塚本寛也 ~電波系エンジニア~

米外資系車載部品企業(Tier1)に勤めるエンジニア。国内半導体企業にてアナログ回路設…

塚本寛也 ~電波系エンジニア~

米外資系車載部品企業(Tier1)に勤めるエンジニア。国内半導体企業にてアナログ回路設計に3年従事した後、現在の会社にて電気エンジニアとして働く。DRなどの技術的な分野について、本社と国内OEMをつなぐ橋渡し的な仕事をしている。#EMC #電源回路 #半導体 #高周波(RF)

最近の記事

平行2線式線路の特性インピーダンス

本稿では、平行2線式線路の特性インピーダンスの式とその導出方法を紹介する。 特性インピーダンスの式平行2線式線路の特性インピーダンス$${Z_0}$$は次式である。 $$ Z_0 =\frac{1}{\pi}\sqrt{\frac{\mu_0}{\epsilon_0}}\ln{\frac{d-r}{r}} \quad [\Omega] $$ ただし、$${r}$$はリード線の半径、$${d}$$は線間距離である。 また、$${\sqrt{\mu_0/\epsilon_0

    • 平行2線式線路のインダクタンス

      本稿では、平行2線式線路のインダクタンスの式と導出方法を紹介する。 インダクタンスの式下図のように平行する線路が無限長の長さを持つとき、線の半径を$${a \ [\text m]}$$および線間距離を$${d \ [\text m]}$$とすると、単位長さ当たりの平行2線式線路がもつインダクタンス$${L \ \text{[H/m]}}$$は、次式となる。 $$ L=\frac{\mu_0}{\pi}\ln\frac{d-r}{r} \quad \text{[H/m]}

      • 微小ダイポールアンテナの放射抵抗の式の導出と放射効率について

        放射抵抗(radiation resistance)とは、アンテナのインピーダンスの内、アンテナから実際に電磁波として放出される電力に対応する抵抗値のこと。 本稿では、その放射抵抗の概要と、微小ダイポールアンテナの放射抵抗の導出方法および放射効率に関して記述する。 放射抵抗アンテナは、入力された電力を電磁波に変換して空間に放射する。この放射される電力を放射電力という。 アンテナで電力が消費されるということは、アンテナをインピーダンスとしてみなせるということである。アンテナ

        • アンテナファクタとゲインの関係式とその導出

          アンテナファクタ$${A_f}$$とゲイン$${G_a}$$は以下の関係式となる。 本稿にその導出方法をまとめる。 $$ A_f=\frac{2\pi}{\lambda}\sqrt{\frac{120}{G_aR_I}}=\frac{2\pi}{\lambda}\sqrt{\frac{2.4}{G_a}} $$ ※$${R_I}$$はシステムインピーダンス。(50Ω) アンテナファクタアンテナファクタは、以下の式の通り、アンテナが受ける受信電界強度$${E_r \ \t

        平行2線式線路の特性インピーダンス

          dBm→dBuV/m変換式と導出

          一般に、スペアナは電力の単位として[dBm]が初期設定されています。しかし、EMC試験の輻射エミッションでは電界強度のデシベル値[dBuV/m]に換算する必要がある場合があります。 本記事では、アンテナファクタ(アンテナ係数)を用いて[dBm]→[dBuV/m]に変換する式とその導出方法について解説します。 dBm→dBuV/m変換式$${\text{[dBm]} \rightarrow \text{[dBuV/m]}}$$変換は、受信電界強度$${E_r \ \text

          dBm→dBuV/m変換式と導出

          平行リード線間のキャパシタンス(容量値)

          半径が$${a \text{ [mm]}}$$のリード線が線間距離$${d \text{ [mm]}}$$離れて平行しているとき、単位長さあたりの容量値$${C\ \text{[F/m]}}$$は以下の式となります。 $$ C=\frac{\pi \epsilon_{0}}{\ln{\frac{d-a}{a}}} \quad \text{[F/m]} $$ 無限長導線間の容量値の算出方法は多くの大学の電磁気学の教科書に記述されているかと思いますが、EMCのカップリングノイ

          平行リード線間のキャパシタンス(容量値)

          AM波の実効電圧値

          AM波の実効電圧値$${E_{m}}$$はいくらとなるでしょうか? キャリアの実効電圧値と角周波数を$${{E_{c}}, \omega_{c}}$$, 変調度を$${m}$$とすると、$${E_{m}}$$は次の式で与えられます。 $$ E_{m}=E_{c} \sqrt{1+\frac{m^2}{4}} $$ 本稿では、なぜ上記式が導出されるのかを解説します。 振幅変調(AM)以前の記事で、AM波が周波数でなく振幅を変調しているのに、スペクトラムに側波帯の周波

