【読書】「空腹」こそ最強のクスリ【健康】
気になっていた本『「空腹」こそ最強のクスリ』を読みました。健康、若さ、ダイエット、美しい身体、疲れ・だるさの解消等を追い求めるのは、誰しもの永遠のテーマです。そんなものいらん、という人は少ないのではないでしょうか。
私の興味範囲だからこそ目につくのもあると思いますが、近頃他の本『LIFE SPAN 老いなき世界』や『最高の体調』等でも、この関連は賑わっています(どちらもとても良い本です)。それだけ人気がある分野で、売れ続けるということは、買う人の目標達成もされていないことを意味しています。完全に健康になって病気にもならず太ることもまったくないとなれば、本は売れないので、ここまで流行りません。
健康系というと、「○○食べるだけダイエット!」とか「●●するだけで健康!」のように単純化と怪しさがつきまとうもの。そして時代とともに正解とされるものも移り変わっていく。それを前提に何事も疑いを持って臨むべきですが、何もせずに外野から批判だけする人にはなりたくない。
ということで、『「空腹」こそ最強のクスリ』を1月末に読了し、2月1日から本日(2月23日)まで22日間実施してみました。読んで印象に残ったこと、やってみた感想、メリット・デメリットとさらなる疑問点をまとめてみました。
◆1日3食という常識を疑え
1日3食になったのは明治以降という話が取り上げられていました。私はまずそこを知りませんでした。
あくまで習慣化されただけで、何か強い理由や根拠があって3食になったというよりは、いろいろな利権が絡んでそう落ち着いたというところでしょう。エジソンはトースターを発明した後売上を伸ばすために1日3食のマーケティングをしたと言われているらしいですし、シリアルメーカーは朝食の利点を強調します。食品メーカーの立場であれば食事の機会は3食+おやつ、と多い方が良いに決まっています。
TVでは食品系のスポンサーも多く、夕食時間帯のCMを通した経済活動の中で、特にTVの健康特集番組では疑問視されてこなかったのは当然だと思います。
原始のヒトは朝食なんて用意できなかったとか、江戸時代の多くの人達は1日2食だった話も出てました。
ただし、ここで冷静になりたいのは、条件が複雑でそれぞれ違うので、何が正解か、本に書かれたことを鵜呑みにするのは避けたいということです。だって生活パターンが全然違いますから。原始のヒトは日が落ちた後の活動はできなかったはずで、江戸時代も職種によっては3食だったようですし、それぞれ寿命も違います。
ただし、1日きっちり3食=常識 を疑う、という観点は持っておきたいものです。
◆消化にかかる時間
ざっくりと消化について印象に残ったことを箇条書きで記してきます。
・食べ物胃の中の滞在時間2~3時間、脂肪分多いと4~5時間かかる
・さらに小腸で5~8時間、大腸で15~20時間かかる
なんとなく食事は食べている時のことが印象的なので、消化にこんなに時間がかかっているとは…。それなのに
・食間の時間は4~5時間、長くて6~7時間
ということは、小腸・大腸さんとしては前の食事の消化中にもう次の食事をぶち込まれてしまうというブラック労働となっているわけです。ブラック労働によって、
・栄養吸収の効率が下がる、一部腸での腐敗を招く
と記載がありました。胃には拡張性があるため、放り込めばある程度は広がることができるため、それを意識していないと食べすぎの原因にもなります。
このような医学の勉強にはアニメはたらく細胞とはたらく細胞BLACKがおすすめです。知人の医療従事者でさえ、楽しく観れるし、学生の時に観たかったと言ってました。れっきとした医学の勉強ですよ。
◆空腹時間を作る→脂肪燃焼→オートファジー発動
本書のメインテーマである空腹時間を作ることについて。話の流れとしては、私たちは過剰な食べ物を摂取しているため、空腹時間をもつことで、内臓を休ませましょう、ということです。
空腹時間が10時間経つと肝臓で蓄えた脂肪が燃焼しはじめ、16時間経つとオートファジーが機能し始めるそうです。オートファジーも本書のメインテーマです。オートファジーとは、2016年に大隅教授がノーベル生理学・医学賞を受賞したアレです、アレ。素人に説明は危険なので、東京大学水島昇教授の動画を貼っておきます。
・細胞内のリサイクルによる秩序:オートファジーについての動画
要はタンパク質の体内リサイクルのようなもので、体内のエネルギー工場であるミトコンドリアを不用品かき集めて再生してくれるみたいです(ちゃんと理解できる人間になりたいものです)。
空腹時間を作ることで、内蔵を休め、脂肪を燃やし、オートファジーの恩恵を受けようではないか、というところに論点としては落ち着きます。
◆実践してみた(前提条件)
原理原則、科学的根拠はプロに任せるとして、22日間実践してみた感覚について共有しておきます。個人差が大きいので、まずは前提条件を。
<前提>
・30代男
・ダイエットが目的ではない(筋肉は落としたくない)
・標準的な体型(BMI22)
