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【俳句でぽん】焼き芋ころりん。【お話】

秋夕焼石ころを蹴る月曜日(ふぅ。さん)


月曜日。
ほんとつまんない。
なんてつまらない。
だってさ、日曜はとっくに終わっちゃったのに、
あと5日も働かなくちゃいけないんだよ。


あーあ。
あんなに綺麗な夕焼け。
なんでこんな時に限って、真っ赤に焼けてるの。
だって、ちっとも私に似合わないんだもん。

夕陽からそっぽ向いて、うつむいて。
そこにあった小石を蹴ってみる。
ころころ転がって、ぶつかって、跳ね返って。
まるで私みたい。

そうね。私はこっち側。
あの夕焼けには、
どんなに手を伸ばしたってきっと一生届かない。
このままどこまで行けばいいのかわからないけど、
私は欠けたまま歩いていくしかないのよ。



秋告げる金木犀の香りかな(きよこさん)


うん、この香り。

これ知ってる、金木犀。

でもどこにあるのかは知らない。
だけど帰り道にいつもこの香りがするの。
なんかね、下向いてても、いいんだよって
寄り添ってくれるみたいで。
だから姿なんて見えなくてもいいの。
だってここに秋は居てくれるんだもの。

うん、だから帰ろ。
いつもの家に、私ひとりきりの場所に。
だって私の居場所はあそこにしかない。

暗くなる前に帰ろ。
暗い部屋に帰るのは、
なぜか泣きそうになっちゃうんだ。


紅葉の眩しき麓に君が待つ(xuさん)



次のお休み、お友達と待ち合わせ。
一緒に紅葉を見ようね、って約束したの。
一人で見ても綺麗だけどね、
二人で見たらもっともっと綺麗なんだ。
綺麗の分けっこ、幸せも分けっこ。
まだかな、まだかな。
待ってる間もワクワクするの。

何かをしたいわけじゃなくて、
一緒に何かをすることが楽しいんだよ。


姫去りぬ紅蓮の鱗舞い散らし(丸家れいさん)


私たちの目の前を、
ぶわぁぁあって風が通り過ぎて、たくさんの紅葉が舞う。もう、前が見えないくらい。こんなことってある?秋の神の悪戯だったりして。

ー見た?
ー見た、見た!

言葉は少なくとも、笑顔が語る。
分け合うって素敵だね。
お友達が言ってたの、今の紅葉、まるでお姫様の着物みたいだね、って。そういえばそんな話を聞いたことがあるような、ないような。どこでだったかな?

ーきっと、お姫様の神様ね!
ーうんうん!

分かり合える人がいる。
幸せを分けっこできる人がいる。
今通り過ぎたお姫様も、きっと笑ってるね。



水底の揺れる琥珀か散り落ち葉(チズさん)


川の中にも落ち葉がいっぱい。
色とりどりの葉っぱが、
澄んだ空を写した水を揺蕩うように。
眩しく柔らかい秋の日差しが注ぎこみ、
琥珀色に染まるのをじっと眺める。

ー水の中に宝石が落ちてるわ。
ーうんうん、とっても綺麗ね。
ーでも、取っちゃだめね。
ーうん、あれは秋たちの宝物だもんね。 

人差し指を唇に当てて、シーッ🤫
というと、お友達も🤫シーッ
クスクスと笑いっこ。
ここには可愛いお店も、インスタ映えするカフェも、面白いアトラクションも何もないけど、私たちずっと笑顔でいられるね。

私の大事なお友達。
こんな時間を過ごせるから、私が私でいられるの。
いつもありがとう。

 


身震いし土帰る蟻穴に入る(しろくまきりんさん)


陽が傾いて、少し肌寒くなってきた。
さて、帰ろ。
うん、帰ろっか。

今日はお友達と一緒におうちカフェするんだ。
大好きな焼き芋とアップルパイ、買ってきたの。

と。
うっかりつまずいて、大事なおやつ落としちゃった!

あれ?
なんだろうこれ。
こんなところにこんな大きな蟻の巣があったんだ。

あっ。

焼き芋とアップルパイ、一瞬で瞬間に消えちゃった!なんで?どうして?確かにこの辺に落としたはずなのに、どこにも、ない、ない。

足元には、蟻の穴だけ。
まさかここに?
そんな、おとぎ話じゃないんだから。

不思議に思って穴に触れてみると、ふっと落ちるような感覚がして目の前が真っ暗になった。

うわぁ!


と思った次の瞬間、私たちは大きなほら穴の中にいた。目の前を大きな蟻たちがせかせかと歩いている。ここって、もしかして..


ー私たち、蟻の穴に落ちたってこと?
ーそうみたいね..


早く、早く出なくちゃ。
もしかしたら食べられちゃうかも!

でも、蟻たちは私たちに全く関心がないみたい。
ふと目の前を見ると、大きな焼き芋が運ばれていくのが見えた。


ーまって、私の焼き芋!

