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坂道シリーズ 名歌詞・名フレーズ46選

らしい。坂道シリーズ全381曲の中から46曲を選んで一冊の本にする企画。彼の作詞は「作詞」になってない、メロディーに沿っていないものも(特に近年は)多いがやはり名曲と呼べるものは数多くあるので、妥当な企画だろう。
坂道シリーズにおける秋元康の作詞はどこまでもリアルな気持ちを書かずに寓話として留まっている点が特徴といえる。つんく♂氏などは「女心」のようなものを捉えた作詞を行っているが、秋元康は徹底して一種妄想と言える範囲のまま留める。そのリアルさの欠如が、存在するのに我々の世界と地続きにいるとは思えない坂道シリーズのアイドル達の持つ現実感の希薄さと結び付き奇跡的なバランスを持って成立する。また、アイドルの晴れ舞台の際に披露され、そのメンバーの歩みと結びつき言葉に意味や重みが付与されることもある。そんな複合的な要因を持ってでしか私は彼の詞を読むことはできないし、今回のnoteは何か基準を設けるわけでもなく、ひたすら彼が書いた名フレーズをそう言える理由と共に書き連ねる。

1.失いたくないから

蝉の鳴き声に ぐるりと囲まれた
校庭の土に染み込んだ 夏の微熱に
君の白いシャツとグレイのスカートが
蜃気楼のように 切なく揺れてた

心の中に
静かに風が吹き始め ふと本音が騒ぎ出す
誰かを好きになるのは 一人になりたくないから

情景描写と心象スケッチへの転換と移行のスムーズさと美しさ。蝉、夏の微熱、白シャツ、グレイのスカートと普遍的な景色の中に「心の中」と言葉が加わることで一気に詞世界への照準が定まる。この後に固有名詞「コンバース」が歌われることで世界の輪郭がハッキリとする。「失いたくない」景色を描き切ることで「失いたくない」というフレーズは歌詞の中に出てこないのにその切実さが露わになる。至高。

2.制服のマネキン

恋をするのはいけないことか?
僕の両手に飛び込めよ
若過ぎる それだけで
大人に邪魔をさせない

恋愛禁止というルールを明確化せずに、しかしそれを多数のファンにおける共通認識として機能させ、さらに世間にもそれを周知させた諸悪の権化がその「恋愛禁止」を逆手に取った非常に露悪的なフレーズ。大人ー子供の中間のような彼女たちがこれを歌うことで生まれる異様な気迫も一方で存在するわけで、「ガールズルール」のMVなどで表現された精神性との共通項含め名フレーズだ。

3.指望遠鏡

どこへ向かう? 指望遠鏡
指のその隙間に 何が見える?
遠いようでも 本当は近い
予言のような宝もの

その予言は輝かしいスターダムを駆け上がることなのか、やってくる幾多の別れなのかは判別付かないが、自らの指を丸めどこかを見る今だけは確かだと伝えている。


4.君の名は希望

希望とは
明日(あす)の空

僕と君の世界を巧みな人称の使い分けと共に描いたこの曲はファンの中で代表曲として認識されている。が、氏はその僕と君の世界における最後のフレーズで「君っていうのは、そこに広がる青空のことだ」と言ってしまう。2人の箱庭に青空というフィクションではない他者が挿入されることで「君の名は希望」はより開けた曲として立ち現れており、そういう意味で非常に意義深い一節だ。


5.他の星から

しあわせに思えるんだったら
知らない間に滅亡してたって
みんなと一緒なら楽しそう

心地の良い空間という内へ内へ向いた意識とそのコロニーの外への無関心は現代の病理でありながら、円陣を組む彼女達と時折ステージで見せる(いい意味で)観客が見えていないであろう振る舞いはまさにこの歌詞を彷彿とさせる。「乃木坂性」の一端を表現している名フレーズだろう。


6.やさしさとは

やさしさとは
何なんだろう?
君に駆け寄る速さか
それとも落ちた涙を
一緒に拾うことか

この歌詞のなかで秋元康は「やさしさとは」に明確な解答を提示していない。しかし、いくつもの卒業ライブで歌唱された際に見せる卒業メンバーの孤高の背中を見たメンバーの胸中を「やさしさとはなんなんだろう 君に駆け寄る早さか 落ちた涙を一緒に拾うことか」と描写しきっている。よく乃木坂はメンバー間で「距離感がバグってる」など言われているが、それでも互いを成立させる半径は保っているわけで、そんな歩み寄る/歩み寄らないの淡いを表現した1節。


