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「営業」に向いている性格とは?

私が新卒で入ったのは、東京の広告代理店だった。

私の新卒採用の仲間は9人いた。
そのうち6人が総合職の営業で、3人はクリエイティブ職の採用だった。

しかし私を含め、営業の6人はなかなかの個性派だった。

めちゃくちゃ耳に大量のピアスを開けた不良、
自分の見た目ばかり気にしているナルシスト、
「私、バカなんだー」と言っている自称バカ女子、
採用前から転職の話をしている野心ガツガツ男、
真面目で優秀そうな男の子。

かくいう私も、ドヤ街のようなところの簡易宿泊所に泊まって就活し、面接で自分の本を売ってお金儲けをしていたので、かなり変な人だと思われていたに違いない。

あまりに変な人ばかり採用されているので、私は「営業に向いているのはどんな人なんですか?どういう基準で採用したんですか?」と思わず聞いてしまった。

人事の人は「仕事をしてみれば、おいおいわかる」と答えた。

その後、私たちは営業として、各部署に配属された。

しかし仲間の中で、1ヶ月で、仕事を辞めてしまった人がいた。

それは唯一1番まともそうな、真面目で優秀そうな男の子だった。

彼は、お客さんに厳しいことを言われ、心を病んですぐに辞めることとなった。

しかし、ほかのメンバーは辞めなかった。

ピアスをいっぱい開けた不良は、とても優秀で、仕事をすぐに覚えたし、キツいことを言われても平気な強さがあった。

ナルシストも、お客さんに厳しいことを言われても、自分にしか興味がないので、何を言われても平気で、心も体もタフだった。

自分でバカと言っていた女の子も、何も知らないので教えてくださいと言うスタンスでお客さんに可愛がられ、キツいことを言われるのを回避していた。

野心の男も、やる気があってお客さんに気に入られたし、何か言われても気にしない強さがあった。

私は、営業に向いているのは、ひとまずは「心の強さ」なんだなぁと思った。

営業にもよるけど、私たちの仕事の場合は、まずはとにかく、心にタフさがないと、続かない仕事だったのだ。

人事の人はさすがによくみていて、心がタフそうな人を選んだのだ。

確かに私の仕事では、お客さんにけっこうキツいことを言われることが多かった。

ある日、私は苦手なお客さんに、「この人はミスばかりで使えない。担当代わってもらえませんか?」と言われてしまった。

さすがに落ち込んだ私は、「私には、営業なんて向いてないな」と思った。

私はテキパキしていないし、たいていテンパっているし、理解力もないし、説明も下手だし、すぐに答えられないし、全然営業には向いてない。

しかし仕事をしていくなかで、不思議なことに気づいた。

みんなに好かれるお客さんに私は嫌われていたけど、みんなから嫌われているお客さんに、なぜか私は好かれていた。

テキパキと優秀なお客さんには、私のモタモタしたところが嫌われてしまった。

しかしみんなにネチネチとイジワルなことを言って嫌われていたお客さんには、私はニコニコと話を聞くので、気に入ってもらえたのだ。

そして私は、営業には、いろいろな人がいた方がいいのだと知った。

お客さんも、いろいろな人がいるから、誰がハマるかわからない。
同じようなタイプの人ばかりいたら、気に入ってもらえる裾野が狭くなるが、いろんなタイプを取り揃えておけば、お客さんに誰か営業がハマれば儲けものなのだ。

営業に向いているのは、心がタフな人。
そしてそれさえクリアすれば、どんな人でも誰かにハマりそうな可能性さえあるなら、営業に向いているのかもしれない、と私は思った。

私は来月からふたたび、20年近くぶりに営業の仕事に復帰することになった。

顧客から仕事が取れるかどうかはわからないけど、「まー誰かにはハマるだろ」と気楽に構えている。

誰からも好かれる必要はない。
ほんの少しの人にだけ好かれれば、営業なんて十分なのだ。

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