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Classiを卒業します(退任エントリ)

2024年6月27日のClassi株式会社の定時株主総会を持って、代表取締役社長の任期を満了し、退任させていただきました。



これは何?

いわゆる退職エントリです。
僕は取締役を拝命していたので退任エントリとしています。

三点まとめ

  1. Classiの創業と成長: Classiは2014年にソフトバンクとベネッセホールディングスのジョイントベンチャーとして設立され、中高生向けの教育ツールを提供し、多くの学校で導入されてきました。僕はソフトバンクの新規事業担当として教育分野に参入し、ベネッセと協力した本事業を立ち上げました。

  2. 成し遂げたことと挑戦: Classiで2つの100万人オーバーのプロダクトを運用し、会社を黒字で経営しました。しかし、2020年のセキュリティインシデントは重大で、その対応や組織/事業再建に4年を費やしてきました。

  3. 退任の理由と今後の展望: そのインシデントを機に、プロダクトとセキュリティの再建後に次の世代に引き継ぐ意志を固めてサクセッションプランを進め、2023年に退任を決意しました。今後は新たな挑戦をしたいと思っていますが、まずは休みたいな〜と思っています。

Classiとは

Classiは、2014年にソフトバンクとベネッセホールディングスのジョイントベンチャー(JV)として創業した会社です。当時は、EdTechというジャンルの盛り上がりもありながら、中学や高校という学校にSaaSのプロダクトを提供するという試みは珍しかったように思います。

プロダクトとしては、生徒毎に宿題をパーソナライズしたりや、あらゆる学校生活で活用できる振り返りツール、そして保護者と学校のコミュニケーションツールや集金決済のツールなどを提供しています。数千をゆうに超える学校で導入、活用を頂いています。


創業のきっかけ

2012年あたりで僕がソフトバンクで新規事業を担当していたときに、当時の上司に「教育関連の話」として外部の方との雑談のような場に呼ばれたことからでした。

そのときに、ベネッセが創業まもなくから50年以上に渡って学校課題の解決支援をしていることを知りました。「進研模試」を中心に紙ベースではありましたが、高校のほぼ全てに支援を届けている=生徒の皆さんの学力データをお預かりしている、ということを伺って、それらのデータとWebやモバイルのテクノロジーと組み合わせたら面白いかも!と考え始めたんです。
教育ドメインでの新規事業ということや、教育シーンのど真ん中としての学校課題の解決の可能性などから、めちゃくちゃワクワクしたことを覚えています。最初の雑談でお会いした方とその翌日からほぼ毎日お客様の課題や解決策としての事業構想を話し合って、骨子をまとめていったくらい熱を帯びていました。
その後、ソフトバンクとしてベネッセと協議を深めてJV設立に向かっていくのですが、そのあたり配下の記事に詳しいので、興味がある方は御覧ください。https://hiptokyo.jp/hiptalk/classi/

なぜそんなにワクワクしたか?

  • ビジネスモデルとして学校集金というB2B2Cモデルに興奮したから

    • Classiの導入是非は学校が中心となって決定いただくのですが、利用料金は、保護者様へ課金をさせていただきます。が、そのお金を学校集金のような形で学校で取りまとめていただくモデルでした。

    • 孫さんが当時、常々、プロダクトとビジネスモデルが最重要だ、と言われていたが、そんな中で教育向けのビジネスモデルがなかなか見えなかった(教育はサービスとしてほしいがお金を払うかというと別だね、みたいな空気感が占めていたような記憶です)

  • ベネッセの学校支援をしている営業チームが全国にあったから。

  • プロダクトを全国津々浦々まで届けきるというデリバリー面でのビジネスモデルの強さに加えて、お客様の課題を聞ききれるだけの関係とカバレッジをもっているということがプロダクト開発上大変魅力的でした

  • 進研模試などの学力データとICTの組み合わせでパーソナライズドラーニングが実現できる!と思った

成せたこと

  • 100万人以上の届けられるプロダクトを2つ生み出すチームを作れた

    • Classiという中高向けのプロダクト

    • tetoruという小中向けのプロダクト

  • 3期目で黒字化した以降、黒字経営を継続できた

  • EDUCOMという小中学校向けの校務支援システムでNo.1の会社をM&AでClassiグループに迎え、共同事業としてtetoruを生み出した

  • ベトナムに新たなジョイントベンチャーを作って挑戦をした

  • 人事制度をオリジナルのものとして刷新した

  • 大きなセキュリティや接続障害のインシデントを経て会社や組織が生きながらえ、更に強くなっていった

  • 多くの素晴らしい仲間と先生、生徒、保護者の方に出会えた

いろんな想定外

  • 創業して3ヶ月でベネッセの個人情報漏洩インシデントが起こり、B2Bっぽい建付けだったClassiはその影響をもろに受けてビジネスとして始める前に終わってしまうのではととヒヤヒヤした(ベネッセのインシデントがB2Cプロダクト側によっていたことや学校営業の方々の対応によって大きな影響にはなりませんでした)

  • 2年目でキャッシュがなくなりかけて慌てて増資をした(おかわりが早いな!と株主からいろいろと叱られた)

  • コロナで全国のすべての学校が休校になった

  • 未曾有の全国学校休校による10倍以上のアクセスに耐えられず接続不良の大障害を起こしてしまった

  • 同じ時期の2020年4月に外部からの不正アクセスを受けセキュリティインシデントを起こしてしまった

特に最後に書いた2020年に起こしてしまったインシデントでは、多くのお客様やパートナー様に大変なご迷惑とご心配をおかけしてしまいました。この場を借りて、改めてお詫び申し上げます。本当に申し訳ありませんでした。

