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都市の公共空間を"食べられる庭"に変える、エディブル・ガーデン。

地方と比べて、自然を感じる機会の少ない都市での生活。
日々の忙しなさからの気分転換としてガーデニングを趣味とする人も多くいますが、なかでも最近注目を集めているのが「エディブル・ガーデン」です。

エディブル・ガーデンとは?

エディブル・ガーデン(Edible garden)とは、直訳すると「食べられる庭」
野菜やハーブ、果樹など、植わっているものがほぼすべて食べられる庭のことをいいます。

特に興味深いのが前回の記事でも少し紹介した「ゲリラ・ガーデニング」と呼ばれる方法で作り上げるエディブル・ガーデン。近所に住む人たちを巻き込み、活用されていない花壇や芝生などの公共空間を勝手に(!)耕します。

ゲリラ・ガーデニング自体も緑の少ない都市に自然を感じられる場所を増やすことのできる活動ですが、エディブル・ガーデンとして実際に食べられるものを育てることはボランティアや地域住民が食べ物を得ることができるほか、「食」という身近な行為に改めて目を向けてもらうきっかけにもなります

食を通したコミュニティ構築をめざすIncredible Edible

今回私たちが訪問したのは、イングランド南西部にある都市・ブリストルのエディブル・ガーデンのひとつ。
イギリスで2012年に始まった、食を通したコミュニティ構築をめざす「インクレディブル・エディブル(Incredible Edible=信じられない+食べられる)」というネットワークにはイギリス全体で100以上、世界で1000以上もの団体が参加しているんだとか。そのひとつである「Incredible Edible Bristol」はブリストル市内に9つの拠点を持ち、それぞれのガーデンを手入れをする日をオーガナイズしています。

こちらのマップに示されているように、ブリストルの中心地にはエディブル・ガーデンがたくさん!すべて巡ってみるのも楽しそうです。今回はマップ外に位置し、中心地から少し北東に離れたFishpondsというエリアにあるガーデンでの活動に参加しました。

「ガーデン」といえども、元はコンクリートの道に植わっている街路樹の周りのスペース。バス停の目の前にあり、なかなかの存在感を放っています。

Incredible Edible Bristolは、ガーデンでのボランティア活動のことを「ワーク・パーティー」と呼んでいます。ガーデニングのwork(作業)というとしんどそうな響きもありますが、そこにpartyという表現を付け足すことで楽しいニュアンスが加わります。

本来は毎月開催しているFishpondsでのワーク・パーティーですが、先月は諸事情により開催できなかったそう。2ヶ月間放置されていたガーデンは、雑草が生え放題...!前回のワーク・パーティーで植えたイチゴやじゃがいもを残して、不要な雑草を抜いていきます。

最初は私たち3人とスタッフのルーさんのみでしたが、途中から他の地域住民の方も加わり、みんなで雑草を抜いたり水やりをしたり。参加者の1人の女性に話を聞いてみると、今回が初めてとのこと。近くに住んでいるので前を通りかかり、この日に活動があると知って来てみたそうです。

確かに私たちが作業をしている間にも、通りかかった人が興味津々で見つめていたり、バス停で待っている人が活動について質問してくれたりする場面が何度かありました。ルーさんによると、Fishpondsは中心部のガーデンに比べてボランティアの数が少ないことが課題だそうですが、今後増えていきそうな兆しはありました。

そして、作業の途中にはやっぱりティー・ブレイクがかかせません。私が普段ロンドンで参加している、地域に野菜を配達するためのボランティアでも、あいだに必ずティー・ブレイクがあります。美味しい紅茶を飲みながら一息ついて、世間話やそれぞれの興味・関心を共有する時間を設けることは、ただ作業するだけではなくコミュニティ意識を高めることにもつながるのかもしれませんね。

そうやって適度に休憩しつつ、4時間近く作業をした末には、草だらけだったガーデンの土が見えるようになりました!

ガーデンの端にもコンポスト容器がありますが雑草があまりに多くて入りきらないので、袋につめて公共のゴミ箱のそばに置いておきます。そうすると自治体が回収して、コンポストにしてくれるそうです。

ルーさんによると、Fishpondsでの活動が始まった当初はパーマカルチャーの原理に基づいたエディブル・ガーデンを作ろうとしていたんだとか。しかしスタッフの経験・知識不足もあって上手くいかず、今ではホーティカルチャー(園芸)のような形で、季節によって新しい種苗を植えたり、時期が過ぎたものを抜き取ったりしているそう。

確かに「雑草」という概念そのものが人間の勝手な解釈で、実は美味しく食べられたり、薬効があったりするので、「雑草」とカテゴリーされるものがほぼないエディブル・ガーデンを作ることができると面白そうですよね!

楽しくてかっこいいサステナビリティのあり方?

ブリストルは2015年にヨーロッパの環境都市(European Green Capital)に選ばれているほか、ヒッピーな雰囲気も漂っていて、世界最大級のストリートアートフェスティバルの開催地でもあります。

街中にエディブル・ガーデンがあったり、環境問題への対処を訴えるストリートアートがあったりと、楽しくてかっこいい形で自治体・民間団体・個人それぞれがサステナブルなまちづくりに取り組んでいるようすが印象的でした。

日本でそんな活動をするとしたら、どんなことができるでしょう?

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