メンタルヘルス不調のタイプ(類型)

メンタルヘルスはとにかく分かりにくい、というイメージが強いのではないでしょうか。

私自身も精神科医としてキャリアを開始した2001年は戸惑いました。

医学生の時に学んだ精神医学ではイメージしきれず、現実の患者さんに会いながら、学ばせて頂きました。

その中で、私が2010年以降、講演や大学での講義等で使用している「メンタルヘルス不調の3タイプ」をご紹介したいと思います。

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1つ目は「精神疾患型」です。これは、医療ニーズ、すなわち専門医による治療が必要な疾患です。具体的には、統合失調症スペクトラム障害、双極性障害、強迫症(強迫性障害)などが挙げられます。思春期・青年期に多く発症します。進学や就職などの大切な時期と重なりますので、これらの精神疾患によって、その方の人生は大きく影響を受ける事でしょう。疾患の影響を最小化するためだけでなく、症状が進行すると治療反応性が落ちる場合もありますので、早期発見・早期治療(2次予防)が大切となります。
 不安症(不安障害)や摂食障害なども、専門医による治療が必須の場合もありますが、軽度であれば、カウンセリング(心理療法)で改善します。
 なお、うつ状態/うつ病については、3タイプいずれにも生じえます。うつ状態、うつ病についての解説は別記事で詳細に行おうと思っております。

2つ目は「過負荷型」です。過労・オーバーワークによって、心身が疲弊し、うつ症状や不安症状を呈するタイプです。現代社会では、高いパフォーマンスが礼賛されます。子供も大人も注意しないと、すぐにオーバーワークになりかねません。働き方改革と声高に叫ばれているのも、適切な休息や睡眠が健康のために必要だからです。また、中高生の部活に対して日数や時間を制限するガイドラインも同様の目的でつくられています。高齢化社会における介護疲れによるうつ状態も、この過負荷型に含めて考えると分かりやすいです。
 軽い負荷でも量・時間が増えれば、過負荷になります。慣れない仕事や苦手な作業は短時間・少量でも過負荷になりえます。
 MLBで活躍されているダルビッシュ有選手が、You tubeでも原因不明の体調不良に2年間悩まされたことを語られています。ご自身動画内で述べられておられますが、「うつ」か「自律神経失調症」に該当するのではないか、と述べられています。ご自身でも振り返って、原因は休みなくトレーニングをしてしまったオーバーワーク(見学者に付き合い過ぎた)であったと述べられていますが、適切な理解と思います。ダルビッシュ有選手程の超一流選手であっても、自らが望んで行っているトレーニングや活動によって、過労=オーバーワークによる「うつ状態」になってしまうのです。https://www.youtube.com/watch?v=iSczvNhGezs
なお、ダルビッシュ有選手が、体調不良を改善させた方法については、今回は解釈を避けておきます。

3つ目は「不適応型」です。学校、職場、様々な社会環境によるストレスへの適応が困難となる事は稀ではありません。何をストレスに思うかは、個人差がありますが、捉え方の癖も多分に影響します。また、発達障害やその特性・傾向を有する方は、より適応が難しく、ストレスを抱えがちです。ストレスに対し適切に対処できないと「適応障害」「うつ状態」「うつ病」へと発展したり、過った対処がエスカレートして摂食障害や依存症に陥ることも多くみられます。
 対応としては、まず第一にそれらの体験や感情をシェアすることが大切です。身近にシェアできる相手がいれば良いですが、家族や友人がシェアする相手にしづらい場合も稀ではないでしょう。
 また、自分の性質を理解するとともに、対応スキルを上げていく事も長い目で見れば大切ですが、1人で行う事は困難な場合が多いでしょう。
 それぞれに対して、プロフェッショナルによるカウンセリングを受ける事が有効です。不適応も過度になると、うつ状態、うつ病と発展していきますので、不調が本格化しないように対応していく事が大切です。

なお、タイプ②「過負荷型」とタイプ③「不適応型」は重複するケースもあります。人生には様々なことが起こり、それらのストレスを乗り越えていくのは容易ではありません。たとえ誰しもが経験しえるライフイベント(例:家族の死や介護)であっても、それを乗り越えるのが簡単とは言えないでしょう。妊娠や出産も同様です。そのような時に、適切に周囲のサポートを得る、引き出す、という行動をとれるかどうかは、大切なスキルです。

精神科専門医はニーズに対し圧倒的に不足しています。そして、私は本来、精神科専門医という限られた資源は①の精神疾患型に充てられるべきだと思っております。そもそも、②の過負荷型や、③の不適応型から、本格的なうつ状態/うつ病や他の精神疾患に発展して、治療が必要な状態になることは、専門医にとっても、その方にとっても、望ましい事ではありません。
 誰もが、メンタルヘルスについてオープンに話せる、プロフェッショナルのサポートを受けられる、そういう社会を実現していく事が、私の責務だと思っています。私達が運営するオンラインカウンセリング「マイシェルパ」がその一助になれれば、と思っています。

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