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ボロ雑巾な伯爵夫人、やっと『家族』を手に入れました。

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異世界ファンタジー作品: <ボロ雑巾な伯爵夫人、やっと『家族』を手に入れました。〜世間知らずの夢の成就は、屋敷ではなく平民街で〜> 連載中(約10万字(文庫本一冊相当)で完結予…
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#異世界

ボロ雑巾な伯爵夫人、やっと『家族』を手に入れました。〜世間知らずの夢の成就は、屋敷ではなく平民街で〜 第一話

ボロ雑巾な伯爵夫人、やっと『家族』を手に入れました。〜世間知らずの夢の成就は、屋敷ではなく平民街で〜 第一話

【あらすじ】
 第二夫人に最愛の旦那様も息子も奪われ、挙句の果てに家からも追い出された伯爵夫人・フィーリア。
 なけなしの餞別だけを持って大雨の中を歩き続けていた彼女は、目的地も希望も生きる理由さえ見失いかけた時に、二人の貧民の男の子たちと出会う。

 言葉汚く直情的だけど、何だかんだで面倒見がいい、ディーダ。
 喋り方こそ柔らかいが、その実どこか冷めた毒舌家、ノイン。
 
 環境のせいでスレてい

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ボロ雑巾な伯爵夫人、やっと『家族』を手に入れました。〜世間知らずの夢の成就は、屋敷ではなく平民街で〜 第九話

ボロ雑巾な伯爵夫人、やっと『家族』を手に入れました。〜世間知らずの夢の成就は、屋敷ではなく平民街で〜 第九話

 案内された先にあったのは、赤い屋根の木造りの家だった。
 屋根の下に掲げられている『ネェライ』と書かれた看板は、随分と年季が入っている。
 両手が食材で塞がっているディーダが、半ば体当たりで扉を押し開いた。
 カランカランとドアベルが鳴り、店内の様子が少し見える。

 室内は、日の光だけに頼っているため外と比べて少し暗い。ぐるりと見回せるほどの広さしかない店内には、お客さんどころか見える範囲に店

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ボロ雑巾な伯爵夫人、やっと『家族』を手に入れました。〜世間知らずの夢の成就は、屋敷ではなく平民街で〜 第十話

ボロ雑巾な伯爵夫人、やっと『家族』を手に入れました。〜世間知らずの夢の成就は、屋敷ではなく平民街で〜 第十話

 手の届かない所にある布は、彼に声をかけ取ってもらった。すると彼に「もう選んだのか?」と驚かれる。

「自分で作ろうって場合、普通はもうちょっと悩むもんなんだがなぁ」
「そうなのですか?」
「まぁ誰だって生地を無駄にはしたくないだろうし。特に色は、ああでもないこうでもないって大体いくつも手に取って悩む」

 きっとそれが、彼の経験則という事なのだろう。
 そうしたい気持ちは少し分かる。もし自分のた

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ボロ雑巾な伯爵夫人、やっと『家族』を手に入れました。〜世間知らずの夢の成就は、屋敷ではなく平民街で〜 第十一話

ボロ雑巾な伯爵夫人、やっと『家族』を手に入れました。〜世間知らずの夢の成就は、屋敷ではなく平民街で〜 第十一話

 元来俺は、他人に従うのが嫌いだ。
 誰も俺たちの人生に責任を負ったりしない。そんな相手の言葉を信じるだなんて、馬鹿がすることである。

 だから別に、あの女の言う事なんて聞かなくていい筈だ。それなのに。

「ったく、変な女。何で一々指図されなきゃならねぇんだよ」

 何故か今俺は、家の前の井戸から水を組み上げては、ノインと交互に体にザバァッとやっている。

 俺だって、別に好きで泥だらけになった

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ボロ雑巾な伯爵夫人、やっと『家族』を手に入れました。〜世間知らずの夢の成就は、屋敷ではなく平民街で〜 第十三話

ボロ雑巾な伯爵夫人、やっと『家族』を手に入れました。〜世間知らずの夢の成就は、屋敷ではなく平民街で〜 第十三話

 陽光が差し込む布屋『ネィライ』の店内で、店内の美化活動に勤しんでいた。

 壁一面に並ぶこげ茶色の棚から一段分、商品を傷めないように注意しながら布束を引き抜く。空いた棚には雑巾を掛け、うっすらと積もっていた埃を拭きとって、布束の方にははたきを掛けて、再び棚へと戻す。その作業の繰り返しだ。
 しかしそれが意外と大変。一束の布は意外と重く、出し入れするだけで重労働だ。
 が、だからこそやりがいもある

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