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執着心(恋模様2年1組#7)

出席番号2番 飯野川ジン 

 俺には、人望がない。なんとなく最近そう気づいた。今年の春に、バスケ部のキャプテンになったけれど、日に日に俺には向いてないと思っている。

「休憩入るぞ」
 部員達からは気のない返事。もう慣れてしまっているけど、やっぱり虚しい。

 父の影響で、バスケは5歳から始めた。家の庭にも小さなゴールがある。バスケは好きだ。だけど、今の部活の雰囲気はあまり好きではない。奥では、卓球部の連中がいる。あいつらの方が、なんだか楽しそうだ。冴えないヨシトの方が、俺なんかより部員をよくまとめている。

 水道で顔を洗い終えると、テニスコートのユウナと目があった。ユウナは、予想通りすぐに目を逸らす。

「好きな人ができた」

 ユウナにそう言われた時、俺は何も言えなかった。家に帰りついた後、「誰か教えて」と送ったLINEには返事はなく、次の日に「電話していい?」と送ったメッセージは、既読にもならなかった。きっとウザいことをしたのだろう。

 何がいけなかったのか。告ってきたのは向こうで、上手くいっていたはずなのに。初めて出来た彼女に、俺は浮かれていたのかもしれない。

 ユウナが知らない男と歩いているのを見たのは、その後すぐだ。その時、俺はリュウキといた。

「お前の方がかっこいいのにな」

 俺は、昔からモテない。それは自覚している。身長182センチ、スポーツだって得意な方で、結構、有名な美容室のカットモデルに声をかけられたこともある。だけど、俺はモテない。

 小中学校ではバスケ一色で、恋愛なんて二の次だった。だからだろうか、俺はなんだか周りより劣っているような気がしている。

「お前、本当に彼女のこと好きだったの?」

 リュウキの問いかけに、答えることは出来なかった。好きってなんなんだろう。ベッドに横たわると、ユウナからの返事を期待して、スマホを覗く自分がいる。

「それは、執着だな」

 リュウキ、俺もわかっているよ。だけど、それを認めると自分をたもてなくなりそうで、お前にはわからないよ、と言ってしまった。

 俺は、多分、自分が好きではない。愛し方も愛され方も、多分よくわかっていないんだ。

 フリースローは、リングに弾かれる。誰もいない体育館に、ボールのバウンド音だけが響いた。そのまま寝転んだ俺は、深いため息をつく。

 愛されたい。

 俺はいつか自分を好きになれるのだろうか。


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