見出し画像

ブックレビュー第4弾:USJを劇的に変えた、たった1つの考え方

こんにちは。ブックレビュー第4弾は悩みましたが、前回の「ドリルを売るには穴を売れ」で学んだマーケティング知識をもう少し深めたくて、具体的な内容且つ分かりやすそうなマーケティングに関する本として、「USJを劇的に変えた、たった1つの考え方:森岡 毅(著)」を選びました。

重要なのは消費者視点

マーケティングの重要な仕事に、価格施策を決めるものがあります。価格は売り上げに左右するだけでなく、顧客からのブランドの評価そのものになるのでとても大切です。
また、ターゲット客層の幅も決めなければいけません。狭すぎると利益にならず、しかし広すぎると濁る・認知してもらいにくくなります。

このようにマーケティングでは重要な決定をいくつもしなければいけません。こういった重要な決定をしていく上で最も大切なことは”消費者視点(Consumer Driven)”です。
「どれだけの消費者価値に繋げられるか」を考えて、判断・決断をします。消費者価値に繋がらなければ(消費者に伝わらなければ)、意味がありません。

◎作り手は消費者感覚から遠ざかる
自然状態では、つくる側は ”消費者感覚” から最も遠ざかる運命にあるそうです。
プロの作り手は業界で経験を積むほどに、知識を得て「玄人」になっていきます。目や感覚が肥えると「感動の水準」が一般消費者のものとどんどん離れていきます。”分かりやすくて、面白い”ものが、刺激や品質が足りないものに見えてきます。そして、いつか自分がいいと思ったもの(=玄人好みなもの)をつくるようになっていくのです。

消費者との接点を制する

マーケティングの本質となる、売れる仕組みをつくる・売れるようにするには消費者と商品・サービスの接点を制する必要があります。

①消費者の頭の中を制する
人間は自分が知らないものに対して、購買行動をとりにくい生き物です。逆に知っているブランドや会社の商品・サービスは安心して購入することができると言えます。例えば、Panasonicの家電を買う際、品質や信用していいブランドかなんて気にしませんよね。
なので、ブランドや会社はまず ”認知率” を上げることで、消費者の頭の中を制する必要があります。

◎ブランド・エクイティー(Brand Equity)
消費者の頭の中にあるブランドに対する一定のイメージのこと(ポジティブ・ネガティブ どちらも含む)。ブランド・エクイティーを築く為の一連の活動を「ブランディング」と言います。
”Equity”とは「資産」という意味で、ブランド・エクイティーとは「消費者の頭の中に築かれたそのブランドの資産」という意味になります。

②店頭(買う場所)を制する
たまに「欲しい商品を買おうと思って店頭に行ったものの、商品を見つけられなかった・品切れだった」ということがありますよね。
また、欲しいブランドはあるけれど、それが売っている場所が遠くて似たようなものを購入した・いつも買ってるブランドをリピートするつもりが、店頭で山積みにされている別のブランドを思わず買ってしまった…こういった経験は誰でもあるかと思います。
これらは全てそのブランドが店頭での戦いに負けているから起こったことです。消費者の頭の中を制することができても、それだけで必ずしも購入に結びつくとは言えません。

③商品の使用体験を制する
消費者の最初の購入を「トライアル(Trial)」といい、2回目以降の購入を「リピート(Repeat)」といいます。
トライアルもとても大切ですが、2回目以降のリピートがないと中長期的に見て売上を維持することは難しくなります。そして、リピート率に最も影響を与えるのが、実際に使ってみた商品の使用体験です。またリピートの他に、一定期間に何回購入するかという「購入頻度(Purchase Frequency)」も重要になってきます。

◎消費者の期待
人は何かを購入する際「期待」をします。
なので、実際の使用感が「買ってよかった〜!」と期待を上回る方向に設定する必要があります。消費者の期待を上回ることでリピートに繋がり、良い使用感は口コミとして広まります。最近ではInstagramやTwitterを検索ツールとして使うことが主流となっており、リアルな口コミは良いものも悪いものも瞬時に広まる傾向にあります。

まずは、戦況分析

マーケティングでは、目的→目標→戦略→戦術の順に進めていきますが、これらを考える前にやるべきことが ”戦況分析” です!

情報の価値は質そのものにあり、”質の高い情報”は精度の高い戦略に欠かせません。戦況分析をしっかりすることで、市場構造に逆らって確実に失敗する「地雷」を避けることができます。市場構造に逆らうことも不可能ではありませんが、多くのエネルギーや経営資産を使うことになります。
水の流れに逆らうよりも、水の流れを利用したほうが得ということです。

戦況分析をする上で、自社を取り巻くビジネス環境を理解するための”5C”という5つの視点があります。

①Company(自社の理解)
会社の方針に逆らう戦略は非効率なので、まず自社の全体戦略を理解します。その次に、自社の使えうる経営資源をできる限り把握します。どのような能力を持った人が何人いるのか・投資できる予算はいくらあるか・使用可能なブランドはあるか・データや情報など。
最後に、自社の能力や性格としての特徴(強み・弱み)を把握します。過去にやってきた実績や、得意だったこと・不得意だったことなど。

②Consumer(消費者の理解)
マーケティングでの消費者理解とは、”消費心理を人として包括的に理解しているか”ということを指します。商材に対してのニーズの理解だけでなく、本当の部分での価値観や悩みはどこなのか、常日頃 消費者はどんなことに関心を持っているのかなど、人としての総合的な質的理解に努めなければいけません。

