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アカデミックポジションの博士がどうやって民間へ転職?アラフィフ研究員の転職体験記

博士課程を修了し、ポスドクで研究を継続されている方は大勢いると思います。そのまま研究者の道を歩むか、企業へ転職をするのかは研究人生の大きな分岐点になります。日本国内で安定したアカデミアのポストに就くのは非常に狭き門です。この記事は、50歳を目前にアカデミアから民間企業へ転職した私の体験などを紹介します。あわせて、博士課程修了者、ポスドク、助教、任期制研究員、理系大学卒の女性(リケジョ)などアカデミックポジションの方の仕事探し、民間企業へ転職する際のノウハウをご紹介します。


情報が充実してきたため、下記サイトでリニューアルしました。


アカデミアから民間企業へ転職した私の場合

私は20年以上、アカデミアポジションで研究員をしていました。ところが、2018年に国の政策で無期雇用転換ルールが適用されました。無期雇用転換ルールとは、「企業との間で、有期(任期付き)労働契約が5年を超えて更新された場合、期間の定めのない労働契約(無期労働契約)に転換されるルール」です。つまり、任期のない正社員に転換できるというルールです。これは労働者を守るために制定されたものでした研究所勤続5年で、任期制研究員を無期雇用に転換しなければならなくなりました。そこで、研究所は該当する研究者の契約の打ち切りをはじめました。つまり雇止めです。必然的に勤続10年を経過すると退職させられることになりました。そこで、40代半ばから本格的に転職活動をしました。JREC-INなどで公募情報を見つけては、応募書類を仕上げて、書留で送ること数十通。書類通過したものは一つもありませんでした。不採用の通知には応募者が数百人いたと書かれていたケースもよくありました。私自身、論文も科研費、外部資金もそれなりに持っていたのですが、はやりCNSクラスの論文を複数持っていて、トレンドの研究分野でなければ、いまや地方私立大学の助教の公募に出してももかすりもしません。

そこで、アカデミアの公募に応募しながら、アカデミア出身者の転職に強い転職エージェントに登録しておきました。国内の民間企業には根強い博士アレルギーが存在することは知っていたので、保険のつもりでいくつかのエージェントに登録をしておきました。

すると、とあるエージェントから思いもよらないスカウトの連絡が届きました。年収はアカデミア時代よりいいし、今の研究を生かして新しいプロジェクトを立ち上げ、しかもプロジェクトリーダーを任せてもらえる。実はこのときはまだ科研費や外部予算もずいぶん残っていました。雇止めまでまだ2年ほど猶予がありました。研究も本当に大詰めの段階で、半年以内でCNSに投稿しよう、というところだったのですが、そもそも給与がいい、任期の心配もない、外部資金は取らなくてもいい、同僚との競争や足の引っ張り合いからも解放される、論文がでなくても心配ないなど、結局スカウトの好条件に負けて47歳で民間企業へ転職してしまいました。

ちなみに49歳のときには、別の案件のスカウトをいただき、再度転職に成功しました。

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転職エージェントのメリット

アカデミアではあまり利用しない転職エージェントですが、企業への転職をする際にはたいへん便利なサービスです。
まず、サービス料は無料です(ビズリーチの有料会員を除く)。経歴などを登録しておくだけで、応募者の実績や経験にあった求人をスカウトやヘッドハントという形で紹介してもらえます。
企業への応募は、エージェントからの推薦ということになるため、「推薦状」や「紹介状」が添付されます。そのため、書類通過の確立が格段に高くなります。さらに、内定後の年棒交渉もしてくれます。私の場合ですが、企業から提示された年棒から交渉後にはさらに1~2割アップしていました。

ベンチャー企業には要注意!

今回の転職先は10人程度と数百人規模のベンチャー企業でした。いずれも共通して言えることは、経営陣の個性が会社全体に反映されていて、本当に強烈な社風のベンチャーが多い、ということです。アカデミアの常識はベンチャーでは全く通用しません。特に、コンプライアンスには要注意です。ギリギリのラインを攻めるのは当たり前で、ばれなければ良しとコンプライアンスを無視して業務を指示することもありました。ちょっとこれはまずいのでは?なんていっても、ベンチャーの経営陣は「とにかくやれ!」の一点張り、なんてこともありました。

アカデミアではだいたいどこのラボもノーマライズされていて、アカデミア業界の常識の範囲内で収まっていますが、ベンチャーではそういったことはないことを覚悟しておいたほうがいいですね。

あと、福利厚生や有給が少なかったり、みなし残業代が年棒に含まれていることもよくあります。また、産休、介護休暇、育児休暇など法令で定められている休暇は一応取得できますが、欠勤扱いになるベンチャーもあります。当然、夏休みはなし。年末年始はかろうじて数日間休み(経営陣はこれでも甘えさせているといっていましたが)。あと、退職金制度やボーナスはまずありません。裁量労働制や年棒制、といった制度を取り入れているところも多いです。労働環境はやはり大手企業にはかなわないですね。

ちなみに採用面接で社長がTシャツ、短パン、サンダルで現れるようなベンチャー企業がありましたら、絶対にやめておきましょう(経験談より)。

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40代後半で求められるもの

40代後半の転職は間違いなく難航します。ただ、専門性や経験がピンポイントで一致した場合には採用につながることもあります。そのためにも、根気よく探すことが重要です。これに加えて、マネジメント経験や部下の育成力が求めらることもあります。40代後半になれば少なからず、部下や後輩の指導経験はありますので、面接で聞かれたときには「はい、マネジメントの経験はあります」と答えておくのが無難ですね。

面接でのコツ

面接で必ず聞かれること、それは「退職理由」です。それぞれ事情があって退職や転職するわけですから、正直答えにくい質問です。ただ、あまり正直になって、前職の会社や上司、待遇面などの不満などネガティブな内容を言ってしまうことだけは注意しましょう。決定的にマイナス印象を与えます。あくまでポジティブに。

「足の引っ張り合いがあったので辞めました」

ではなく

「お互いを協調して、一致団結して仕事に打ち込みたい」

などと言い換えましょう。

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最後に

日本の民間企業の場合、博士の採用実績は6~7%程度と低迷しています。

「プライドが高く使い勝手が悪い、コミュニケーション能力も低い」
「専門性が高すぎてミスマッチ」
「新卒を採用して教育したほうが会社にマッチする」

というイメージが定着してしまっているのが現状です。

しかし、近年は外資系企業やベンチャーなど博士の採用に積極的な企業が増えてきました。さらに博士課程出身者向けの就職情報を提供し、博士を必要としている企業を紹介してくれる転職エージェントも増えてきました。実際、転職したはいいが社風になじめず退職していまう博士も多いのが現状です。ミスマッチを減らすためにも、博士の転職にはこういった転職エージェントの利用をおすすめします。

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