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【映画レビュー】羊たちの沈黙

こんにちは。マヒロです。
先日、「羊たちの沈黙」を見ました。
32年も前の1991年の映画です。
定期的に見たくなる映画で今まで何度も見てきた映画ですが、やっぱり面白いっ!


1991年 アメリカ 118分
監督 ジョナサン・デミ
原作 トマス・ハリス
出演 ジョディ・フォスター
   アンソニー・ホプキンス

第64回アカデミー賞「作品賞」「監督賞」「出演女優賞」「出演男優賞」「脚色賞」の5部門受賞作品
ジャンルがホラーであるということや年の早い2月14日に公開されたことなどで「アカデミー賞に不利」と言われていましたが、史上3作目の主要5部門受賞を達成しています。30年以上経った2022年時点でも4作目は現れていません。


あらすじ


FBI科学行動課では事件解決の為、凶悪殺人犯の心理分析をしていたが、元精神科医で「人肉事件」の犯人であるレクターは拒んでいた。訓練生であるクラリスは科学行動課の上司、クロフォードからレクターの元へ行き、最近起きている連続殺人についての助言をしてもらうよう依頼する。

映画はバージニア州クワンティコから始まります。

バージニア州はアメリカ東部
クワンティコはワシントンD.C.の下にあります
ワシントンD.C.にはFBI本部もあります

主人公のクラリスはFBIアカデミーでトレーニングをしていると、行動科学課の上司であるクロフォードに呼ばれます。

FBIアカデミーの場所
FBI本部のあるワシントンD.C.まで電車で1時間程
ランガ貯水池の付近にはFBIの施設が沢山あります


FBIになるまでの流れ


主人公のクラリスはFBIの訓練生です。
FBIになる為の条件や、捜査官になるまでの流れはどうのようになっているのでしょうか?

FBIになる為には、クリアしなければならない要件があります。

1、アメリカ市民であること
2、23歳〜36歳までであること
3、四年制大学を卒業していること
4、運転免許証を持っていること
5、正社員として2年以上仕事の経験があること
 もしくは、修士号を取り、正社員として1年以上仕事の経験があること

上記をクリアしている場合、応募出来ます。

1、応募
FBIのサイトから応募します。
2、フェーズ1のテスト
応募書類が通過すると、今度はフェーズ1のテストへと進みます。
3時間のコンピューターによる試験となり、「論理的推論」「抽象的推論」「適性検査」「嗜好と興味 」「状況判断」の5つの評価項目で判断されます。
3、面接
対面での面接が行われます。
これまでの経験を説明したり、仕事に関する質問をすることも可能です。
4、フェーズ2のテスト
こちらのテストは「筆記試験」と「面接」2部構成となっており、面接の前に筆記試験に合格する必要があります。
5、体力テストと健康診断
5つの種目の体力テストを行います。
①腹筋 1分間の最大回数
②300m短距離走のタイム
③腕立て伏せ 連続して出来る回数。
④2.4kmのランニング
⑤懸垂 連続して出来る回数
健康診断については、視力が0.5以上、聴力が25デシベル以上であることが求められます。
6、仮の内定
ここまでクリアすると仮内定が届きます。
最終的に採用されるかどうかは、身元調査の結果とアカデミーの修了によって決まります。
7、身元調査
仮内定を5日以内に承諾すると、身元調査と嘘発見器によるテストが行われます。
身元調査は、逮捕歴、過去の嘘発見機によるテスト、近辺の人への聞き取り調査などが行われます。
アメリ居住者の場合は約半年かかります。
8、FBIアカデミー
21週間のトレーニングプログラムに参加し、4つの分野で800時間のトレーニングを受けます。
①学科
②事件の演習
③銃器のトレーニング
④捜査スキル
9、卒業
卒業式も行われます。
卒業すると、新人捜査官は配属先を希望することが出来ますが、必要とされている配属先に配属されることがほとんどです。

FBI捜査官になる為には様々なことをクリアしなければいけないのですね。
クラリスは「訓練生」の為、上記の8、「FBIアカデミーでトレーニングをしている」段階となります。
後もう少しで卒業という段階ですね。

クラリスの学力


クラリスがトレーニングをしている所へ上官である行動科学科のクロフォードからお呼びが掛かります。

クラリス役を演じたジョディ・フォスター

クラリスはクロフォードの席に行きますが、クロフォードは不在です。
デスクの向かいの壁には最近起きているバッファロー・ビルの5度目の殺人の記事と皮を剥がされた女性の死体の写真が貼られています。
それらを傍観しているクラリスの元へクロフォードがやって来ます。


