商業出版する方法#42〜SNSでフォロワーが一定数いないと出版できない・・・という現実について元KADOKAWAの編集者は「こう」思う。
ビジネス・実用書の商業出版コンサルタント、渡邉です。
ある出版関係者さんのツィートがSNS上を賑わせています。
(画面タップすると、リンクに飛びます)
SNSで活躍している人を著者にヘッドハントする、という戦略はもう6年も前から我が古巣KADOKAWAが行ってきた戦略です。
特に「ビジネス・実用書」の部署でね(文芸はまた違うと思います)。
この戦略を編み出したのにはいくつか理由というか、要因があるんですが、その一つが「営業部に頼れない」という社内事情です。
KADOKAWAという会社は、角川書店が単にトランスフォーメーションを起こしたのではなく、9つの出版やメディア関連会社が合体してできた新会社です。
そもそも渡邉は角川書店の社員ではありません。ビジネス・実用書の専門出版社である「中経出版」という会社の編集者でした。
諸々あって、中経はKADOKAWAへ参入。私は履歴書上「KADOKAWAの社員」になったわけです。
新たに新設された「ビジネス・実用書編集局」は、中経だけではなく、それこそ9社の中で一体化した「メディアファクトリー」という会社であったり、その他旧角川書店の雑誌系編集部なども合わさってできた部署です。
んで、運営していく中で一つ「残念」なことが起こりました。
それがKADOKAWAの営業部は、ビジネス書・実用書の営業や販促に見向きもしてくれなくなった、という変遷です。
なんだかんだ売れるのは、アニメやコミック。そして文芸。初版の部数がそもそも違いますからね。アニメやコミックは、数万部初版なんてまだまだいける。文芸も大御所先生で大河ドラマなんかとタイアップになった日にゃあ、初版部数は数「万」部をババーっと刷ってしまう。
一方でビジネス・実用書なんて、初版4000〜8000部がザラ。売れている著者さんでも「1万部」が上限。
お分かりでしょう。ハウツー本って「小さく生む」が前提。そして、読者や市場の賛同を得て「大きく育てていく」のが売り方なんです。
そのためには営業部がコツコツ足を稼いで、しっかり書店さんとリレーションを取りながらやっていく・・・みたいなのが大事なんですが。。
かつて中経もメディアファクトリーも、そういった手法をとって、編集〜営業・著者を巻き込んで、みんなで本を売ろう!という施策を色々行っていました。
でも、時代と会社の大激変によって、それはもう難しくなってしまった。
小部数の本を丁寧にうる、よりも、ドーンと仕掛けられる本を集中して売りまくって売上を立てる!の方が、効率がいいですからね。
それまでビジネス書や実用書を売ってくれていた営業マンもすっかり、ハウツー本などみてくれなくなったし、会社の方針から、見向きしてもらいづらくもなった。
(こうした会社の方針により、優秀な営業マンはどんどん辞めていった・・という事実もあります)
こんな状況では、売上は立てられない。営業にはもう頼れない。新人著者を迎えて、良い企画をたてて本作っても、結果は出づらい。
じゃあ、、どうする!??
ということで、開発された新たな手法が「SNSから著者をハンティングする」です。
この作戦は当たりました。
ある一定数のフォロワーがいる著者を迎えて、企画をたて、本作りを行って、著者のSNSで宣伝してもらった。。。
すると、、、増刷するようになった!
ファンから火がついて、他のSNSでも拡散や伝播が頻繁に起こるようになり、SNSを活用するだけで、ベストセラーも産まれるようになったんですね。
だから、私もKADOAKAWAを辞める2年くらいはひたすら「SNS」を頼みに著者のハンティングをやっていました。
けれど!これは非常に骨が折れる作業です。
いつもモバイルから離れられない。直に著者に会うというより、パソコンやスマホと睨めっこの日々。
もう・・・疲れに疲れました。
ぶっちゃけ、この仕事が私の体調不良=「鬱症状」を引き起こし、休職へと追い込まれるきっかけにもなったのはいうまでもありません(この体調不良がきっかけで、私はKADOKAWA退職にも至ったのですが)。
が!
私はそれでもSNSから著者をハンティングし、本作りを行ってきたことでメリットも享受しました。
それが「SNSの可能性の高さ」です。
SNSって、きちんと「自分メディア」として育てれば、それこそ個人ビジネスは拡大するし、自著も売っていける。SNSを更新するだけで、顧客獲得・集客と合わせ、自著の増刷や拡販にも役立つ。
実際私が担当した本は遠くアメリカに住む日本の人にも読んでもらえて、そのきっかけがSNSでもあったので、SNSの底力を目の当たりにしたのはいうまでもありません。
人の足とコミュニケーションを重ねての営業や販促も大事であることはわかりますが、SNSの力が計り知れない”レバレッジ”をうむ!ことも、見逃すわけにはいきません。
私はメディアミックスの雄として名をはせた、KADOKAWAの社員として最後の会社員編集者生活を送りました。
新しいことはどんどん取り入れ、挑戦をしていく、業界の古い習慣はどんどん打破していく風習は好きだったので、SNS×出版という図式は、決して悪いことではないと思います。
そしてね、個人でビジネスされている方は、特にSNSを上手に育てると、ビジネスも拡大しやすいし、本もまじで売れていきますよ。
出版も決まりやすい!です。はい。ブログコツコツやっている人は、出版決定率は不思議と高いです。
確かに、営業が売らなかったり、著者頼みにするのは「出版社の怠慢」と言われるかもしれない。
でもね、冷静に考えて欲しい。
今は本屋さんへいくより、先にみんな「スマホをみている」んです。
このシビアな事実や現実から目を背けていては、絶対いけないと思います。
ちなみに、SNSで活躍していないから企画通らない・・・というのは、全ての出版社ではないです。だから、ここで諦めるわけにもいかない。
SNSだけを重視して、本の刊行の是非を考える出版社だけでもないので、粘り強く出版社を当たることが大事でしょう。
しかし、SNSの活躍を重視する出版社が増えてきているんだ・・・という現実もあるのです。KADOKAWA方式を取り入れる会社も増えてきているぞ!という緊張感が大事、ってことです。
出版の世界も「変化あって」の生業。いつまでも「昭和」のような売り方や、アプローチだけであっていいはずはありません。
時代と人とともに、歩んでいかなければ、生き残りもない。
ちなみにこのツィートをされたのは、過去の出版社でご一緒した「先輩」です。先輩の警告はわかります。しかし一方で、SNSの力ってすごいから。レバレッジハンパないから!って伝えたい私もいる。
また、SNSでフォロワーがいるからといって、そのコンテンツがそのまま本になるなんてことはない。
そこは改めて編集者サイドで「企画を立て直し」、企画書を作って、稟議を通し、著者に執筆を促し・・・地道に丁寧に本作り・編集はしなければ良い本は生まれません。
SNSのフォロワー数頼みだけでも、やっぱりいけないんですよ。
綿密な商品作りと、販促・コンテンツ拡散の計画がセットになって、良い本作り・本売りができていくのではないかな、って思います。
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