7.生まれたままで

生まれたまま
ずっと自由に生きられたら
今 どうしてるだろう?
真っ白だった羽根も汚(けが)れてはいなかった
いくつの嘘
自分に言い続けたのかな?
誠実じゃない
僕はその分 大人になった

制服のマネキンにおいて大人の対立項として設定された彼女たちは「大人になった」と歌うわけだが、制服のマネキンとの差異は歌っているのがアンダーメンバーだということか。照らされている者と照らされていない者が生まれている中で、アイドルとして清濁併せ呑んだアンダーメンバーが「汚れた羽」と歌い、その羽でアンダーライブを中心として大きな波を作るのはすぐ先の未来だ。


8.何もできずにそばにいる

ごめんね そんなことしか言えない
泣いてる君のそばにいるだけで…

「やさしさとは」同様2人間の距離感の話。謝りながらそばにいて、何に対して謝っているのかわからないながら肩を抱く光景こそがあるべきコミュニケーションなのでは…と乃木坂を見てて思うわけだがそれを体現している。


9.ここにいる理由

どれくらい待てばいいのか?
どうしようもないとあきらめるまで
サヨナラはきっかけなんだ
もう一度 キスをする理由はない
さっきからわかっていても…


10.何度目の青空か?

永遠は短い

MVからも解るが、あの学生生活は既に写真の中の出来事になっている。何か事件が起きているわけではない、どこまでも続くような日常を積み重ねたビデオ。もちろんその生活に終わりがあり、「永遠は短い」ことがわかるし、その日常を「乃木坂にいる時間」と捉えても齟齬は生まれない。モラトリアムとしての乃木坂の描写。


11.Tender Days

いつも流れていた
ジョーン・バエズ

こういう明らかにメロ先で音数優先というスタンスは崩してほしくない。崩れまくってるけど。四畳半フォーク的な固有名詞の使い方とかは秋元康はかなりレベルの高い作品を作ってるイメージ。


12.あらかじめ語られるロマンス

Aries Taurus
Gemini Cancer
Leo virgo
It's in the 12 signs

このキャッチー過ぎるサビは星座の名前を並べているだけではあるが、夜空の星座が映る瞳の描写として100点満点。


13.ひとりよがり

昨日
夢をひとつ叶えるため
大事な人と別れた
恋はきっと邪魔になるから
強く 強く
なりたいと願った
ひとりよがり

アイドルとしてのナラティブを書きながらif世界の「西野七瀬」が立ち現れるという構成。歌詞に書かれているストーリーが事実なのかは定かではないが、乃木坂46に加入する未来というのは実際の西野七瀬とif世界の西野七瀬とで違いはない。新たな物語を付与することでエース西野七瀬の存在理由が際立つ。


14.もう少しの夢

もう一度 夢を見させて
今までの私と違う
いつも途中で立ち止まってた
この道 歩き続けよう

役割は「ひとりよがり」同様だが、こちらは乃木坂加入後の西野七瀬に新たな(存在するかしないか定かではない)ストーリーを付与する。ファンにも共同幻想を与える。


15.羽根の記憶

想像してみた
10年後の自分
どこにいるのだろう?
何しているのだろう?
その頃 ちゃんと
しあわせなのかな?
君と一緒にいて
笑っていられたらいい

よく、メンバー同士で「卒業しても友達で」などという会話がステージ上で交わされる。アイドルには期限があり、その先に彼女たちの人生があるという事実をアイドルとして存在している最中に歌っているという奇妙な倒錯。そしてその10年後まであと数年しかない。多数は乃木坂から卒業し、この曲のオリジナルメンバーはもう限られた人数しかいないし、その事実もこの曲の響きを豊かなものにしている。