クロフォード役を演じたスコット・グレン

クロフォードはクラリスの経歴を確認します。
クラリスはバージニア大学で自身のゼミにおり,人権と捜査についての問題を鋭くつき、心理学と犯罪学を専攻し、成績も優秀である。
そして現在、診療所で実習も受け、卒業後はクロフォードの元で働きたいとFBIにやってきて訓練をしている。

クロフォードの話を聞くだけでもクラリスが優秀であることが分かりますが、クラリスが卒業した「バージニア大学」とはどのような大学なのでしょうか?

バージニア大学はアメリカの中でも屈指の名門校です。
バージニア州の中央に位置するシャーロッツビルという都市にあります。

ワシントンD.C.の左下
ワシントンD.C.までは車で2時間強
クワンティコまでは2時間弱の距離に位置します

バージニア大学は「パブリック・アイビー」に該当します。
「パブリック・アイビー」は全米で最も影響力を持つといわれている大学関係ジャーナリストであるハワード・グリーンとマシュー・グリーンにより編集された書籍「パブリック・アイビー アメリカの最重要公立大学」において30校程が選出されています。
キャンパスの中には3つの学生寮もあります。
建物はユネスコ世界遺産にも登録されている、とても美しい大学です。

美しい大学ですね


「2023年世界大学ランキング」によりますと、バージニア大学は127位となっています。
日本の大学で1番順位の高い大学が東京大学の35位。
続いてが京都大学(偏差値60.0~72.5)で61位。
3番目が東北大学(偏差値52.5~67.5)の201~250位となっています。
それらから見ても「京都大学の下、東北大学の上」ということになります。
日本の大学の偏差値ランキングを調べてみると、京都大学と東北大学の間に該当する大学は「筑波大学」「名古屋大学」などがあります。
クラリスの学力が非常に高いことが分かりますね。

そんなクラリスにクロフォードはあることをお願いをするのです。
「今、未解決事件の解決に向けて、監禁中の連続殺人犯の心理分析を始めた。大抵の犯人は協力的だが、ある1人が拒んでいる。その男の所へ本日行ってほしい。君に話すとは思えないが是非情報を得たいので、どんな様子だったか、スケッチには何を書いていたかなどを水曜まで報告してほしい」
クラリスはクロフォードが急いでいるのは、最近起きている連続殺人事件のバッファロー・ビルと何か関連があるのではと思い、クロフォードに確認します。
クロフォードは何か関連があれば良いのだが、男は「人肉事件」のハンニバル・レクターでドクター・チルトンからも報告があると思うが特別な異常者なので個人的な話などしないよう、そしてまともな人間だと思わないようにと注意を促します。

バッファロー・ビルの事件


女性を誘拐し、皮を剥いで遺体を捨てるという連続殺人事件が起きており、FBIが捜査をしているのですが手がかりが掴めていません。
被害者も既に5人出てしまっています。
犯人の手がかりを掴む為にFBIはレクターに助言を求めたい状態です。

レクターが「何故犯人はバッファロー・ビルと呼ばれているのか」とクラリスに聞くシーンがあります。
クラリスは「カンザスシティの警官が女性の皮を剥ぐからそんな名前を付けた」と答えています。
バッファロー・ビルの名前の元になったのはウィリアム・フレデリック・デーディという実在した人物です。ウィリアム・フレデリック・コーディは西部開拓時代にバッファロー・ハンターとして鉄道建設労働者に食料を調達していました。

右がバッファロー・ビルことウィリアム・フレデリック・コーディ


18ヶ月で4820頭ものバッファローを狩ったことから「バッファロー・ビル」という名が付きました。
バッファロー・ハンターとかアメリカバイソンなどの野生動物を銃で狩る職業ハンターのことです。
ゴールドラッシュや鉄道建設をしていた西部では人口が増え、野生動物を食料として対応していたのです。
金鉱会社や鉄道会社の中にはバッファロー・ハンターとして契約して、食糧確保をしている所もあったそうです。