・ハードな運動はしていない(軽い運動を週1程度、日々軽めの筋トレ)
・仕事はデスクワーク中心
・食べることに強い関心はない
<16時間の空腹時間をどう作るか>
・在宅勤務など早めに夕食を食べられる時:
20時に夕食 → 翌日朝食抜き → 12時に昼食
・夕食遅くなってしまった場合:
22時に夕食 → 翌日朝食抜き → 14時に昼食(在宅勤務or休日)
で16時間確保です。睡眠時間をまたぐと確保しやすいです。
◆実践してみた(感想)
・空腹に耐えられない、なんてことはほとんどなかった
→ 書評の中にはきつくて続かなかったという方も見かけましたが、個人的には全然そんなことはありませんでした。学生の頃もご飯食べずに夕方まで寝たり、夢中になりすぎて食事抜いたりしていたので、そういう習慣の差でしょうか。
耐えられなくなってしまう人は普段が食べすぎなのでは…?あとグルメな人はストレスかも。
・「空腹力」が高まる
→ 抽象的ですが、空腹ってこんな感じだったな、と思い出す感じです。普段それだけルーティンでなんとなく食べていたと自覚しました(朝弱いタイプで朝ご飯なんて正直無理やり食べていたので)。
本来、身体が必要とするエネルギーを必要とする分だけ取り込むべきなのに、たくさん動いた日も、全然動かなかった日も同じだけ食べておりました。反省。
・内臓が休まる感じ…は自覚できず(ただし便通は明らかに良くなった)
→ 軽く便秘気味のタイプでしたが、これは解消しました。水を良く飲むようになったからなのか、内蔵が休まったからなのかは自覚できません。実践前は空腹時間に胃が痛むのでは、とも考えてましたが、それも特に感じませんでした。
・摂取カロリーは減った
→ 食事を抜いた分、ドカ食いしてしまうかもしれないと思っていましたが、そうなりませんでした。1食で食べられる分には限界があるので、1日の摂取カロリーで見ると減りました(アプリで記録をつけて検証済み)。
・脂肪燃焼、細胞活性化…自覚できず
→ 意識的に筋トレしたので、筋肉量は落ちていない感覚。逆に言えば、摂取カロリーが減るので、筋肉もろともであれば体重を減らすことは簡単そうです。空腹の時間に脂肪も筋肉もエネルギーに変わってそう、という感想。
・よく考え、身体の感覚が研ぎ澄まされる
→ 実質2食となると筋肉を落とさないために何を摂取するか、よく考えます(かっこいい身体を手に入れたいわけで、体重の数字は別にどうでもよいです)。食事機会が減ると変なものは食べたくなくなります。
あと、空腹になってから食べるご飯がおいしいのは間違いないですね。
◆注意すべきこと
本ではあまりデメリットには触れられていなかったため、注意すべきことはいろいろとあると思います。ここでは結論に辿り着くことができませんが、記載しておきます。1冊で解決できるとは思っていませんが、健康本は高確率で迷路に足を踏み入れる結果となります。知見のある方がいればご教示いただきたい…。
・血糖値への悪影響は?
→ 食事を抜き、一気に食べた時の血糖値の急上昇はどうなのか?血糖値を安定させるためにも、3食きちんと摂るべきという論も見かけます。
・メンタル疾患への影響、セロトニンの原料となるトリプトファンが作られにくいらしい
→ 起床時人間の身体は飢餓状態にあるという説も聞く。貯めておけない栄養素を元に、メンタルへの好影響を与えるセロトニンを合成するらしい(どっかの本で読んだ)ので、朝食抜きは危ない?そうなると16時間は昼食抜きで達成すべき?新たな疑問がどんどんと。
・身体維持のそもそもの条件が一緒ではない
→ 身長160cmと180cm、または筋骨隆々とガリガリ、老人と若者、女性とこども、身体成長・維持の条件や各自の性質、活動条件がそもそもバラバラであること。それを踏まえると何が正解かは結局わからないのでは…。
特に女性は生理周期が乱れたり、こどもは生育に影響が出たりと注意が必要そうです。若手男子は無茶する生き物なので、多少は平気だと思います(偏見)。結局は自分の感覚と実践により、各個人の良いバランスを見つけるしかなさそうです。
◆今後
いつもこの手の検証をすると決まった場所に辿り着きます。それは、
何事もほどほどに
ということ。食べすぎず、内臓を酷使しすぎず、適度な運動をして、よく眠る。これに尽きます。わかっていたことです(笑)。当たり前のことを守るのがいかに難しいことか、昔の人は科学的エビデンスがなくてもこれに辿り着いていました。すごい。
今後はガチガチに16時間断食を守っていくのではなく、内臓を休ませたかったらためにやる、くらいかもしれません。
今回一番ためになったのは、身体の感覚にもっと集中した方が良いという実感が得られたこと。空腹をもっとよく感じ、必要としているものを見極めようと思います。
本文がちょっとした何かのきっかけになれば幸いです。
たいていの人は、剣によるよりも、飲み過ぎ、食い過ぎによって殺される。
ウイリアム・オスラー(医学者、内科医)
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