          微小ダイポールアンテナ(微小電流源)の電界/磁界導出 その④ ~波動方程式の解の導出~

          PDFその①~④をまとめたPDFは下記URLからダウンロードできます。 目的その①, ②で微小電流源による電磁界を導出した。 その導出過程において、以下のポテンシャルに関する波動方程式について $$ \begin{dcases} \nabla^2\bm{A}+{k_0}^2\bm{A}=-\mu\bm{J} \\ \quad \\ \nabla^2\phi+{k_0}^2\phi=-\frac{\rho}{\epsilon} \end{dcases} $$ ベクトルポ

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          リード線のインダクタンス (直線導体/導線)

          目的周波数がある程度高い場合や過渡応答を扱うときに、リード線のインダクタンス成分が影響する場合があります。 リード線のインダクタンスは実際にどれくらいとなるのでしょうか? 参考1のサイト(ページ下部)では、次の式で紹介されています。 ※ただし、半径$${a \ \text{[cm]}}$$, 長さ$${l \ \text{[cm]}}$$ (リード線のインダクタンスの式) $$ L=2l \left( \ln \left( \frac{2l}{a} \right)-1

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          微小ダイポールアンテナ(微小電流源)の電界/磁界導出 その③ ~ローレンツ条件とは?~

          PDFその①~④をまとめたPDFは下記URLからダウンロードできます。 本稿の目的下記の記事にて、ローレンツ条件を導入することで、簡易な形での波動方程式を導出でき、またそれを解くことで微小電流源による電磁界を導出できた。 $$ \nabla\cdot\bm{A}+\mu\epsilon\frac{\partial}{\partial t}\phi=0 \quad\text{(ローレンツ条件)} $$ 本稿では、ローレンツ条件とは何なのか?物理的意味は?について記述する

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          AM波の搬送波と側波帯

          EMCについて知識を深めるべくiNARTE勉強中です。 AM(振幅変調)について問う問題があり、振幅変調波に側波帯(USB/LSB)が現れる理由について勉強しましたので、メモとして残そうと思います。 振幅変調(AM)AMは、キャリアの周波数を変えずに振幅を変えることにより情報を伝達する技術です。 振幅変調波は次の式で表されます。 振幅変調波には、キャリアの周波数以外に、信号波の周波数との和と差の周波数成分が含まれます。 ωc+ωs 成分を上側波(USB)、ωc-ωs 成分

          微小ダイポールアンテナ(微小電流源)の電界/磁界導出 その② ~波動方程式の解と電磁界導出~

          PDFその①~④をまとめたPDFは下記URLからダウンロードできます。 導出したい式(ゴール地点)座標系原点に長さ$${l \textrm{[m]}}$$, 電流値$${I \textrm{[A]}}$$, 電流の向きが$${z}$$方向、角周波数$${\omega}$$で交流振動する微小電流源があるとき、電界$${\bm{E}}$$および磁界$${\bm{H}}$$は次の式となる。 $$ \begin{align*} E_r&=\frac{IlZ_0k_0^2}{2

          微小ダイポールアンテナ(微小電流源)の電界/磁界導出 その② ~波動方程式の解と電磁界導出~

          微小ダイポールアンテナ(微小電流源)の電界/磁界導出 その① ~波動方程式の導出まで~

          PDFその①~④をまとめたPDFは下記URLからダウンロードできます。 導出したい式(ゴール地点)座標系原点に長さ$${l \textrm{[m]}}$$, 電流値$${I \textrm{[A]}}$$, 電流の向きが $${z}$$ 方向、角周波数$${\omega}$$で交流振動する微小電流源があるとき、電界$${\bm{E}}$$および磁界$${\bm{H}}$$は次の式となる。 $$ \begin{align*} E_r&=\frac{IlZ_0k_0^2}

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          電気回路系のおすすめ参考書

          はじめにこのページでは、回路エンジニアになるために、これまで自分が学習してきた以下の各科目について、おすすめの参考書を紹介しようと思います。 ・ 電気回路学 ・ 電磁気学 ・ 半導体デバイスと増幅回路 ・ CMOSアナログ回路 ・ スイッチング電源 ・ 高周波回路 電気回路学電気回路学はあらゆる回路の動作原理を理解するのに、必須な科目です。 回路関係の仕事をされている人は、電気回路学を学んだほうが良いと思います。 正直、仕事で使う範囲は限定的である場合が多いので、電気回

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          はじめに

          こんにちは。初めまして。電波系エンジニアの塚本です。 このページでは、自己紹介およびブログの背景と目的を書きます。 自己紹介米外資系企業に勤めるエンジニア。電気・情報系学部を卒業後、国内半導体企業にてアナログ回路設計に3年従事した後、現在は電気分野エンジニアとして働いています。製品の技術部分について顧客に説明したり、本社エンジニアに顧客要望を伝えるなどの橋渡し的な仕事をしています。 背景・目的ブログを書こうと思った背景は、これまで得た電気回路分野の知識と経験を共有すること