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なぜ介護用品はダサいのか──「ヒューゴステッキ」杖レビュー

先日、7年ほど使っていた外出するための歩行用杖が壊れてしまった。これはまずい。生活に支障が出る。線維筋痛症などの持病のせいでほとんど寝たきり生活の私だが、これでも一応週1〜2回は外出する。こればかりは仕方がない。よし、新しく杖を購入しようとネットで調べていたが、なかなか良い杖が検索結果に出てこない。これでもかと言うくらいに、持ち歩くのが嫌になるダサい柄や色のデザインをした杖だらけだった。

そうして諦めかけていた時に、運良くちょうどいい感じの杖に出逢った。それが今回買った「ヒューゴステッキ」だった。

しかし、なぜここまでダサいものが多いのだろう。一体、なぜこうなってしまっているのだろうか。Amazonなど大手通販サイトで検索すると、ダサい介護用品がたくさん出てくる。「自社で作っている介護用品、あなたなら自分の部屋に置いて使いたいですか?」と意地悪な質問をしたくなるほど、ダサいものが圧倒的に多いのが現状だ。

そこで今回は「ヒューゴステッキ」について語りつつ、介護用品の問題に触れてみようと思う。

 

竹虎 ヒューゴステッキについて

しかしなぜ、そこまでヒューゴステッキについて語りたいのか。それは、ヒューゴステッキが機能性もあってデザインもそれなりに追求されているバランスのよい杖だからだ。

まず、この杖はとにかくグリップが握りやすい。グリップにクッション性があって手にそこまで負担を感じずに済む。手のサイズが標準より小さい私だが、この杖なら楽に握ることができる。以前は長時間持つと痛くなるので杖にグリップカバーを付けていたが、このヒューゴステッキでは不要のものとなった。

画像:購入した ヒューゴステッキ

杖自体が丈夫に作られているせいか、地面に杖先がつく瞬間の衝撃が前の杖よりも小さくて疲れない。杖は395gと少し重めで買うのを躊躇っていたのだが、いざ使ってみたらそこまで重く感じなかった。重さがあるせいか非常に安定しており、不安定だなと思うことなく、安心して使うことができる。

けれども、少しの重さでも身体に負担を感じるならば、購入するのをあまりおすすめ出来ない。また、折り畳みなどの軽量の杖を使用していたひとには重く感じるかもしれない。安定と軽さどちらをとるか。私は前者の安定をとったが、それはひとよって全然違う。安定よりも軽さを重視するひとにはヒューゴステッキより別の杖のがいいかもしれない。

さてさて、この杖に関して気になって調べていくと、ヒューゴステッキは輸入モノの杖で、元々は北米系(おそらくカナダ)の会社が作ったものらしい。杖に描かれているhugoという文字は会社名でもある。それを輸入しているのが竹虎なのだ。

話が脱線しそうになったので元に戻そう。杖のカラーはグリーン・ブラック・ブルー・ピンク・ブラウン・グレー・ワインレッドの7色から選べる。輸入モノだからかなのかわからないが、あまり杖で見かけない色合いが多い。どうせなら、自分のファッションに似合いそうものがいいと思って、私はブルーを購入した。淡いジーパンに鮮やかなブルーの杖との相性が非常によくて、とても気に入っている。まさか、自分のファッションとこんなにも相性がいい杖と出逢えるなんて思っていなかった。



介護用品のダサさ、高齢者向けばかりの現状

しかしなぜ、そこまで杖の見た目について褒めているのかというと、基本的に杖はダサい。これは介護用品全体に言えることだが、多くの介護用品は世間が思う「高齢者向け」のデザインばかりで、若い人たちが好むデザインが非常に少ない。今回はたまたまヒューゴステッキに運良く出逢えたものの、既製品として販売されている杖の色や柄が微妙なのが多い。高齢者がメインターゲット層なのは分かっている。だが、あまりにも「高齢者」という言葉から安易に想像できるような色・柄物ばかりで、若い人びとの視点から見ればダサくてドン引きしそうなものばかりで驚いてしまう。

そこまで拘るなら杖をオーダーメイドすればいいじゃんと画面の向こうからのツッコミが入りそうだが、オーダーメイドにはお金と時間がかかる。そして、私みたいに突然壊れてしまった場合は、なるべく早く届いて使えるものじゃないと、杖がなくて生活に支障が出てしまう。


眼鏡と杖は役割が似ている。なぜなら、どちらも使用者にとって生活でなくてはならないもの。そして、普段から身につけており、それが本人の外見の一部となるもの。だからこそ、気軽に買える既製品で、若者向けのおしゃれなデザインがあると嬉しい。もちろん、杖は機能性が何よりも大切だ。だがしかし、杖は同時に日常生活で頻繁に使うものでもある。眼鏡と同じように、見た目も自分に合ったものであるとより生活の質が良くなる。眼鏡みたいに、杖がどこかのブランドとコラボして作ってくれるとおしゃれなのが出てきそうだが、まだまだ介護という枠でしか考えられていなさそうだ。

介護用品は介護する側のためのモノなのか

しかしながら、なぜこんなにもメインターゲット層の高齢者が多いと言われている世の中なのに、こんなにも介護用品がダサいのか。やはり、介護は「する」ものであり、自分が「される」ものだと思っていないからだろうか。いつ、自分が介護「する」側から「される」側になるかなんて想像できない。だからなのか、多くの介護用品が介護「する」側の視点で語った商品説明だったりする。

やはり、どこか「介護されている年寄りは機能さえあれば、デザインなんてどうでもいいでしょう。」と安易な考えが介護用品全体に蔓延しているのだろうか。それとも、実際に使う介護される本人よりも介護する側の人たちのために作っているからこそ、見た目なんてどうでもいいと考えているのだろうか。


インテリアやファッションとしての介護用品、介護される側の視点で考える

この文章を書いている私みたいに、いざ介護される側の人間になると、介護用品はファッションやインテリアの一部として日常生活の中に入ってくる。暮らしのなかにあるものだからこそ、なるべく自分好みのデザインのものを使いたい。

個人的に介護用品のメーカーには介護という枠だけで考えず、ファッションやインテリアの一部としての側面もあることを視野に入れた上で、自分が介護される側だったら具体的にどういう物が欲しいか、きちんと考えて商品を作るべきだと思う。

冒頭にも触れたが、「自社で作っている介護用品、あなたなら自分の部屋に置いて使いたいですか?」と意地悪な質問をしたくなるほど、介護用品はダサいものだらけ。こんなデザインではダサ過ぎて、介護用品を部屋に隠しておきたい。いや、むしろ介護は隠しておきたい存在だからこそ、介護に対しての無意識がデザインに現れているのかもしれない。


そんなダサさが蔓延している介護用品の世界で、ヒューゴステッキは私がちょうど欲しかった理想の杖だった。機能性抜群でおしゃれ要素もちゃんと入れたシンプルなデザイン。いい買い物をしたなと今でも思うくらいに気に入っている。

介護用品は身近で日常生活にあるもの。そして、需要があるもの。今後、ますます高齢者が増えていくことでデザインが豊富となり、介護用品がおしゃれになるかもしれない。少数だがダサさから抜け出そうと頑張っている企業もあるので、その空気が介護業界全体に広がってくれることを願っている。



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