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11日目 決心

朝はいつもように長男と長女を迎えに行く。朝早く起きて実家へ行くのは習慣になってきた。短い時間だけど、子どもたちのために自分が何かできることが嬉しい。

その後は今日も妻と末っ子を保育園へ送りにいった。

今日は何をしようか。

1人で家にいるのは頭が締め付けられてしまうので毎日外に出ている。

昨日借りたバイク。
このバイクのおかげで、自分は自由なんだと感じることができる。

数日前、娘がある街に買い物に行きたいと言った。僕は、もう少し元気になったらとそれを断った。

なぜかと言うと、その街は一年前に彼女と歩いた思い出の街だからだ。思い出すと動悸がしてきてしまうから、娘には体調が良くなったらと伝えていた。

だけど、いつまでもそうは言っていられない。思い出を乗り越えたい。そう思って、僕はバイクでその街へ行くことにした。

家からは40分ほどの小さな観光地でもあるこの街。

その街並みが見えてくると、やっぱり楽しかった頃を思い出す。少し離れた駐車場に車を停めて歩いたこと。街並みの写真を撮ったこと。

2人で一緒に食べたデザート屋さん。目の前にバイクを止め、1人で買って食べてみた。お芋のデザートで、僕は芋が好きではないから彼女が喜びながら食べていたのを数口もらったんだった。

やっぱり一人前は食べきれなかったが、あの日もこんなふうに味わったんだと切なくなった。

少し離れたところにあるコーヒー屋さんは、犬のイラストがマークになっていて、彼女は可愛いと喜んでいた。少し酸味がかったコーヒーが僕の思い出にもなっている。

本日のコーヒーを注文した。待っている間、店内を見ていると、犬のイラストのドリップコーヒーが売っていた。

このイラストを彼女は覚えているかな。



そのコーヒーを二つ追加で購入した。


彼女に届けよう。


思い出の街を歩いて、お土産を買って、僕の中で彼女に会いに行く決心がついた。


彼女は会いたくないかもしれない。

でも、僕は彼女を大切に思っていることを伝えたい。


恋人になりたいなんて願わない。

ただ、あの頃のように笑い合える距離でいたい。


その思いを伝えないと、僕は自分の病気を乗り越えられる気がしない。


明日、会おう。

会いにいってみよう。

人間の行動は考えを変える。
もう、会わないかもしれないと思っていたのに、今は会う決心が決まった。

人生に無駄な時間などないのかもしれない。この選択が良いのか悪いのかはわからないけど、自分が決めたことだ。僕は前に進んでいる気持ちになれた。



家に帰り、息子の合唱祭を観に行った。
中学生の長男は、学校ではそっけない。これも彼の成長なんだろう。学校で息子を見つけるとなんだか嬉しい気持ちになる。

やっぱり、子どもとのこの時間もかけがえのない日常なんだ。

中学生の歌声はとても綺麗だった。
きっと友情をテーマにした歌なんだろうが、歌詞がところどころ自分の今に刺さる。


中学生に勇気をもらった。

結果は、息子のクラスは金賞を受賞。家に帰ってきた長男は、学校ではそっけないのに、金賞だったよ!と嬉しそうに報告してくれた。


息子と過ごしていると、1日1日の大切さにきづかされる。

次男とバイクに乗ったこと。
寝る前に妻と末っ子と犬の散歩に行ったこと。

そのどれもが大切な日常。

失ってからでは遅い大切なもの。



また、明日。

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