りかよん

万年不定愁訴。ちっとも病みあがりません。

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最近の記事

ほうおう

9月の終わり。 火葬場からの帰り道、葬儀社のマイクロバスから空を見上げていた。 鳳凰のようだね、と思った。そして、広げた翼の真ん中、ちょうど背中のところに『寄りかかるようにして座る人』が見えた。そう思ったら、ますますくっきり見えてきた。肩幅といい、背筋の伸ばし方といい、彼女そっくりだ。 あー、本当に旅立ったんだな。鳳凰がお迎えに来てくれたのだから、きっといい場所へ連れて行ってくれるんだろうな、と思った。 そう思わなければ、やりきれない。 葬儀場で「どうぞお持ち帰りください

    • ねるよが

      ちゃんと眠れない日が多かった。ここ2〜3年、いつも疲れていたし、眠りが浅かった。不定愁訴が張りついていて、オットからは「いつも具合が悪いな」とか「元気な時がないな」とよく文句を言われていた。それでも仕事には行くし、朝は早くからお弁当も作る。晩ごはんは手抜きでも、食器はその日のうちに洗う。そしてソファで寝落ちして、次の朝がまた来る。ムスメからは、「お母さん、寝落ちするって、気絶してるってことだよ」と言われていた。そうなの? この半年は夕方になったら目も開けられなくなるほど疲労

      • えもいし

        もう「エモい」も死語なんだろうか。今、琴線に触れるとかグッときたとか、そういう気持ち、なんていうの? ここ1年くらい、殺伐としていた。仕事は忙しいし、ムスメは遅めの反抗期だし、オットも多忙で疲れきっているし。本当にクタクタの時は、音楽を聞いてみよう、という気持ちにさえならない。カラオケだって、元気がないと行けないし。美術館やギャラリーで絵を見ようという気にもならない。映画も見たくない。わたしの感性は干からび、感受性のかけらもない日々。自分の感情は全部スルー。どんどん無気力に

        • こっせつ

          金曜日の夜。椅子の上で正座をしていた。寒かったものだから。お茶を飲み終え、さて、お風呂にでも入るか、と思って立ち上がった。足が痺れていた。一歩踏み出したところで、まずい、と思った次の瞬間、ガリゴリッと音がして、わたしは台所の床に倒れていた。激痛。泣きそうだった。 起き上がれない。床が冷えていて、身体中がブルブルと震えた。だが立てない。足が痺れていたため、つま先が伸びず、足の甲で着地したまま、全体重をかけてしまったのだ、と理解するまでに時間がかかった。折れたとは思わなかった。

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        • なんでこんな夢を見るんだろう
          67本
        • 毎日が病みあがり
          1,273本
        • スキ♡
          9本
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        記事

          まだです

          疲れている。わかっている。だが、仕事は休めないし、休みの日とて家にはたくさんのタスクがある。この三連休、公民館の文化祭、街歩きイベント、神社の境内で地元フェス、と、毎日出歩いた。仕事や応援だから「ねばならない」外出だった。 今朝、家族が出かけた後、洗濯機を回した。40分程度だから、ちょっと休憩するか、とソファに座った。座ったつもりだったがクッションにもたれかかって目を閉じてしまった。ウトウトしてしまった。夢を見た。 お風呂に入ろうと思って全部脱いだ。脱いだものも洗濯機に入

          まだです

          DODGE

          インクトーバー2023 4日目。お題は「回避」。 ドッヂボールって、「回避球」だったのか。なるほど。 世の中、ネガティブな現象からの回避が上手い人が『世渡り上手』と言われている。スルーする力。負をまともに受け取らない巧みさ。 わたしは不器用なのか、融通が効かないのか、とにかく真正面からドシッと受けてしまう。そして、負ける。さらに、凹む。 逃げ、ではない。回避。

          PATH

          インクトーバー2023 3日目。お題は「道」。 何を描いていいかわからなかったので、今いちばん勢いのある若手三人組が横断歩道を渡るところを描いてみようと思った。しかし、そううまくいくわけがない。似顔絵のお手本もなく、そもそもアビーロードの風景は、チラ見したことしかない。似ても似つかぬ絵をまた一枚増やしてしまった。 はて。道というのはROADだと思っていたがPATHとは。小径、ということだろうか。 高校生の頃、わたしは片田舎の漁村に住んでいた。小さなコミュニティで、お互いに

          SPIDER

          インクトーバー2023 二日目。お題は「蜘蛛」。 まだ小さかった頃は、家にでっかい蜘蛛が出ることがあった。とにかくデカい。雑木林がすぐ近くだったし、木造の平屋だったし、蜘蛛だけでなくムカデとかナメクジとかゴキブリとか、遭遇すると鳥肌が立つ生き物がわりと身近だった。 蜘蛛は天井や壁の高いところにいて、「おかあさん!!!くも!!!」と大騒ぎすると、箒を持った母が勇ましく現れるのだった。退治された蜘蛛は、あんなに大きかったのに、ポトリと床に落ちるとキュッと縮まって小さくなってい

