20代最後の過ごし方、わたし編
誰かに与えられる人になりたい。
とうとう20代最後の年。
これからどうなりたいのか、どうしていきたいのかと考えたとき、いちばんに浮かんだビジョンはこれでした。
与えられるひととはどんな人だろう。
わたしが思うに、それは自分のやりたいことに嘘をつかない人だと思います。
与えてあげる、やってあげると言うスタンスはあまり好ましくはないかな。わたしは聖人君子ではないので、最初は良くてもあとあと絶対に見返りを求めてしまうだろう。こんなにしてあげてるのにどうしてあなたは、なんてヒステリックに喚くわたしが容易に想像出来てしまう。地獄絵図である。
じゃあ反対に、誰かのためでなく自分のために動いたらどうなるだろう。
まずは自分自身に与えるようにする。つまり、自分のなかのやりたいものだったり、好きなもの、自分を満たしてくれるものに素直に向き合う。ひとつひとつ満たしていけば、周りからの施しに手当たり次第食らいついて内側を満たそうとはしなくなる。誰かに満たしてもらおうと縋り付くのではなく、自分の行動で自分を満たすようにする。
そうすることで、こころに余裕が生まれると思うのだ。この余裕があってこそ、打算的でなく、ほんとうに心から、誰かのためを思えるようになるのだと思う。自然に、誰かに分け与えることが出来るようになるのだと。
自分にいっぱいいっぱいになっていては、誰かに与えることなどできっこない。
そう考えると、与えられる人になるためには自分を満たしていく行動が必要なのでしょう。
やりたいこと、成し遂げたいこと、興味のあることに嘘をつかず向き合う。それがわたしにとってはたいへんに重たく、勇気のいる作業でした。
自信がない、失敗するのが怖い、何してんだよって笑われるのが怖い。うじうじとそんなことばかり考えて、一歩目を踏み出す前から諦める理由を探して集めて、仕方ないんだと言い聞かせていたわたしには。
そんなんだから、わたしには趣味と言えるものがありません。気になる、というレベルになった途端諦めてきたから、ほんとうに何にもないのです。強いて言うならお菓子作りが好きでよく作っていましたが、いろいろ思うところがあり最近はそれからも遠ざかっています。
わたしは何が好きなんだろう。どんなことをしてみたいんだろう。
こんこん、こころの奥の閉め切ったドアを叩いてみる。
わかっているはずなのだ、諦めているだけで。
自分が好きなこと、続けてきたこと、わたしがいちばんに知っているはずなのだ。
ごんごん、ぴくりとも動かないドアを強めに叩く。がちゃがちゃ、ドアノブを回してがたがたとドアを押し引く。
耳を澄ませて息を殺して。ドアの隙間、ひっそりと聞こえてくる声に手を伸ばす。
実は歌を歌うことが好きだった。
上手いかといえばわからないが、音程はそこそこ合わせられる。でも、ビブラートなどのテクニックはてんでだめで、ひとりカラオケに通い練習したりしましたがあまりうまくいかず。小さいころから人前で喋ったりするのは苦手だけど、歌うことだけは平気でした。
歌を学びたいと思った日があった。勇気を出して口に出したらとんでもない考え直せと猛反対されたのを覚えているが、今となってはもはや笑ってしまう。
でも、それでも、どんなに反対されて笑われても、歌うことが好きだった。
そうだ、ギターを弾いてみたいと思ったんだ。
好きなうたを、自分のメロディで紡いでみたい。
ひとつ転がり落ちたら、もうひとつ、さらにもうひとつとてのひらに被さるあのころに置いてきたはずの夢。
コーヒーを挽いて、ラテアートしてみたい。
ボルダリングって面白そう。
小さいころから空手を習いたかった。
アイシングクッキー作ってみたいなあ。
ずっと捨てられなかったちいさな夢たち、でもどうせと目を逸らしていたそれらにもう一度触れなおして、かたく強く縛っていた紐を解いていく。
やりたいことはちゃんと自分でわかっていたのに、だから大事に仕舞われていたのに。
ひとの目や言葉、いろんなことを気にして勝手に諦めた結果、こんなに時間がかかってしまった。
紐を解いたそれらをひとつひとつ、ポケットに詰め込む。本当にできるかなんてわからないけれど、やりたいことはたくさんあるのだ。今から踏み出せば、来年のいまごろには、詰め込まれたそれを誰かに分けてあげられる余裕もあるだろう。
まずは、一番最初に浮かんだギターからやってみようかな。めちゃくちゃに難しそうだけど、何年も何年も押し込めてきたのだ、諦める理由を忘れちゃうくらい楽しい時間が待っているだろう。
もし挫折したって、上手くなれなくたって、やらなかったことを悔やんできた今までよりずっといいじゃないか。
ねえ、わたしがギターで弾き語りをするとき。そのときは、わたしの弱々しくて情けない、こんな決意を黙って最後まで聴いてくれたあなたに、とてもとても優しいあなたに聴いて欲しい。
30歳を迎えるそのときには、あなたになにか与えられるひとであれるように。
どうぞ楽しみにしていてください。
20代最後の過ごし方、わたし編
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