私たちは夢中で焼き芋を追いかけてた。



三個しか採れなかったのさつまいも(akkiy⭐︎さん)


🐜①「おーい、大きな焼き芋を見つけたぞ!」
🐜②「よかった。これで今年の冬も無事に越せるわね。この前拾った人参、細くてあっという間だったわ」

焼き芋を運んだ部屋からはこんな声が聞こえてきた。

ーどうする?返してもらう?
ーううん、やめとく。だって蟻さんたちの大事な食糧だもの。

とぼとぼとその部屋を後にすると、遠くのほうでアップルパイが運ばれていくのが見えた。


ーまって、私のアップルパイ!

私たちは夢中でアップルパイを追いかけた。



月よりもはやく欠けたかあぷるぱい(geekさん)


🐜③「おーい、大きなアップルパイを見つけたぞ!」
🐜④「よかった。これで今年の冬も無事に越せるわね。子供たちも大喜びだわ」

 

アップルパイを運んだ部屋からはこんな声が聞こえてきた。


ーどうする?返してもらう?
ーううん、やめとく。だって蟻さんたちの大事な食糧だもの。
ーあのパイ、少し欠けてない?
ーうん、少し味見しちゃった。えへへ。


とぼとぼとその部屋を後にすると、一匹の蟻に声を掛けられました。

🐜「あら、あなたたちどうしたの?ここは蟻のおうちなのよ。早く地上へお帰りなさい」

「ありがとうございます。でも、どうやって出たらいいのかわからなくて..」

🐜「こっちよ。ついてらっしゃい」

二人は親切な蟻さんのおかげで無事地上に帰ることができました。

🐜「あなたたちの大事な食糧をごめんなさい。これ、お詫びと言ってはなんだけど..」


糠の隅忘れ去られた胡瓜かな(これでも母さん)


蟻さんは自分で漬けたという胡瓜をくれた。

🐜「ちょっとね、うっかりしてて漬けすぎちゃったんだけど、もしよかったらどうぞ(*'▽')ノ 💖」

元の大きさに戻ったら、胡瓜も大きくなったわ。
なんだか得した気分。

帰り道、夕焼けを追いかけるように登っていく白いお月さまを見上げながら、よく浸かったきゅうりをポリポリと食べる。私たち何しにいったんだっけ?二人で顔を見合わせて笑った。

ーでも、焼き芋もアップルパイもないわ。
ーそうだった。帰りにドンキで買っていきましょ。あそこ、焼き芋が美味しいのよ。


焼けるのを待とう焼き芋ドンキにて(PJさん)


ドンキでお買い物してたら、最近近所に居酒屋をオープンして仲良しになったママが来てた。

ーあら、ママもお買い物?

⛄️「そうなんよ。ドンキはなんでもあって便利やなぁ。そうそう、ジュディ・オングの衣装半額で買うてん。ふぅちゃんまたこれで歌ってなぁ。じゃあお客待たせてるから、はよ帰るわね」


ーふ、ふぅちゃん。ずいぶん濃ゆいお友達ね。
ーあら、しろくまさんも一緒に行きましょうよ〜。

🐻‍❄️「でも私、歌えないわ」

༄༅「大丈夫よ、私が歌うから、しろくまさんはマラカス振って!大事なのは何をするかじゃなくて、しろくまさんと一緒にいたいのよ(ㅅ´ ˘ `)♡」

🐻‍❄️「ふうちゃん、ありがとう😊 あっ焼き芋忘れないでね」

༄༅「うん、ママへのお土産にしよっか。みんなで食べよ!」

🐻‍❄️「そうね。みんなで食べたらきっとおいしいね」



こうして二人は仲良く夜の街に消えたのでした。

冷たい秋風が吹いたってへっちゃら。何が欠けてたかなんて、もう忘れちゃったわ。だって手にはホカホカの焼き芋、今日一日楽しくて笑いが止まらなくって、心の中もポカポカだもの、ね。


終わり。 

…………

今回、秋の切ない導入から童話っぽくするつもりが、最後にオチつけたことでなんだかよくわからないものになってたらすみません(*´-`)

素敵な句を使わせて頂いたみなさま、ありがとうございました(*ᴗ͈ˬᴗ͈)⁾⁾⁾


最後に種明かししてますが、十六夜杯クルーのふぅちゃんが主人公、そのお友達にしろくまさんのイメージで勝手に書かせて頂きました。2人ともありがとうございました❗️(もし不適切なところがあったらこっそり教えてね)

川柳&都々逸の雪ん子⛄️酒場にもぜひ遊びに行ってみてくださいね。今回友情出演してくれた、新宿2丁目仕込みのママが歓迎してくれます(*´▽`)ノ



🔻十六夜杯の俳句から二次創作するスピンオフ企画「俳句でぽん」、小説・イラスト・詩・長歌・じゃんけん😆など多種多様❗️秋の新しい創作、ぜひ作って読んで楽しんでみてくださいね(。˃ ᵕ ˂ )ノ゙



🌕ただいま秋の十六夜杯開催中🍁❗️


🔻秋らしい俳句・短歌・川柳、お待ちしております🍁タグは「十六夜俳句」「十六夜短歌」「十六夜川柳」をつけてご参加くださいませ😊(25日19時49分まで、新月の時間が〆)



🔻以下、使わせて頂いた方々のリンクです。ありがとうございました。

※もし失礼がありましたら訂正・削除するのでお申し出ください。












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