16.今、話したい誰かがいる。

今までならきっと逃げてただろう
君のことを失うのが怖い
片想いなら黙っていればいい
両思いなら気づかなければいい
話したい誰かがいるっていいもんだ

話をすることではなく、そこに存在してくれていることにこそ価値があると歌うのはアイドルとファンの関係とも取れてしまう。


17.悲しみの忘れ方

つらいこともいっぱいあった
いくつもの坂 登った

あまりにも「そのまま」過ぎる歌詞はそれだけでの評価はしにくい。しかし、これまでの乃木坂の歩みを具体例無しに素直すぎる形で歌うのは乃木坂のひとつの章の終わりを飾る曲として相応しいように思う。


18.強がる蕾

家族や友達残して
旅立つ日は夢への一歩
そう いつでも
さよならは強がる蕾

この曲の後の乃木坂がどんどん拡大する=花開くことを考えると功労者深川麻衣を蕾と表現するのは合点が行く。賀喜遥香など地方から出てきたメンバーにも歌い継がれて一種普遍的な立ち位置を手にしたのもここの言葉あってのこと。


19.白米様

白米 愛しているわ
白米 他の誰より

1年に20曲ほど新曲が出るのが秋元康系列アイドルの特徴だが、その中には「遊び」の役割を任させる曲がある。松村沙友理のライフワークである「食」を歌ったこの曲はおふざけ要素満載ではあるが、アイドルがどこまででもいち人間であることを当たり前のように思い起こしてくれる。後に白米を数トンもらう松村沙友理の転機。


20.サヨナラの意味

後ろ手でピースしながら
歩き出せるだろう
君らしく…

橋本奈々未という存在抜きに語れない曲という前提はあれ、その後のほとんどのメンバーの卒業ライブの際に歌われ、喪失と旅立ちの再演が行われており現在進行形でその偉大さが更新され続けている。泣いてるかもしれないし、笑ってるかもしれないけれど行き先は決まっていて、残るもの達へ祈りも済ましている、去る者の描写としての「後ろ手でピース」の力強さ。


21.孤独な青空

同じ時代を生きてる
空気に流されてるのか
誰一人 気にしないのか
影を作って黙り込むのか

橋本奈々未への当て書きという役割は「ないものねだり」に任せるとして、大園桃子の卒業ライブにおいて歌唱された点を取り上げたい。桜井玲香が「おかしいですよね」とその仲の良さを表現した乃木坂に放り込まれた大園桃子はどこか居心地が悪そうであった。乃木坂になってしまったから乃木坂にいるのか、乃木坂にいる中で生まれた関係を守るためにいるのか。どこか靄がかかる様子を描きながら青空との対比に雪崩れ込む構図は美しい。


22.ないものねだり

なぜ 人は誰も
目の前にある この幸せだけで
今日を生きられないの?
もう充分でしょう
私 ないものねだりしたくない

上へ上へを目指すAKB的価値観と選抜/アンダーのシステムにはやはり共通した所がある。そのステージから降りるように放たれるこのフレーズは橋本奈々未の日記が元になっていることもあり、何故彼女の存在だけが他の卒業メンバーと違う扱いをなされているのかを読み取れる。


23.スカイダイビング

君にスカイダイブ
僕は飛んでみたんだ
真っ逆さま 落ちて行くよ
まるでスカイダイブ
風に吹かれるまま
どこへ行くのだろう
誰もわからない

カタカナ語ひと単語をタイトルとして用いるのは「シンクロニシティ」「サイレントマジョリティー」然り秋元康の得意とする所だろう。恋に落ちる/空から落ちるの対応、夏の解放感の表現など過不足無し。


24.逃げ水

ミラージュ 遠くから見た時
道の向こう側に水たまりがあったんだ
近づいたらふいに消えてしまった
目指して来たのに
どこへ行った? あの夢

夏の最中ではなく去った後の視点でマンネリ気味に思われた乃木坂の夏曲に彩りを与える。近づけば近づくほど離れていく僕と夏との関係はそのまま与田祐希と大園桃子の関係に置き換えることができるし、既にステージから去った大園桃子の影を探す与田祐希までが歌詞世界に含まれている。


