夜。あなたの声が、私を潤した。
自分でもびっくりしたの。
電話口からあなたの声を聴いた瞬間、こんなに涙が溢れるなんて。
ああ。なんて心が自由になれるんだろう、って。
いばらで傷ついた心が、癒されていくのを感じたんだ。
***
『ねえ、元気?…え、泣いてるじゃん?!』
高校吹奏楽部時代の友人に、電話で話す機会をつくってもらった。
すると、開始一秒もしないうちに涙が止めどなくこぼれた。
「うん、元気だよ…うふふふ…(グスッ)。」
今日は企業との面談で詰められたのもあって、
精神的に辛かったのだろう。
(しっかし…久しぶりに話せるというのにこんな調子じゃ…)
(すぐ泣きだすとか恥ずかしい。)
そう思った私は、
なるべく音を立てないようにティッシュを抜き、涙を拭きとった。
「高校時代の吹奏楽部における私は、どんな存在だったか?」
就活対策のひとつ、自己分析のための他己分析。
なんだかそれに付き合わせてしまうような感じもする。
正直申し訳ない気持ちと、不安が重なった。
けれども彼女は一生懸命に当時の記憶を掘り起こし、
私の忘れていたようなエピソードまで教えてくれた。
丁寧に、丁寧に話してくれた。
そうやって話を聞くうちに、当時の記憶が蘇ってきた。
***
誰かに笑っててほしくて、スベるようなギャグを大勢の前で言ってみたり。
表現したい欲が溢れるあまり、へんてこダンスを披露してみたり。
楽器が吹けなくても、愛する曲を皆に楽しんでほしくて詩を配り歩いたり。
(今度また、note書きます。これは書きたい。)
”内部進学生”と”外部進学生”みたいな壁でバラバラになるのが嫌で、
『思考回路不思議☆変人キャラ』として架け橋役を目指してみたり。
時間も足りない。譜面もそろわない。コンクールに不向きな木管五重奏。
そんな環境にドMに燃えて、コンテストで県大会に行けたり。
挙げたらキリがない、あの頃に詰まった”私”のなりたち。
でもどれも、純粋に音楽を楽しみたいがための行動だったのだと。
あんなに個性が詰まったカオスすぎる凸凹チームにいる時間が、
楽しくて仕方がなかったからなのだと分かった。
皆が面倒くさがるイベント第一位、反省会。
文句も飛び交う中で、課題という名の新しいゴールを見つけられた時。
「吹部はブラックだよね(笑)」と言われるのも納得。
夜遅くまで顧問の話を聞いて、帰って親に遅いと怒られた時。
「審査員を誘惑するのよ…」とニヤついたアドバイスを。
すると、仲のあまり宜しくない楽器パートと音楽で悪友になれた時(笑)。
頭を悩ませた時間もひっくるめて、全ての時間が愛おしい。
愉快でまとまりのない仲間たちが、何かを通して一つになる感動を求めて。
私たちは奮闘していたね、と。
お互いに、少しずつ、少しずつ。
所々欠けた記憶と本音を、クッキーのいびつな破片をこぼしては拾っていくいくように、ポロポロとつぶやいていった。
***
いつも苦しみながら過去をひねり出してきた自己分析。
同じことが、あなたと話すだけでこんなにも楽しくできるなんて。
一緒に音楽に向き合い、苦しみ、励まし合ってきたあなたと。
こうして心から話すことができて、私は本当に幸せだよ。
きっとこれを読んで恥ずかしくなってるあなたを想像して、
今、私も最高に照れているよ。
書いてる間にも涙がでてきたけれど、
これは音楽と部活とあなたに対する、あたたかい愛の涙。
本当に、吹奏楽を高校まで続けて良かった。
久々にLINEしてみて良かった。
1時間しかなかったけれど、電話できて良かった。
心から笑えて、良かった。
素敵な夜をありがとう。
ずっと友達でいてね。
大好きです。
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