          DREAM

          10月1日が来た。inktober2023の幕開けである。今日のお題は「DREAM」。 毎晩、夢を見る。まだ独身の頃、夢日記を書いていた。目が覚めてすぐにメモをとっていたので、割と克明な描写ができた。しかし、子どもが生まれてからというもの、目が覚めてからすぐにメモを取るような時間はない。なんとなく覚えていた夢も、午前中の用事がひと段落する頃にはもう、ドライアイスのように、跡形もなく消えている。 しかし、夢の中で走っても走っても、前に進まないのはなぜなんだろう。思うように足

          ぽこぽこ

          note、ご無沙汰しております。 さて、最近、ムスメが学校であったことを話してて、「へえ」と思ったことがあるので書いておこうと思う。 あのねえ、体育大会の準備でさあ、赤ブロックのブロック長が、「明日の朝、8時からダンスの練習をするから集まって。時間厳守」って、招集をかけたの。で、友だちが行ったらしいのね。でもさ、肝心のダンスリーダーが遅れてさ、へへへと笑いながら来たんだって。しかも、あろうことか、そのままいきなり朝ごはんを食べ始めたらしいんよ。それで、わたしの友だちが「信

          くらやみ

          最近、夢を見てもあまり覚えていない。以前は克明に思い出すことができて、ディテールまで細かく書くことができたのだが、今はできない。 昨夜の夢は、わたしが白い車を運転していた。そして、段差のあるところでハンドリングを失敗して、横転してしまった。しまった、オットに怒られる。車に傷がついていませんように、と思いながら、わたしは手のひらに包むようにして車を起こす。いつの間にか、車は小型犬くらいの大きさになっていて、白い車体はホウロウでコーティングされたみたいにツヤツヤと冷たく光ってい

          さいごの

          お別れに行ってきた。ムスメの小・中学校での同級生のママ。48歳。若い。若すぎる。 一番最初に言葉を交わしたのは、ムスメが小学校1年生の時だ。授業参観の時、ムスメは机のフックにかけてあるお道具袋が気になって、先生の話に集中できていなかった。袋の中を覗いたり、手を突っ込んで何かを確かめたり、とにかく親としてはハラハラしたし、恥ずかしい気持ちになっていた。 その時、彼女がささやくように声をかけてきた。 「気になるでしょ。わかります。でもね、だーれも、気にしてないから。心配いらない

          さいごの

          じんくす

          うちにはムスメがいる。彼女が中学生の時、部活動の移動で乗った新幹線が5時間遅延したことがある。午後3時ごろ博多駅を出て、7時には名古屋に着くはずだったのだが、新岩国を過ぎたあたりで人身事故があり、新幹線が止まってしまった。目的地の名古屋に到着した時には0時を過ぎており、ホテルに着いたら午前1時を回っていた。 さて、先週末のこと。目的地は新神戸。博多駅を午後3時半ごろ出る東京行きの『のぞみ』に乗った。しかし、出発しなかった。中国地方の豪雨のため、運転を見合わせるという。 わ

          じんくす

          さぶかる

          ムスメと一緒に、大学のオープンキャンパスに行ってみた。そして、授業を受けてみた。 サブカルチャーの分析からマーケティングを考える内容だった。「けいおん」のキャラ設定の話から始まって、市町村の活性化にサブカルをどう活かすか、みたいな話で締め括られていたが、「サブカルなめんなよ」と先生が言ったのが印象深かった。 この大学おもしろそうだな、とムスメが思ったかどうかはわからない。

          とむらい

          不謹慎かもしれないが、この写真の中にうっすらオレンジ色に見えるのは、金魚の遺体である。頭から尾ひれまでの長さは約15センチくらいある。 フリースクールの教室で8年くらい生きた金魚が死んだ。その金魚は、水槽に一匹だけで生きていた。3年前にわたしが勤め始めた時、担任の先生が教室に入ると、水槽の中の温度計を頭でつついてカタカタと音をたて、自分の存在をアピールしていた。餌を求めての行動だろうが、もしかしたら先生に挨拶をしていたのかもしれない。そうやって何年もの間、教室のアイドルの座

          ちいかわ

          大人気のちいかわ。わたしも「かわいいなあ」と思って眺めている。なんだろう、このかわいらしさ。過酷な場面もあって、人生山あり谷あり、みたいな感じなのに、どうしようもなくかわいいなと思ってしまう。 ※本文と写真があり、ネタバレします。ご注意を 『ナガノ展』に行ってきた。ちいかわをはじめ、ナガノさんが手がけた漫画やイラストの原画展である。しかし、行くまでは「原画を見たところで、出来上がったものと同じなんだから、見なくてもいいのかも」と思っていた。 ちがーう。そうじゃなかった。

          ちいかわ