もえり

会社員兼ひよっこ作家。つむぎ書房様より『罪なき私』出版予定。noteでは日常で感じるエ…

もえり

会社員兼ひよっこ作家。つむぎ書房様より『罪なき私』出版予定。noteでは日常で感じるエッセイ・小説を中心に綴っていくつもりです^^ 👑第一回オール書籍化コンテスト特別賞受賞 君の声が聞こえない https://www.amazon.co.jp/dp/B09LTWF1CP

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  • 旅ことば(旅小説・エッセイ)

    筆者が旅で感じたことや、実際の旅から連想した物語を綴っていきます。

  • 小説「まなざし」

    交通事故で聴力を失った女性、瞳美と彼女と生きることを選んだ恋人の真名人。音のない世界で、彼女のまなざしは何を語ろうとしていたのか。 普通の恋人と同じように愛し、すれ違い、味わうことになる心の痛み。 口で伝えられないからこそ、僕は彼女を見つめている。ずっとずっと、彼女のそばで。

最近の記事

電子書籍「恋の消失パラドックス」発売しました!

今月頭に電子書籍小説「恋の消失パラドックス」をkindleで発売しました! 表紙はなむらしゆ様にイラストを描いていただき、とても素敵に仕上げてくださいました。 ありがとうございます! ローファンタジーな青春小説です。 もともと怪しげなアプリなんかが登場するホラー漫画が好きで、よく読みあさっていたのですが、今回そんな怪しげなアプリを使ってホラー以外のお話が書けたらなと思い、構想してみました。主人公の女の子が内向的な性格をしており、あれこれ考えすぎてしまうところが読みどころで

    • 短編小説「色褪せて、消えてなくなれ」

      「菜乃花は、俺のことまだ好きなの?」 東京の街は、夕闇の底に沈んでいけばいくほど街を歩く人々の足取りが軽くなる。夜の街へ繰り出す若者たちであふれているからだ。わたしの地元の山陰地方では、夕闇に沈む景色とともに、人通りはどんどん少なくなっていったのに。 東京の、池袋なんていう賑やかな街に住んでいた。大学を卒業してからもう3年になる。卒業と同時に就職した大型書店がちょうどこの街に鎮座しているのだ。家賃11万円のマンションに、会社からの住宅手当を充てて6万円で住んでいる。おかげ

      • 短編小説「透かしても見えない」第十話 大好きな人へ

        ◆◇ 翌日、土曜日。私は沙紀に連絡をとって、お茶をしようと約束をした。 12時に待ち合わせをして、鴨川沿いの以前から気になっていたカフェに二人で入る。私がお店に着くと、彼女は店の前ですでに待っていてくれた。 「唯佳、この間はごめんなさい!」 私と会うや否や、彼女は真っ先に頭を下げて来た。一体なんのことだろうと思ったが、昨日の和田先輩との一悶着を思い出し、「ああ」と合点がいく。 「いや、いいよ。というか、沙紀は悪くないし」 「ううん。和田先輩のこと信用しきってたのがあかんかっ

        • 短編小説「透かしても見えない」第九話 そして、見えなくなる

          和田先輩の家から出ると、真っ暗な空の下、私もよく知っている街並みが目に飛び込んできた。同じ大学の人だから、家が近くても不思議じゃない。川を渡る必要はあるけれど、よかった。ここからなら下宿先まで15分もかからないだろう。 みじめな思いを抱えたまま、私は自宅へと続く鴨川の橋を渡ろうとした。でもなんとなく、橋を渡る前に河原を歩きたくなって、下へと降りる。すぐ目の前で流れている水の音が不安定だった心を少し落ち着けてくれた。 そのまま川辺に腰を下ろし、体育座りのように膝を抱え込んだ。当

        電子書籍「恋の消失パラドックス」発売しました!

