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読書|月曜日の抹茶カフェ

月曜日が定休日のマーブル・カフェ。「木曜日にはココアを」の続編として登場した本書のはじまりも、あの素敵なカフェからでした。

前作が色彩がテーマだったのに対し、本作は和風名月で物語が流れていきます。抹茶や京都がキーワードなため、1月2月…ではなく睦月如月…と続いていく日本の暦が、青山さんの紡ぐ世界観にピッタリでした。

心に残る言葉がいくつもあり、その度に付箋を貼っているのですが、今回はその中の3つを紹介したいと思います。

思い出って、流れ流れゆく時間を留めておくピンのようなものかもしれませんね。だけど留める場所は人それぞれだから、ピンの位置がちょっとずれちゃったりもするんですよ。

P38「手紙を書くよ(如月・東京)」

自分にとっての転機の言葉やあの人との大切の瞬間など、大事にとっておいている思い出は、意外に孤独なことがあります。覚えているのは自分だけ?と。

でも、印象に残っていて忘れられないことは、確かに自分が経験した時間です。自分以外の人だって、大切に抱えている出来事が、他に存在していることを思い出させてくれた一節でした。

本を読んでいるときのニンゲンの姿って、好きだなって思う。美しいって思う。確かにそこにいるのに、どこかを旅しているのがわかる。体は止まっているのに、何かが動き出しているのが伝わる。

P125「おじさんと短冊(文月・京都)」

本の醍醐味である、別の人生を歩める楽しさ、知らない世界を知れる面白さを猫目線で語られたセリフには、心が嬉々としました。

「おじさんと短冊」の主人公(?)である猫ちゃんから、今この瞬間を大切にしようというメッセージを受け取りました。

さかのぼっていくと、繋がっている手がどこまでも無数に増えていくんだ。どの手がひとつでも離れていたら、ここにはたどりつけなかった。どんな出会いも、顔もわからない人たちが脈々と繋いできた手と手の先なんだよ。

P180「カンガルーが待ってる(神無月・京都)」

ナマズ(=旦那)に出会えたことも、皆さんとnoteで記事を読み合えることも、元を辿ったら辿りきれないほど、無数の縁で繋がっています。

何気ない出会いや選択で、誰かの人生に大きく関わっていることだってあります。それこそ、最初に紹介した思い出のピンの挿し場所が違っているだけで。

だから、自分は人に生かされ、人を生かす力があるのかもしれないと想像もできない大いなる力を感じてしまいました。

読了後、和菓子が食べたくなったので、早速どら焼きをいただきます。本の余韻が味覚に届き、いつまでもふわふわした気持ちになりました。




青山美智子さんの読書記録はこちらです。


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