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シニアタイムズ第9話 古希の初恋物語

今さら、初恋話をされてもねえ。
古希の同窓会の二次会でのこと、
「河野さん(旧姓)は、昔〇〇君とつきあっとうとね。」
と聞かれたのです。
高校時代の恋バナは今では遠い遠い、
恋に恋していた頃の話です。
心がどんなにあの頃にもどっても、
現実は古希。
青春のときめきは、そーっとしまっておくのが美しい、と。

卒業アルバムを開いて確認しなければ、
わからないほど変貌した同窓生との
会話は結構難しいものがありました。
女子の顔は卒業アルバムを見なくても、
すぐにわかるから不思議です。

そんな会場で、物故した同級生の写真が紹介されました。
最後の一枚、若い頃と変わらぬ柔らかな笑顔の友人が映し出されると、
ひとりの男性が前に歩み寄り、
マイクをもって、告白をはじめました。

「僕はあなたのことが大好きでした」

顔を真っ赤し、声を震わせながら、瞬間あの時代に戻ったMくん。
そうだよね、あの頃は言えなかったよね。
それが青春だね。

「蟹瀬、前に出てなんかひとこといわないかんよ」
もともと男子校だった福岡の筑紫丘高校には、
当時女子の数は2割弱ととても少なく、
同窓会に参加した女子も10人くらいでした。
その中にあって、現役で働いる私に白羽の矢がたったのです。

会場を見渡すとぽつぽつと、昔の面影がある顔が見えます。
ああ、あの人とは一緒に運動会でがんばったなあ。
ああ、あの人はバスケ部でとてもモテてたな。
ああ、あの人の夢は赤いじゅうたんを踏むことだったな。

いくつもの映像が、言葉が浮かんできました。
その時、私が気づいたことは、
ともに同じ時間を過ごした仲間への感謝でした。
「校内どこを通っても男子だらけで、しかも、いろんな種類の男子がいる高校で学んだからこそ、ビジネスウーマンとして男社会でも頑張って働いてこられたのだと思います。感受性がとてつもなく豊かだった頃に異性から学んだ、男女の差異。これがわかっていたからこそ、社会に出ての処し方が自分なりにできたのかもしれません。」

「初恋、失恋、受験の失敗、クラブ活動、運動会、友情。
それこそ、ユーミンの曲に出てきそうな世界を経験しました。
高校時代は私の宝の時間です。」と結びました。

こうやって同じ時間を過ごした人たちと
想いでを語り合える幸せに 
古希の声を聞いてやっと気づいた気がします。
感謝しかありません。


誰もが来た道、誰もが来る道、
同じ道なら、幸せな時間を楽しみましょう。






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