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ヒットの秘訣は『板挟み』!

ストーリーティングにおいて、主人公に葛藤を起こさせるというのは非常に大切です。

面白いストーリーというのは人間の根源的な欲求が表現されているものなんです。バトル漫画は闘争本能という人間の根っこの欲求があるから人気がありますし、ミステリー小説は、人は謎が存在すればその真実を知りたくなるという好奇心を利用しています。

ラブストーリーは性欲ですよね。物語の中で戦ったり、生き延びようとしたり、恋愛を成就させようとするのは、人間の欲求を作品が代替してあげているわけです。

ヒットする作品の要素を露骨に言い表せば、『バイオレンスとエロ』がたいてい入っているものなんです。

その中の欲求の一つに、『人間は葛藤している人間を見たい』というものがあります。

だから登場人物にどう葛藤させるかというのが、作品を作るときにおいては肝の部分になります。

これぜんぜん面白くないなという作品はたいてい葛藤がないか、とてつもなく弱いんです。

でも葛藤がないのにヒットしている作品もあるじゃん。

そう疑問を持つ人もいます。いわゆるほのぼの日常系の作品は葛藤がないものもあります。でもあれはあくまで例外ですね。

じゃあ葛藤を生じさせるにはどうすればいいか。もちろんストーリーの中で作っていく手立てもありますが、意外にこれが難しい。でも簡単な方法があります。

それはキャラを『板挟み』の状態にすればいいんです。

板挟みにしてしまうと自然と葛藤が生じるんですよ。だからキャラ作るとき、板挟みとなる状況に置いてあげればいい。

例えば『半沢直樹』ってそうじゃないですか。主人公の半沢は中間管理職です。上と下に挟まれているまさに板挟み状態なんですよね。だから葛藤が自然発生し、勝手にドラマとなってしまう。中間管理職ってだからいいんですよね。

他の例でいうと、ヒットしている漫画の多くは板挟み状態からスタートしています。

『ナルト』『進撃の巨人』『鬼滅の刃』『呪術廻戦』『チェンソーマン』『怪獣八号』は、すべて主人公や主要キャラが、作品の中で敵対するものと同化した状態からスタートしている。

ナルトは九尾という化けものが体に入っている。だから他の仲間から白眼視されている。そのためナルトは必然的に苦悩し、葛藤を続けます。

鬼滅は主人公ではないですが、妹が鬼と化した状態になっている。鬼は鬼滅の刃における最大の敵です。怪獣八号も最初のシーンで、主人公が敵である怪獣になってしまいます。

スタートを善と悪の板挟み状態にしておけば、もう作者が何をしなくても勝手に葛藤が生まれるんです。

漫画って小説や映画以上に最初のツカミが大事で、一話で面白くなければもう読者は読んでくれません。だからこの法則がよく使われているんじゃないでしょうか。

たぶんこのヒット漫画の法則の最初って『8マン(エイトマン)』じゃないですかね。

エイトマンというのは1960年代のヒット漫画ですね。まず少年マガジンの編集者が『鉄腕アトム』『鉄人28号』のロボット漫画のヒットを見て、新しいロボット漫画を作ろうとしました。

そこで当時は若手のSF作家である平井和正先生を原作家として抜擢します。編集者は、「大人の鑑賞に堪えうるロボット漫画を考えて欲しい」と平井さんにリクエストするわけです。

すると平井さんは打ち合わせの喫茶店で、「じゃあ一部は機械だけど一部は人間だから苦悩と翳りを持つサイボーグの話はどうですか」というアイデアを出します。

人間と機械という板挟み状態が初期設定化されているんです。

結果エイトマンは大ヒットし、その『善悪内包初期設定』はヒット漫画には不可欠な要素になっていくわけです。

ヒット作品には葛藤がどれほど大事かというのがわかりますよね。


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