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        • 旅ことば(旅小説・エッセイ)
          4本
        • 小説「まなざし」
          38本

        記事

          短編小説「透かしても見えない」第八話 逃走

          ざわざわ。 ざわざわざわ。 人が動く気配がして、私は薄らと目を開けた。ぼやけた視界がだんだんと広がってゆく。 「……」 最初に飛び込んできたのは、真っ白い天井。いつもより身体が温かい心地がして、柔らかな毛布が、全身包んでくれているのが分かった。しかしそれ以外は何も分からない。今何時で、ここはどこなのか。すぐに理解することはできなかった。 「あ、唯佳ちゃん起きた?」 頭上から先ほど聞いたばかりの声が降って来て、ぎょっとする。なにこれ、なんでここに彼がいるの! そう、私を心配そう

          短編小説「透かしても見えない」第八話 逃走

          短編小説「透かしても見えない」第七話 出会い

          ◆◇ 「でさ、来週一緒に行かへんか誘われてんねんけど、唯佳はどう?」 翌日、5限目マクロ経済学の授業が終わり、一緒に講義を受けていた沙紀と教室を出ようとしていたところだった。同じように教室から退散しようとする学生たちの人並みに揉まれて、沙紀の声があまり聞こえない。ようやく教室から出て「なんて?」と聞き返したところで彼女はこう言った。 「コンパ。サークルの。友達も誘っていいよって言われてん。唯佳もどうやろって」 沙紀は和楽器のサークルに所属していて、どうやらそのサークルでコン

          短編小説「透かしても見えない」第七話 出会い

          短編小説「透かしても見えない」第六話 紅の想い

          ◆◇ 幽霊とデートの約束をしてから一週間後。紅葉を観に行くなら人の多い休日より平日の方が良いということで、私は木曜5限目の経営学の講義をサボり、午後5時に大学を後にした。 「で、どこに行きたいんだっけ」 京都には有名な紅葉スポットがいくつもある。清水寺や東寺、南禅寺あたりが有名どころで観光客も多く訪れる。といっても、京都に来て二年目の私はまだまだこの地に詳しくない。 「えっとね、ここ」 周囲に人がいないのを確認して、彼が雑誌の一面を開く。 そこに書かれていたのは、「永観堂」

          短編小説「透かしても見えない」第六話 紅の想い

          短編小説「透かしても見えない」第五話 デートのお誘い

          「さっきの、ひでえ。沙紀ちゃんに俺のこと変なやつだと思われたじゃん」 3限が終わり、私もようやく空きコマになった。大学構内にあるベンチに腰掛けていると涼真が話しかけてきた。11月の大学構内は少し肌寒い。でも、木々たちが色づき始めるこの時期は構内を歩くだけでも気分が高揚した。 暗黙の了解だが、周りに人がいる際は話しかけないというルールになっている。いまはちょうど、ほとんどの生徒が授業で外にはいないため、涼真にとっては私に話しかける絶好のチャンスだろう。 「事実を述べたまでよ。

          短編小説「透かしても見えない」第五話 デートのお誘い

          短編小説「透かしても見えない」第四話 トモダチ

          ◆◇ 駒沢涼真を成仏させる。 そう決意したところで何から始めれば良いか分からない私は、ひとまず「幽霊」というものを理解しようと、図書館で心霊系の本を読み漁った。けれど、分かったことは幽霊にもいくつか種類があるらしいということ、スピリチュアルな話とセットで考えられることが多く、実際のところはよく分からないということだけだった。 つまるところ、何も分かっていない。 「まあ、そんなもんよねえ」 大丈夫、はなから本で解決できるなんて思ってなかった。こんなのは前座だ。 「どうしたの、

          短編小説「透かしても見えない」第四話 トモダチ

          短編小説「透かしても見えない」第三話 共同作業

          ◆◇ 私の家に「幽霊」が現れて一週間が経った。 初めはまったく信じられなくて(というか今でも信じられていないが)、「近づくな!」と散々喚き散らしていた。家の中のありとあらゆる物を投げて彼を攻撃しようとしたが、例によって全て彼の身体を貫通し、いよいよ私は男が幽霊であるということを受け入れざるを得なくなっていた。 しばらく彼と過ごしてみて分かったことがいくつかある。 一、彼の名前は駒沢涼真こまざわりょうま。北海道出身で、私と同じ20歳。亡くなったのは半年前。自分がなぜ幽霊をや