なぜ卒業しようと考えたのか

  • 卒業を考えたのは2020年の年末で2020インシデントが一段落したときあたりでした

  • プロダクトとセキュリティの再建の目処がついたら次の代に変わろうと考えてました

  • が、組織再編、人事制度刷新、収益構造改革などいろいろな経営課題も続きました

  • それらが一定の見通しが立つようになった2023年10月あたりに卒業の意志を固めて幹部陣に相談をしました

きっかけは、2020インシデントでした。あのインシデントを起こしてしまった責任は僕にあり、僕が意思決定をしていてはダメだと思ったのです。プロダクトを運用するということやセキュリティ対策の優先順位、組織課題の解決など重要なことの意思決定の質やスピード感に対応できていないと考えていました。よって、僕自身の責任の果たし方として、プロダクトとセキュリティとその運用組織の再建をある程度まで実現できたら、次の代に経営を引き渡そうと考えていました。

その後、プロダクトとセキュリティの再建は一定の目処が立ちつつ、更に組織課題として顕在化してきた人事制度刷新による目標設定や評価/査定の変更やプロダクト本部やコーポレート本部の体制変更などを進めてきました。また、収益構造の課題として、新規事業やマネタイズ、またコストマネジメントなどについて、その解決に集中していきました。全社の努力によって2024年度以降も継続的なお客様課題の解決に向かう希望が持てる状態とすることができましたと感じました。

これらの見立てから卒業できるかも、と思い幹部陣に相談を始めたのが去年の秋頃だったと思います。

もう一つの想定外

セキュリティインシデントをきっかけとして、噴出する多くの経営課題を解決していくプロセスについても、みんなの専門性を頼権限委譲を進めて任せきることを強く意識して進めてきたつもりです。一方自分自身の役割として、結果責任と説明責任を中心に推進上出てきた課題の意思決定のスピードなどを強く意識していました。

その結果として課題の解決や組織の成長は力強く進んでいったのですが、一方で以下のような感情が僕の中に生まれました。これらは想定外でした。

  • Classiの中で僕自身が果たす役割を小さくしていくに合わせて僕自身のやりがいのようなものも相対的に小さくなっていったような感覚

  • 僕自身がClassiのステージ(お客様から期待をいただく課題解決や市場でのポジショニング)とは違うチャレンジを自分らしく思い切ってやりたくなる感覚

僕自身が次の代に渡すことを意図して、4年に渡って計画的に僕の役割を小さくしたことによって、自分自身が感じるやりがいやモチベーションも小さくなっていった感じでしょうか。相対的に株主対応などが僕の役割になっていったというのも僕がやりがいを感じることとは異なっていったというのもあったかと思います。(大企業の事業会社によるJVはClassiを含めて過去に3社立ち上げているのでノウハウとか注意点などはまたニーズがあれば共有したいなーと思ったりします)

以上を踏まえて、去年の秋頃から幹部陣に相談を始めて、「お前が辞めるんかい!」としっかり突っ込まれながらも議論を重ね、卒業することを理解してもらい、あとは後任体制を具体的に検討していったという感じです。

JVとして生まれたClassiはどうだったか?

控えめに言って最高でした^^
株主もお客様ももっと高い期待をしてくださっていたと思いますので、その点においては最高とは言えないと思います。
が、仲間とともにお客様とともに真剣に取り組める環境は素晴らしかったし、大手企業のJVとして、その信頼や資金力を生かしたロケットスタートによって、学校教育の課題解決に多少なりとも貢献ができた自負もあります。

  • 掲げたミッションとビジョンを10年真剣に追いかけられたこと

  • Classiバリューとして「Unlearn&Learn」に出会い、その体現を求めて企業カルチャーを創っていけたこと

  • 素晴らしい仲間とお客様に出会い、一緒に仕事ができたこと

  • 株主にもきちんと投資収益や事業シナジーを返せたこと

  • その過程で、僕自身が成長できたと実感できたこと

など。
大企業とスタートアップのハイブリッドとして、大企業ではできないスピード感のある経営と、スタートアップではできない資本力や信頼を生かした経営ができたのではと思います。

最後に

今回の僕の卒業とは関係がないのですが、時を同じくして、ベネッセがMBOをしたり、Classiの株主であるソフトバンクが離れベネッセの100%資本となるという株主側の様々な変化がありました。
10年が長いか、という議論もあるかと思いますが、テクノロジーの進化やスタートアップの時間間隔からすると、10年もあれば、そりゃいろいろと変わるよね、と思います。
ClassiもJVという役割を期せずしてこのタイミングで終え、次の形に変わっていく時期なんだと感じます。
僕自身は卒業をしますが、一緒に走ってきた仲間が後任として経営の舵取りをしてくれます。サービスを進化させ届け続けてくれます。これからも安心して見守りたいですし、ずっと応援をしています。
お客様やパートナー様には本当にお世話になりました。
最高の10年でした。
ありがとうございました!

これから

学びに携われる領域でまた新たなチャレンジをしたいなーとは思っていますが、具体的にはまだ決めていません。
まずは、少し休みたいなーと思っているので、焦らずに考えていこうかなと言う感じです。

読んでくださりありがとうございました!

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