見出し画像

AM波の実効電圧値

AM波の実効電圧値$${E_{m}}$$はいくらとなるでしょうか?
キャリアの実効電圧値と角周波数を$${{E_{c}},  \omega_{c}}$$, 変調度を$${m}$$とすると、$${E_{m}}$$は次の式で与えられます。

$$
E_{m}=E_{c}  \sqrt{1+\frac{m^2}{4}}
$$

本稿では、なぜ上記式が導出されるのかを解説します。

振幅変調(AM)

以前の記事で、AM波が周波数でなく振幅を変調しているのに、スペクトラムに側波帯の周波数成分が含まれる理由について説明した。

実効値の式を導出するため、まずはAM波について復習する。

AM波$${v_{m}(t)}$$は以下の式で表される。
ただし、信号波の角周波数を$${\omega_{s}}$$とおく。
また、$${V_{c}}$$, $${V_{s}}$$はそれぞれ振幅値であり実効値ではない。

$$
v_{m}=V_{c}\cos{\omega_{c}t}+\frac{mV_{c}}{2}[\cos{(\omega_{c}+\omega_{s})t}+\cos{(\omega_{c}-\omega_{s})t}]
$$

この式から分かるように、AM波には3つの周波数成分が含まれる。この3つの周波数成分の電力値を導出することで、全体の電力値よりAM波の実効電圧値が算出できる。以下の章でその導出方法を説明する。

ちなみに余談であるが、EMCのイミュニティ試験では妨害波としてAM波が用いられる。IEC61000-4-2によると、その変調周波数は$${1\text{kHz}}$$, 変調度は$${80\%}$$である。
$${V_{c}=1 \text{V},  f_{c}=100\text{kHz},   m=0.8,  f_{s}=1 \text{kHz}}$$としたときの振幅波形は次の図の通りとなる。

80%振幅変調

この包絡線のピーク$${A}$$と谷$${B}$$を用いて、変調度$${m}$$は以下の式で与えられる。
上図の包絡線より$${A=1.8,  B=0.2}$$であることが読み取れることから、以下の式に代入して計算すると$${m=0.8}$$となることが分かる。

$$
m=\frac{A-B}{A+B}
$$

AM波の実効電圧値導出

さて、AM波の実効電圧値を導出するために、まずは電力値を考える。
下記式から分かるように、AM波には3つの周波数成分が含まれる。
搬送波$${(\omega_{c}}$$成分の電力を$${P_{C}}$$, 下側波$${\omega_{c}-\omega_{s}}$$成分の電力を$${P_{L}}$$, 上側波$${\omega_{c}+\omega_{s}}$$成分の電力を$${P_{U}}$$として、仮にインピーダンスを$${Z}$$とすると

$$
\begin{align*}
P_{C}&=\frac{V_{c}^2}{2Z} \\ \quad \\
P_{L}&=\frac{(mV_{c}/2)^2}{2Z}=\frac{m^2P_{C}}{8} \\ \quad  \\ P_{U}&=\frac{(mV_{c}/2)^2}{2Z}=\frac{m^2P_{C}}{8}
\end{align*}
$$

したがって、全体の電力$${P_{M}}$$は以下の式となる。

$$
P_{M}=P_{C}+P_{L}+P_{U}=(1+\frac{m^2}{4})P_{C}
$$

AM波の実効電圧値$${E_{m}}$$, 搬送波の実効電圧値$${E_{c}}$$と、$${P_{M},  P_{C}}$$との関係は以下の式となる。

$$
{E_m}^2 : {E_c}^2=P_{M} : P_{C}= (1+\frac{m^2}{4})P_{C} : P_{C} 
$$

最終的に、以下の式が導出される。

$$
E_{m}=E_{c}  \sqrt{1+\frac{m^2}{4}}
$$


参考URL


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?