ねるよが
ちゃんと眠れない日が多かった。ここ2〜3年、いつも疲れていたし、眠りが浅かった。不定愁訴が張りついていて、オットからは「いつも具合が悪いな」とか「元気な時がないな」とよく文句を言われていた。それでも仕事には行くし、朝は早くからお弁当も作る。晩ごはんは手抜きでも、食器はその日のうちに洗う。そしてソファで寝落ちして、次の朝がまた来る。ムスメからは、「お母さん、寝落ちするって、気絶してるってことだよ」と言われていた。そうなの?
この半年は夕方になったら目も開けられなくなるほど疲労困憊していた。手足の指先や、顔が半分痺れて脳神経外科に行った時も、歯周病で歯科に行った時も、医者からは同じことを言われた。「寝てください。免疫力が下がっています」
見るに見かねた友人が、「ねるヨガ」というのを勧めてくれた。いやー、こんなに疲れているのにヨガなんて無理じゃろ、と思ったが、「寝てるだけでいいのよ。顔をマッサージするだけ」という説明に、どんなものだろうかと興味が湧き、行くことにした。
まずは足湯。それからふわふわのムートンの敷物の上に横になる。湯たんぽでお腹を温めながら、マッサージが始まる。触るのは、顔と首筋と肩だけ。目を閉じていると、水の中を漂うような感覚になる。かすかに聞こえる音楽が、耳からすーっと入ってきて、脳の中をくるっと回って出ていく感じがする。水の中に漂っているような感覚になり、呼吸が深くなる。眠りとまどろみの境目を行ったり来たりしながら、何も考えない時間を過ごした。
「はい、終わりました」と声をかけられたのが90分後だった。え?もう? 時間の感覚がないというか、長くも短くも感じるような不思議なひとときだった。
全てが自律神経のせいとは言えないだろうが、もう何年も交感神経と副交感神経のバランスが悪いということは、わかっていた。常に体が戦闘モードになっていて、ガチガチに固まっていたし、なんでもネガティブに受け止めて、自分を守るために心を開いていなかった。体調の悪さも、メンタルの弱さも、全部見て見ぬふりで、毎日をなんとか乗り越えようとしていた。ただ薬を飲んでいないだけ、医者にかかっていないだけで、その実、全く健康とは言えない状態だった。それらが、顔のマッサージを受けただけで、どんどんほどけていくという不思議。
顔にはいろんな神経が集中していて、そこをほぐすことで自律神経を整えていくのだという。
それ以来、よく眠れる。眠ることに罪悪感がない。「まあ、いいか」と思えるようになってきた。ありがたいことだ。
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