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【死海文書】『1984』の再現。クレの二重思考とバルセロナの「もう一つの真実」

今から約70年前に書き上げられた風刺SF小説『1984』。

執筆当時は第2次大戦が終結し、冷戦で世界が東西に分断されはじめ、マーシャルプランによる欧州復興に伴いマッカーシズムが台頭。

核武装を通じて激化していくことになる米ソ両国の摩擦。そんな緊張状態の火蓋が切って落とされている一方、1949年に中華人民共和国が成立。

てんやわんやで混沌とする世界情勢の中で書き上げられたジョージ・オーウェルの著書は、全体主義への警鐘を現代まで響かせる。

SNSで匿名性が担保されたことで責任感と一貫性を失い、信念も実態もないペルソナが無限に湧き出ては繋がり、数の暴力にも、支えにもなる世界。

何もせずに主体なき個人が次々生まれるならば、支配者層にとってこれほど都合のいい話もない。

「独裁的な思想を表立って植え付けようとすれば反発が起きることは自明だが、時間をかけて洗脳という名の教育と刷り込みを施せばいい」

そんな危険な発想。

さて、クレは混乱する。

クラブとしての哲学と現政権が押し出す施策は明らかに矛盾している。

もはや独特の美しさはない。しかし勝つ。

次第にクレは、両者が繋がっているように自己完結、あるいは哲学と勝利至上主義の両方を同時に信奉し、究極形を体現したペップ・バルサを理想形とすることで現状に納得する。

私を含め、「勝っているからまだいいか」では済まされない。

信念を年経るごとにゆっくり溶かし、多くの勝利至上主義者をグリップすることで、「哲学なんて知ったことか」という世界を作らんとする、この「ファシズム」が如何なる方法で、如何に恐るべき結果を生むか。

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