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高3女子が「なぜ山に登るのか」考えてみた。

イギリスの登山家であるジョージ・マロリーは、

「なぜ、山に登るのか。
 そこに、山があるからだ」

と言った。


 私の通っていた保育園は、園児を山に登らせる方針があった。
幼い時から山に登ることで、自然と親しみ、基礎体力を向上させ、忍耐強くさせることが目的だったのだろう。

私の父は山が好きだ。富士山は片手で数えられないほど登り、小さい頃からよく登っていたらしい。
父の妹は、知的障がいと身体障がいがあり、ずっと車いすで手も動かせず、脳も5歳くらいで止まっている。

中学生だった父は、そんな妹にどうしても綺麗な山の景色を見せたい、その一心で山頂まで妹を担いでいった

という話を祖母から聞いたとき、涙腺が緩んだ。
思春期も相まってあんまり好ましく思えない父だけれど、私は父のこういう優しくて、(たまに)かっこいいところが好きだ。
今だって、いつも人の為に、誰かの笑顔の為に、を第一信条にしている。
一家の大黒柱が利益を全く求めないのは玉に瑕だが。

随分話が逸れてしまった。

山に登る保育園だったこと
両親が自然が大好きなこと

この2つが揃えば、家族で山に登らない理由など見つからないだろう。

姉も小2のときに父と二人で富士山に登ったから、私も小2で登りたい、そんな理由で初めて富士山に登った。

あのときのご来光を今でも私は忘れない。
つらかった
きつかった
そんな感情が一気に流されていき、このために生きてきたのかも知れないと思わせてしまうくらい、胸がいっぱいになった。


いつだって山は、下界でのモヤモヤから解放させてくれる。それは一時的なものかも知れないが、確かな爽快感が私の胸を一掃させる。

毎年家族で山に登り、山に魅了された私は、高校で山に登る部活に入った。
今週は3回も登った。
今は大会に出たいという目標に向かって山行を重ねているわけである。


わざわざ大変なきつい、辛い思いをして山に登ることの何が楽しいの?

これは本当によく聞かれる。

明確な理由なんてない。
そもそも人によっても登る目的はそれぞれで、下界では見ることの出来ない美しい景色、高山植物、動物などを見ること、雪を楽しむこと、岩を登ったり、危ない場所で器具を用いたりして危険を楽しむこと、カメラできれいな景色をおさめること、人に伝えること、コミュニケーションの場にすること、、、などなど沢山の目標があって登っている。
たまにジョージ・マロリーみたいにそこに山があるから、なんて本気で言う人がいるけど、やっぱり理由はある。
なんとなく、なんて言ってる人にも
人生の意味を見つけること、とか現実逃避したいとか、、


山は人生に似ているとよく形容されるが、私もそのとおりだと思う。
目先の小さな目的に捉われず、その山の頂上を目指し、ただ一生懸命のぼればいい。
危なくて険しい近道より、遠いけれど、足元が確実なところを堅実的に進んでいくほうが上手くいくことが多い。
他の人のトレースを辿りながら、自分もトレースを作る側の人間になれたらな、なんて山に登っていると思う。

今日だって山にひたむきな姿勢で佇んでいたミツバツチグリ、チゴユリ、シロバナエンレイソウ、クサボケ、ワチガイソウなどあげればきりがないほどの植生に癒やされ、ウグイスとヒヨドリの鳴き声に癒やされ、見たもの、感じたものの名前がわかるっていいな、山の勉強してて良かったな、なんて思いに浸りながら登っていた。

帰ってきて、山岳の大会で出題される、包帯、ロープワークの練習をした。山の勉強の好きなところは絶対にいつか役に立つところだ。
火山の成り立ち、ブロッケンとかケルンとかデブリとか二重山稜とかホワイトアウトとかキレットとか鳥の鳴き声とか3SABCDEとか高山病の高知脳浮腫とか地吹雪の天気図記号とか岩の名前とかなんで山は高いのかとかよくわからない単語をいっぱいいっぱい覚えて頭に詰め込んで、週3で山に登って、、

今は山のことしか考えられないし、受験生なのに両立が全く出来てないし、頭が満タン過ぎて今にも溢れそうだし、16キロ近く毎回背負っていると背中は壊れそうなくらい痛いし、足はパンパンだし、高いところにいたから頭も痛いし、登ってるときは本当になんで私、こんなことしてるんだろうって正直思っちゃうこともある。

でも山ってある意味、中毒なの。

下山した瞬間、もう一度登りたくなっちゃうものなの!!笑


山に登ると達成感から自信に繋がり自己肯定感が上がる。
モヤモヤを、具現化でき、解決に向けて努力しようという活力が湧いてくる。

綺麗事に聞こえるかもしれないが、今の私はこの2つが理由で登っているのだと思う。

これからも、私は山に登るだろう。

束の間の癒やしと快楽を求め、その何十倍もの時間や労力を掛けて苦悩と向き合いながら。




いつか叔父みたいに自分の山を買う日が来るのかな。




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