25.誰よりもそばにいたい

愛なんてまだわからない
初めての感情だから
でも確かに満たされてる
こんな幸せな時間に
教えてもらったこと
誰よりそばにいたい

ここまでも「そばにいる」こと自体に重きを置くという方向性で書かれた曲はいくつもあり、この曲においてとうとう題名がつけられた。「良く分からない」と放つのは無責任ではなく非常に誠意のある行為で、それでも寄り添おうとする健気さは乃木坂的な何かを感じる。


26.シンクロニシティ

そばにいる そばにいる誰かのせい
言葉を交わしていなくても
心が勝手に共鳴するんだ
愛を分け合って

個人同士に差異があるからこそ生まれるハモり(色んな声質が集って同じ音律を辿る)について歌ってるのは乃木坂の代表曲になるべくしてなったなと。そして他人への想像力。隣人を思う「シンクロニシティ」から世界へ祈る「Sing Out」への展開もコロナを経て陳腐なものでは無くなった。


27.サイレントマジョリティー

君は君らしく生きて行く自由があるんだ
大人たちに支配されるな
初めから そうあきらめてしまったら
僕らは何のために生まれたのか?

制服を着たメンバーをひとつの個体として設定し、平手友梨奈だけを立たせるという残酷ながら完成形に思える様式美を確立させた一節。皆と同じがいいけど自分だけは少し特別でありたいという中高生を何人狂わせたのか分からない。


28.二人セゾン

昨日と違った景色よ
生きるとは変わること

欅坂という「終わってしまった」グループと絶対に終わりが来る青春を重ねることは容易である。その終わりの予感と青春の渦中にいる華やかさを共存させている。あの頃の欅坂が記憶に存在する限り、半ば予言のように響くこのフレーズの価値は失われない。冬が到来したグループの行く先が「櫻」だった、というのもできた話である。


29.危なっかしい計画

さあ 制服コインロッカーに預けて
駅のトイレで着替えてしまおう
夏じゃないか もっと 大人っぽく
いつもと違うもう一人の自分になろう

彼女たちを包んでいた、定義していた制服を脱ぐと明確に宣言している点で意義深い。しかし制服の群舞という旨味を知ってしまった演出側によって「危なっかしい計画」の方向性はどこかへ行ってしまった。


30.沈黙した恋人よ

また夏がやって来る前に
僕らが変わったこと ふと気づかされる
この沈黙

中古のバイク、海沿い、国道など「見える景色」を描きながら恋人同士互いに「見えていない景色」を描く構成の妙と対話を求めようとするラストの納得感。


31.ひらがなで恋したい

ふりがなをふらなきゃ わかってもらえない
心のこの感じ どう伝えればいい?

私のこの”感じ”と"漢字"がダブルミーニングになってて巧いな…と。


32.W-KEYAKIZAKAの詩

平坦だと信じていた目の前の道
ほんの少し傾斜してる それは希望かもしれない

「坂道」をお題にして書こうということなのだろうが、「傾斜」というキーワード端的に用いることでその道が壁にも、そして登るべき先にも変わる。導入部のフレーズとしてかなり良い。


33.沈黙が愛なら

どんなつもりだったかわからないけど
きっと意味なんてないんだろうと思う
無口が怖かったのか

同じ「沈黙」でもこちらの曲は「対話」ではなく存在していることに重きを置いたこの曲は乃木坂の諸曲の世界観に通じるものがある。


34.ありがちな恋愛

ありがちな
恋愛のその結末はどれも同じで
そう知らぬ間に二人 別の道を行く
愛よりも大切な夢を見つけたのなら
現実はいつだって退屈なものだ

恋愛の曲ではなく、去る側と送る側の曲だと捉えても齟齬は生まれないだろう。「サヨナラの意味」で描いたと別れと二者の関係よりもっと複雑な内心を描いている。「もしも」と「現実」及び「夢」と「現実」という対立項の間で行われている心及びキャリアデザインの揺れを綱引きというワードに当て嵌めたのは天晴れである。


35.Sing Out!

ここにいない誰かのために
今 何ができるのだろう
みんなが思えたらいい
自分のしあわせを
少しずつ分け合えば
笑顔は広がる

「シンクロニシティ」における隣人への想像力から世界への祈りへと指向を変えたわけだが、リリース当初は少し陳腐なものに思えた。しかしコロナ禍、そして46時間テレビの名演を経て切実で理解し得る祈りに変わり一種のアンセムになった。時間がフレーズを醸成した一例である。


36.僕のこと、知ってる?

