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皮蛋

皮蛋。

ちょうど40年前。
高校の家庭科の授業。
調理室ではなく、いつもの教室の一風景。

N先生が、
「これは、中国の食材でピータンといいま    す。はい、廻して~。」
と言って、お皿を持ってきた。

何やら黒い、いや濃い琥珀色の物体が、
私たちの机から机へリレーされていった。

ピータンはその当時まだ珍しく、ましてや高校生の私たちには、未知の食べ物、どこかの惑星の食べ物にしか見えなかったのである。
匂いを嗅ぐ者、顔をしかめる者。

私の後ろの席のタエミちゃん。
恐る恐るシャーペンの芯を突き刺して、
そのやわらかさを調べていた。

恐る恐る対面した謎の物体を
ほろ酔い気分で、ぷるぷると箸でつまむ
大人になるなんて。
「おいしいね。紹興酒、ビールにぴったり。」なんていいながら。

ピータンを見るたび、
タエミちゃんのシャーペンの先を想い出す
私であった。

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