バッファローの皮を剥いでいたから、今作の連続殺人事件の犯人も「バッファロー・ビル」と呼ばれているんですね。

ハンニバル・レクターとの出会い


レクターは「人肉事件」の犯人である元精神科医です。
クラリスはレクターが収監されているボルティモアの精神病院へ向かい、院長のチルトンと出会います。

ボルティモアはFBIアカデミーから1時間半程

チルトンはクラリスに「レクターに会う時のルール」を伝えます。
ルール1 ガラスには近付かないこと
ルール2 鉛筆やペン、ホッチキスやクリップを渡さないこと
ルール3 書類は食事の差し入れ口に入れて渡すこと
ルール4 レクターから何も受け取らないこと
チルトンがこれだけ警戒するのには訳があります。
1981年7月8日に胸の痛みを訴えたレクターは心電図を取る為に医務室へ運ばれるのですが、看護師が襲われます。医師がなんとか顎を整形し、片方の目だけ救います。
レクターが女性の下を食べた時、彼の脈は85以下でした。

ルールを把握したクラリスはいよいよレクターに会うのです。

ハンニバル・レクター役を演じたアンソニー・ホプキンス

レクターがクラリスと初めて出会うシーンでこのようなことを言うシーンがあります。
「昔、国勢調査員が私にテストをしようとした。そいつの肝臓をソラマメと極上のキャンティと一緒に食ってやった」
英語だとこのようになります。
A census taker once tried to test me. I ate his liver with some fava beans and a nice Chiant
この台詞は2005年6月21日にCBSで放送されたテレビ番組で発表された「アメリカ映画の名台詞100選」の21位に1500人以上の映画関係者によって選ばれています。
「キャンティ」とはイタリアワインの代名詞の赤ワインです。

感想


初めてこの映画を見たのは15、6歳くらいの時だったと思います。
当時はまだ「プロファイリング」という言葉が主流ではなく、「何故犯人の心理分析を事件を解決する為にするの? そんなので事件解決に繋がるの?」と思いながら見ていました。
プロファイリングの重要性がいまいち理解出来ていなかった私が見てもセンセーショナルな映画で大変記憶に残りました。
前回、記載させていただきましたが、ある出来事がきっかけで「プロファイリングの重要性」を感じることになりました。

洋画を鑑賞する際には字幕で見ることが多いのですが、俳優陣の演技が素晴らしく、吹替え版で演技に集中しながら見るのも面白い映画だと思います。

続編の映画もあり、2022年には「クラリス」というドラマも出来上がったんですね。
う~ん、気になる……
Huluで見られるみたいなので、今度見てみようかしら……


「クラリス」といえば「ジョディ・フォスター」と思ってしまうのですが、今作で主役を演じたジョディ・フォスターは続編には出演していません。
監督のジョナサン・デミはクラリス役にミシェル・ファイファーかメグ・ライアンを考えていたというので、クラリスに美女を描いていたことが伺えます。どちらもクラリス役を辞退しています。

ミシェル・ファイファー
キャットウーマン役も演じましたよね
メグ・ライアン
ラブコメの女王

1990年代のメグ・ライアンのラブコメが大好きです。
「羊たちの沈黙」が公開されたのは1991年ですが、元々は1990年に公開する予定でした。
「ダンス・ウィズ・ウルブズ」とアカデミー賞を分け合うのを嫌がり、羊たちの沈黙が1991年公開となりました。公開を1年ずらしたんですね。
当時、メグ・ライアンはまだラブコメの女王として君臨する前だったと思います。
1989年公開の「恋人たちの予感」の大ヒットにより、ラブコメ作品に出始めた記憶があるので、羊たちの沈黙はメグ・ライアンが求めていた道と違っていたのかも知れないですね。

ジョディ・フォスターはこの役に興味を持っており、監督のジョナサン・デミに自身を売り込み、クラリス役をGETしています。

ちなみにレクター役の第一候補はショーン・コネリーだったんですって!

ショーン・コネリー

ショーン・コネリーが辞退した為、第二候補であったアンソニー・ホプキンスにオファーしたそうです。

実際にFBIの行動科学課で働いていたロバート・K・レスラーがこの映画の為に色々と情報を提供したというのも、リアルで素晴らしい作品が出来上がった功績だとも思います。

ロバート・K・レスラーは行動科学課立ち上げ時より配属しており、行動科学課にも多大なる功績を残した方です。
著書も沢山出しており、面白いですよ!

久方振りに見た「羊たちの沈黙」
やっぱり名作は何度見ても面白いんだなと実感しました。

私のように何度も見ていらっしゃる方、大勢いるのではないかなと思います。
小説版もとてもおすすめです。
映画見て「面白かった」と思った方、是非小説も読んでみて下さい!


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