるの気がついた?」
「このアルバムもシンセとか使ってなくてさ、ブライアン・メイのギターの多重録音がすごいよね」
「ウィー・アー・ザ・チャンピオンてちょっとなんか恥ずかしいタイトルだよね」
「男でクイーン聴いてるやつあんまりいなくてさ」
などとまくし立ててなんとかバンドに引き入れようとした。
O合君「それより俺君、一緒にプロレス観に行かない?」
「ドリー・ファンク・ジュニアとテリー・ファンクのファンクスっていう2人組がいてなんちゃらかんちゃらなんちゃらかんちゃら、とにかくすごいんだよ」
ダメだ。
こいつはプロレス好きだったのか。
あぶないあぶない、逆に洗脳されそうになった。
今考えればみんながみんな高校へバンドをやりに来てるはずもなく。
俺ってバカなのか。
結局O合君をバンドに入れることはあきらめた。
だが、一緒にプロレスを観に行くのを断ったので、この年、俺は何度もO合君のラリアットを食らうことになった。
彼はその後地元の高校の体育教師になって、なんと俺の息子がその授業を受けることになった。
息子は「お父さんのせいで雑用をさせられる」と愚痴っていた。
人生って不思議なものですね。
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