「自分は普段、一般消費者でもあるから消費者心理を理解している-。」
こういった考えは間違いではないけれど、正解でもありません。消費者自身が気付いていない購入する理由や隠された真実があり、そこをマーケターが衝くと消費者の心を大きく動かすことができます。

③Customer(流通など中間顧客の理解)
自社と消費者の間にある存在がカスタマーです。
一緒に市場価値を作り上げているパートナーであり、市場価値のパイプを奪い合っているライバルでもあります。

④Competitor(競合他社の理解)
競合他社の理解は広義においてやっておく必要があります。
例えば高級ホテルの競合他社は「宿泊施設全般」ですが、高級ホテルが顧客に提供している価値は”非日常感”や”リラックスして体を休める”、”記念日や誕生日など思い出となる日を過ごす”など、単に宿泊する以外にもたくさんあります。同じくそれらの価値を提供しているエステやテーマパーク、レストランなども含めて、広義の意味では競合になります。
そこも含めて競合というものを理解しておく必要があります。

⑤Community(ビジネスを取り巻く地域社会の理解)
社会がビジネスに与える様々な外部要因のことで、代表的なものだと、法律・世論・税率・景気・為替ルートなどがあります。
外部要因の多くは自社でコントロールできませんが、自社のビジネスに多大な影響を与えそうな要因は予め明確に把握して、各対策を考えておく必要があります。

戦略と戦術

戦略 … ”目的”を達成するための資源配分の選択
      ∟ 合理的に決定していくべき
戦術 … 《戦略》を実行するためのより具体的なプラン
     ∟ 強い精神力を土台に、情緒的に決定していく

「戦略」は元々戦争から生まれたきた考え方で、何か達成したい目的を叶えるために、今自分が持っている様々な資源を何に集中するかを選ぶことです。

ビジネスにおける資源とは、経営資源のことを指し、「金・モノ・人・時間・知的財産・情報」の6つがあります。そして、経営資源は使う人(経営者)が認識できていないと使えません。
例えばAさんの部下がユニークな長所を持っていたとしても、Aさんがそれに気づいている、もしくは認識していないとビジネスに活用して、成果を出すことはできません。

逆に言えば、経営資源は認識することによって、増やすこともできるのです。使えない人間などいないので、とにかく使える経営資源を増やすことはビジネスにおいてとても大切です。

◎数的有利は必ずしも勝てるわけではない
何にでも勝てるライン(Sufficient line)があり、”ここまでやらないと意味のある効果が見込めない”一線のことを指します。そして勝てるライン(=効果が出るライン)に達するためには、選ぶことが必要です。
あれもこれもと手を出すのは、限られた資源をただただ消費することになります。つまり、”やることを選ぶということは、同時にやらないことを選ぶこと”です。
全てをやろうとすることは”選ばない”ということであり、つまり戦略がなく、意味なく資源を分散させてしまうということになります。

戦略と戦術ではどちらの方が重要か。
答えは”戦略”です。戦略の大きなミスは、戦術ではリカバリーできません。戦略が強いと正しい方向へ進み、戦術が強いと遠くまで飛べます。

日本人を活かす

農村社会であった日本では、「その場の空気感」や「あうんの呼吸」のような、みんなで力を合わせていく文化があり、”合理的”で正しい判断をするのが苦手です。
しかし、日本人には強い精神力が土台にあり、あらゆる分野において細かい部分まで突き詰めていき、日本人はモノにまで精神を込めようとします。それらは日本技術となり、安心安全で性能の良い製品をたくさん生み出してきました。これらの日本人が持っている情緒的で強い精神力は”戦術レベル”において、真の力を発揮するといえます。

ただ、力を発揮できる戦術に至るまでの、戦略レベルの意思決定において、情緒が入りすぎて”合理的”で正しい判断をする際、問題が生じます。
戦略は「選ぶこと」。戦略を決定していく上で、合理的な判断はとても重要です。

日本の戦術面の強みを最大限に活かすためにも、戦略を改善することがキーポイントとなるでしょう。つまり、日本人の「卓越した戦術的な強み」を活かすために事前にもっと合理的に準備をする癖をつけることが必要です。

◎合理的な準備をして、精神的に戦う
・戦略段階では極力”情緒”を排除する 
 ∟ 強い戦略オプションを複数構築するための、科学的な情報分析
 ∟ 理性と感情を区別して議論する
 ∟ 合理主義に根ざした冷徹な”選択”を疎かにしない

実際に読んでみて感じたこと

まず最初に思ったのが「ドリルを売るには穴を売れ」→「USJを劇的に変えた、たった1つの考え方」の順番で読んでよかったなということです。
「USJを劇的に変えた、たった1つの考え方」は「ドリルを売るには穴を売れ」に比べて、文字サイズも小さく、行間も狭いし、ページ数も多くて、最初にこちらの本を手に取っていたら読み進めるのにより時間がかかっていただろうなと感じたからです。

ただ森岡さんの豊富な経験からシンプルに言い切っている部分が多くて、また、森岡さんの娘さんでも理解してもらえるように作っているということもあり、初学者でもスッと内容が入ってくるとても分かりやすい内容でした。更に、面白い例え話など沢山出てきて+αで勉強になりました。

「USJを劇的に変えた、たった1つの考え方」を読むことでマーケティングの世界によりグッと引き込めれて、そして改めてマーケティングの知識というのは、どんな仕事にも役に立つなと感動する、そんな一冊でした。

P.S.  「この本を読んだ後にUSJ行ったらより一層楽しめそう」と気づいた日から、USJに行きたくて仕方ないのと、あとシンプルに森岡さんのファンになりました(笑)


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?