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2015年7月の記事一覧
かつてきみと渡った橋は
だれもが立ち去ることができる街角までともに歩いた。川の底にある小石のことばで語りかけることができればきみをひきとめることができると信じたかった。きっと見送ることができないという理由でひきとめたかった。
かつてきみと渡った橋はほんの一瞬のキスにすぎなかったが、背後には暗がりがひろがっていて、私たちの後ろ姿はその暗がりに刻印されていて、でもふり返るだけでは見ることができない、それは夜の中の夜なのだと
書き残した文字がそこに切り取られた過去の匂いを鮮烈に蘇らせる、数日前の気持ちも、一年前の気持ちも、変わらぬ色の濃さを帯びて
拝啓 朝顔の青の開き初める此の頃
拝啓 朝顔の青の開き初める此の頃、いかがお過ごしですか。七月一日の夜がやけに肌寒かったのを憶えていますか。今は七月十三日の夜、摂氏三十五度の昼を冷房に守られて過ごし、都合よく真夜中の涼風を愉しんでいます。ずるをしている。こうやって、耐えるべき困難をひょいとエスケープして、のうのうと、しかし強い引け目を感じながら、暮しているのがわたしの生です。狡いのです。その狡さが情けないのです。
あなたが手紙