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ロックンロール・ラブレター/ベイ・シティ・ローラーズ Rock N' Roll Love Letter / Bay City Rollers

ある日2つ年上の姉がラジカセ(モノラル)を持って部屋に飛び込んできた。
このころは子供部屋と称してプレハブの6畳ぐらいの離れ部屋を姉と共同で与えられていた。

「どいて!ベイ・シティ・ローラーズのコンサートが始まっちゃう!」
そう言うとテレビの前に陣取りラジカセ(くどいようだがモノラル)をテレビに向けて録音スイッチを押した。
「絶対しゃべっちゃいかんよ」

ガチャ。(録音ボタンを押す音)

「え?これもう録ってるの?」
「しっ!バカ、声入っちゃったじゃん!」
「バチン」(俺をたたく音。)

後でこの録音テープを聴いたら口論とバチンとたたく音が録音されていて、姉がテープを聴くたびに怒られる羽目になった。
当時ウチではテレビとラジカセを繋いでライン録音することはできなかった。
なぜならテレビにイヤホンジャックが一つしかないからコードで繋ぐとテレビから音が聴こえなくなってしまうのだ。

「あ、ウッディ、ウッディ」
どうやらこのウッディとかいう細身の髪の毛がツンツン立っているベース弾きが姉のお気に入りらしい。

とにかく観客がキャーキャーうるさくて聴こえないじゃないかと思った。
でも待てよ、曲はポップで嫌いじゃないぞ。
それどころか結構好きかも。
当時は本当に洋楽のアーティストは滅多に見られなかったので、英語で歌うバンドが動いているというだけで感動ものだったのだ。

次の日学校に行くと校長が朝の全校集会で
「60年代はビートルズ、70年代はベイ・シティ・ローラーズらしい」とか言う。
女子たちが「キャー」なんて言う。
校長は女子に受けたのがうれしかったようで、「私もまだまだ若いぞ」感を出してきた。
前の日に新聞か何かで読んで受けるネタを考えたんだろうな。
なんか媚びてるな。
子供はそういうの敏感に感じ取るんだよ。

教室に入っても女子が集まって昨日のベイ・シティ・ローラーズのテレビ番組のことを夢中で話している。
「レスリーカッコよかったー」
「私はパット」
「私はデレクかな」
「あはははは」デレクのところでみんなが笑う。
ここはお決まりのパターンで、少し変わった性格のN根さんがデレクがいいと絶賛して、みんなで笑うことになっているのだ。
「N根さん変わってるー」
言われた本人も他の人とは変わっている事がまんざらでもないようで、ちょっと人と違うポジションが嬉しいみたいだ。

「俺も観たけど好きだ」とは口が裂けても言えない雰囲気。

だって田舎だから。

その頃男子はみんな「矢沢永吉武道館ライブ」を聴いてた。
俺は洋楽が好きだったから矢沢永吉は聴かないけどキャロルみたいなロックンロールバンドは好きだ。
ビートルズが根っこにあるから、ギターバンドが好きなんだ。


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