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運動音痴な息子が黒帯になった話 #5「実は先生は有名人だった」

子どもの頃ランドセルを置いては外を走り回っていた私とは正反対に、運動嫌いインドアな息子は保育園の時に私の意向でちょっと強引に極真空手を始めました。


前回は、真面目に稽古も柔軟もして来なかった息子は初めての試合で瞬殺され、それを機にほぼ毎日道場に通うようになったというところまで話しました。


私が誘っても、祖父母が誘っても一切外出に応じない運動嫌いの息子ですが先生からの誘いを断る事はなく、100%出掛けていきました。
往復の自転車移動で太陽も浴びて、身体も動かしてきて、、母としても先生のお誘いはありがたい限りでした。

先生はいつも道場の横にある事務所にこもって仕事をされつつ、夕方になると道場に出てきて稽古をしていました。私は先生と空手に関する事しか話をしていなかったので、先生についてはあまり知りませんでした。
時間に融通が効くようなので、ご自分で会社を経営しているんだろうなくらいの感じでした。


ある日私の同僚が埼玉で極真の道場を始めたというので、うちの息子も東京の道場で極真やってます!という話から、、どこの道場?という話になり、、
先生の名前を聞かれたので答えたところ、極真界では超有名な先生ということを知り衝撃を受けました。
何も知らなかった、、、(;;;・_・)
そんな先生が、センスもやる気もない子どもの為に時間を割いてくれているのかと思うと今まで以上に畏れ多くなりました。

同時にこの時、「だからか!」と妙に納得。
確かに進級審査の時も、試合の時も、先生は皆より遅れて会場に入って来て最前列の中心の席に座っていました!色んな道場の黒帯の先生たちが順番に近づいていき腰を低くして先生に挨拶していました!
偉い先生だったからか、、その世界に疎い私はこの時初めてその事実を知ったのでした。
でも、だからと言って先生と息子の何かが変わる訳ではなく図々しくも今まで通りにお世話になり続けました。


そして先生の有名っぷりは極真界に留まらず、、
車の販売をしている人たちの間でもちょっとした有名人という事を知ることになります。TOYOTAで働いている私の高校の先輩と子どもの習い事の話をしていて、、空手をやってるという話になると、

「もしかして、あの先生?超有名だよ。」

なんで空手をやっていない人まで知ってるの??

話を聞いたところ、先生は車やバイクが大好きで頻繁に買ったり、買い替えたりしていたそうです。それはTOYOTAに限らず、色々なお店で。なので販売に関わる方の間でもとても有名な方だそうです。息子によると、先生が新しいバイクを買うと「かっこいいだろ」と見せてくれるそうです。


ある時先生の奥様とお話する機会があり、豪快なエピソードをたくさん教えていただきました。
これはそのうちの一つですが、、
大通り沿いにあるバイク屋さんでよくバイクを物色していた先生は、その日何も買わなかったのにお店に札束を置いて帰ります。

なぜそんなことをしたかと言うと、
バイク屋さんからコロナの影響で経営が厳しいという話を聞いて

「今日はバイクは要らないけど、これ買ったことにして。」

とお金だけ置いてきたそうです。
このやり方が正しいかとかどうとかではなく、こんなことさらっとできるなんて、、、純粋にかっこいい!と思いました。

奥様からとにかく豪快なエピソードが次から次に出てきて、私が笑いながら聞いているのを見て、「端から見たら面白いかもしれないけど、私からしたらたまったもんじゃない!!」とご立腹されてました(笑)


道場のお弟子さんも先生の会社で働かれていたので、息子に冗談で
「将来は先生の会社で働かせてもらえば?」と話すと、息子もまんざらでも無く
「それいいね!」
なんて私達は勝手に話していました(笑)


先生のプライベートについてあまり知りませんでしたし、こちらから聞くこともありませんでしたが知れば知るほど魅力的で豪快な先生です。息子が慕うのも納得。いつしか私も一ファンになっていました。
息子に対しては優しいだけでなく、厳しい時の方が多かったと思います。思い入れが強い分だけ稽古では当たりも強く、息子に

「怖いとか、嫌になることはないの?」
と聞くと、

「怖いけど、先生は愛情伝わってくるから嫌にはならない。」
とのことです。
あんなにインドアで運動嫌いの息子は、特にスイッチが入った瞬間は無く、自然と増えていく先生との時間の中で極真を身に付けて行くのでした。

息子にとっては空手の先生であり、
人生の先輩でもあり、
父親のような存在でもあり、
愛情を注いでくれる存在でもあり、、、
先生は私たち親子にとってかけがえのない存在になっていました。

まずは目指せ一勝!

長くなってしまったので続きはまた
長文最後まで読んでいただきありがとうございます。


つづく

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