          短編小説「透かしても見えない」第三話 共同作業

          短編小説「透かしても見えない」第二話 透明の人

          ◆◇ ばふ、と投げつけたカバンが硬いところに当たる音がして、私は目を疑った。 自分で言うのもなんだが、運動神経には自信がある。中学の球技大会では必ずチームを引っ張っていたし、高校ではあらゆる運動部の先輩たちから部活の勧誘を受けた。 だから、私がこの距離で的を外すはずがない。 それなのに男を目掛けて投げたはずのカバンは、どうしてか彼の後ろの壁に当たったのだ。それだけじゃない。私が投げたカバンは、彼の身体を貫通して壁に当たったように見えた。 「は……」 あまりの衝撃に、私は二の

          短編小説「透かしても見えない」第二話 透明の人

          短編小説「透かしても見えない」第一話 侵入者!?

          【あらすじ】 京都の大学に通う二回生の浜崎唯佳は、下宿先に突然現れた青年の幽霊と、生活を共にすることに。 初めは戸惑い、早く彼を成仏させたいと意気込んでいた唯佳だったが、彼と日々を過ごすうちに、特別な感情が芽生え始める。 初めて“それ”を目にした時、私は驚きのあまり声を出すことができなかった。 隠れなきゃ、と咄嗟に部屋の中を見回しても、ベッドの下は人間が入れるほどの隙間はないし、クローゼットは買い貯めた服でいっぱい。時間をかければスペースを空けられないこともないが、今すぐに

          短編小説「透かしても見えない」第一話 侵入者!?

          ねじれの恋

          きっかけは高校一年生の席決めくじ引きで、私が真ん中の列の後ろから2番目の席を引き当てたことだった。 「ねえ萌生、あたしと席交換してくれない?」 ちょうど私の真後ろ、つまり真ん中の列の一番後ろの席を引いた友人が、私の肩を叩いてそう主張した。 「別にいいよ」 「ありがとう!」 どの席に座るかということに特にこだわりのなかった私は彼女からの提案を快諾して彼女と席を交換した。 当たり前だが一番後ろの席は黒板から一番遠い。だから希望する生徒が多いのに、なぜか彼女は真ん中の席

          ねじれの恋

          出産レポ(R4.9.29)

          こんにちは。 わたくし、今年の9月29日に第一子を出産しました。 育児にもちょっとずつ慣れ、ベビとの生活も板についてきた今日この頃なのですが、書くのが好きなのに気がつけば出産について何も書き残していない……!!と思い、筆を取りました。 誰になんの需要があるかは分かりませんが、自分の人生の記録として記憶が新しいうちに出産レポを書いておきたいと思います。ゆるっとお付き合いいただけますと幸いです。 あれ?予定日過ぎたけど?(笑)私は現在大阪に住んでいるのですが、初めての出産でいろ

          出産レポ(R4.9.29)

          短編小説『愛の欠片』

           まる一週間会社を休んだ。  ようやくやるべきことが終わり、明日から出社しようと意気込んで、朝起きるつもりだった。  が、身体が動かない。  無理やり腕で支えてベッドの上で上体を起こそうとするも、途端にひどい頭痛に襲われてそのまま倒れ込んでしまう。  身体中の感覚を研ぎ澄ませてみると、熱を帯びた体に、痛む節々。これは、発熱に違いない。家に体温計がないから確かめようがないが、そういうことにでもしておかないと説明がつかないのだ。  もう、仕方ない。  かたわらに眠る彼の横顔を眺め

          短編小説『愛の欠片』

          自著「罪なき私」発売しました!

          いつもありがとうございます。 この度、自著である長編小説「罪なき私」が発売いたしました。 生きる気力をなくした主人公が、異世界で課せられたとある残酷な任務を遂行していくお話です。 販売はamazonのみです! ぜひ一度販売ページを覗いていただけると嬉しいです。 よろしくお願いいたします。 【販売ページ】 「罪なき私」葉方萌生著 【あらすじ】 「わたしは、あなたの自殺を止めに来ました」 就職活動に失敗し、最愛の母親を失った藤沢美詩が出会ったのは、とんがり帽子をかぶ

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