僕のこと、知ってる?(僕のこと、知ってる?)
ねえ誰か教えて(ねえ誰か教えて)
何者なんだろう?考えたって
自分のことが思い出せない

以前スクールオブロック内で当時パーソナリティーだった芦沢氏が「乃木坂の曲は乃木坂という人間の一人称で歌われている点がいい」と評していた。同意である。「僕=乃木坂」目線で「乃木坂性」を探すという構成はドキュメンタリー映画を補強するよう。


37.サヨナラstay with me

サヨナラ Stay with me
もう少し Don't leave me
見つめて Hard to say
離したら消えてしまうもの
Stay with me

意味のない英語の羅列もメロディーにハマれば歌詞として成り立つという典型。何も書かないという大正解。


38.誰がその鐘を鳴らすのか?

だけど問題は
誰がその鐘を鳴らすのか?

平手友梨奈、すなわち鐘を鳴らすものを失った欅坂46が叫ぶ敗北宣言。名前が変わり、センターを設けないという戦略に出た櫻坂を考えるとこの捉え方も強ち間違ったものではないだろう。


39.さ〜ゆ〜Ready?

笑顔が一番 私らしいかな
その代わりずっと 手を振って…
思い出が込み上げてくる
泣きそうになるけど 涙は見せない
笑顔でバイバイ ずっと楽しかった
やり残したことなんてない
さゆりんご 完全燃焼
いつの日かどこかで さ〜ゆ〜Ready?

当て書きも当て書きだが、おふざけの中にその人の本質が見える点で非常に優れている。星野源よろしく「笑顔の裏側の景色」を描いた上で「笑顔」を腐すことなく昇華している。


40.きっかけ

決心のきっかけは
理屈ではなくて
いつだってこの胸の衝動から始まる
流されてしまうこと
抵抗しながら
生きるとは選択肢
たった一つを
選ぶこと

あまりにも重要な曲として取り上げられすぎているが、その評価も妥当だろう。「誰も彼も皆」という三人称から二人称を経由することなく一人称へ移行する性急さが「理屈ではなくて」という一節を補強しているのかな、と。これからも歌い継がれることが容易に想像できる。

41.全部 夢のまま

いつまでも 夢のまま
恋が続くのならば幸せだね

キラキラしたステージの上を「夢」と断言してしまうのは暴力的だがそれ以外の言葉が見当たらない。

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写真集のタイトルにも秋元康のフレージングの良いところが見られるものが多くある。

42.「やさしい棘」

ヤマアラシのジレンマを避けるような慈しみや想像力を携え、常に一歩引いた俯瞰のスタンスを字面のスマートさとともに表した珠玉の5文字。


43.「風を着替えて」

どの街にも馴染みながら、それでいて街の付属品にならない主人公感を世界中を流れる「風」と例え、「着替え」はカジュアルさを演出する。はっぴいえんどの曲にありそうな70'sのフォーキーな雰囲気も秋元康が得意とするところだろうか。


44.「転調」

ステップアップとして、雰囲気の変化として、ピアノを武器とする彼女のフレーズとして、非常にシンプルながら幾重の捉え方が出来るような名タイトル。「インターミッション」もミュージカル用語とアメリカでの休暇を掛け合わせていて素敵。


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写真集の帯コメントも10本に1個くらいは直視可能なコメントがある。

45.「1時間遅れのI Love You.」

グアム島にNOGIZAKAという地名の坂道はない。
彼女たちが集まり、喋り、笑い、楽しそうにしている場所が"NOGIZAKA"になる。

乃木坂が何かを行うことに意味があるのではなく、乃木坂で存在することに意味があると説く。

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46.I see…

I see どうでもいい WOW WOW WOW
突然 思ったんだ Yeah Yeah Yeah
I see そんなこと WOW WOW WOW
まるで関係ないね

何か小難しく乃木坂を捉えようとするといつしかこの曲が浮かぶようになった。曲が良いならそれに身体を委ねれば十分じゃないかと。8000字書いたやつが言うことではないが。


このリストに載るような曲がこの後も生まれることを祈って結びとする。



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