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ほどけかかった紐は、適当に固結びしたもうほどける事はないだろう。

『俺は何で生きてんだろう。』

ベットに横になったまま、一言だけ口にし黙った。

何か声を掛けて欲しいのではなく、自分自身に感じた憤りや
とにかく負の感情が凝縮された、静かで小さな声は
自身へと向けた言葉だった。


前回の続きではないのだが
どうしても書き残しておきたくて今回書いている。
簡単に言うと、プロの仕事とはどういう事なのか知って欲しくて書いた。
(そもそも何をもってプロフェッショナルと言うのかはわからないが)

生きる事や、働く意味。そして自分自身と向き合う事に悩み苦しみ
その結果、人に寄り添う道を選んだ男。
私からみればプロフェショナルで、尊敬出来る男の話だ。




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私自身の話しではなく、約30年の付き合いになる
とある先輩について書かせてもらいたい。

10代後半、先輩は仕事中に「くも膜下出血」で倒れた。

先輩とは中高が一緒だったが
ヤンキーではあるが、後輩をいじめる事もなく
いわゆるカースト制度的なモノも無視し、いじられている同級生とも
ヤンキーな同級生とも何の隔たりもなく等しく仲が良かった。
そのため、みんなから慕われていた印象だ。


退院後暫くして、1、2年振りの再会。
薬の副作用の影響で別人のようだったが
生きていてくれた事が素直に嬉しかった。


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ヤンキーは自分に厳しいってのは本当らしく
リハビリも、病院側からストップがかかるほどやりこみ
注意されてもこっそり続けていたようだ。

しかし後遺症は大きく
左目は視力を失い、言葉もろれつがまわらない。
体力面にしても当面働く事は不可能。
しかしそれでも、こっそり交通整理のバイトを始めるが
やはり数時間も持つわけがなく即終了。

他にも仕事を探すが
リハビリ以外は安静にしておくべき人間が働ける場所はなく
誰かに頼る事ができない性格の先輩は
自身の身体の事や、仕事ができず臨んだ生活費を稼げない事
いろんな歯がゆさと毎日戦っていた。

性格を何となく把握していたからこそ
どんな言葉を掛けても、先輩を励ませる要因がないことを理解していた。
誰がみてもわかる程、焦りだけがそこにあった。


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暫く経ってそんな先輩が必死に辿り着いたのが、いわゆる整体だった。
*厳密には違うが、わかりやすくするためにここではそう書かせて頂く。

修行のため携帯の電波が入らない山奥に1年間住み込み、資格を取得。
ようやく自分で稼ぐ手段を手に入れた。

しかし良い事と等しく、悪い事も同時におきた。

とある出来事がきっかけで、精神バランスが崩れ
折角取得した仕事も、始める前にやる気を失くしていた。
医者に止められていた飲酒、喫煙も再開。

神経が過敏になっている為なのか
睡眠の際は、物音を立ててはいけない程の状況だった。
心配だったのでたまに様子をみに泊りにいくが
発作が起き、病院に運ばれる事もあった。

全くと言っていいほど感情的にならない男だが
「好きでこんなになったわけでもなく、それでも乗り越えようとした。なのに何でこんな事になるのか。」
と、激しく動揺した事もあった。

自暴自棄というよりも、当然の感情だと思う。

『俺は何で生きているんだろう』

その言葉を発したのもこの時期だ。


その後、紆余曲折あったが
少しづつ前に進み、先輩がこの仕事をはじめ約20年になる。

知識や技術だけでなく、不安解消には説明も必要で
内容や状態を伝わりやすく説明しようとしても
後遺症の影響でうまく言葉が出てこなかったりと
いまだ苦労も多いと思う。

そんな男が向き合い続けたこの約20年は
半身不随や癌患者さんのケア、スポーツ選手のケアや
軽い肩こりから、骨盤矯正に至るまで

様々な人と向き合い続け
より満足してもらうためにはどうすれば良いか、葛藤し続けた時間でもある。
自身のハンデを言い訳にせず、驚くほど患者さんのために。

生きがいと書くと、自身のためとなりそうだが
この男は、患者さんの生きがいを守るために
黙々とひたすら努力を重ねてきた。

その原動力は自身が抱えた病気や
一生向き合う事となった後遺症への不安を乗り越えた経験だったり
先輩自身が前に進み続ける事で少しづつ感じた未来を
病気やケガで悩んでいる人が前向きになるキッカケとして感じてくれたら。役に立てたら。そんな思いなのかもしれない。

日常を過ごす中でのストレスの解消や、選手の心の支え
余命宣告を受けた方が少しでも穏やかな心が持てるように。

調子が悪い箇所だけを聞いて専門書通りの施術をするのではなく
会話を大切にし、患者さん自身が気付いていない要因を見つける事だったり
不安を解消することだったり。

そういった寄り添いを、本人は『 お手伝いなんだ 』と話していた。


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以前先輩と二人で、台風の激しい暴風雨のなか
ビショビショになりながら、深夜10キロほど歩いた事がある。
差せるわけがないのに傘を持ち、乗れるわけもないのに自転車を押して
そもそも歩く必要はなかったのに、歩いた。

服を着て泳いだかのように全身グチョグチョで
お互いを見ては笑い、折れた傘を見ては笑い
もはやでかい荷物でしかなかった自転車をみて笑い
買った缶コーヒーがずぶ濡れ過ぎて、雨の味だった事にも大きく笑った。
ずぶ濡れも悪くなかった。

あれからお互いに年を重ね、おっさんになった。
多くの人に出会い、自身の仕事に責任が持てるようになった。

長い夜を超え、朝日の眩しさに目をしかめ、そして陽の温かさを知った。

何度やっても綺麗に結び直せなかった、頑固で粗野な紐は
何度も何度も結び直そうとした事で、柔らかく結びやすくなった。
綺麗な事ではなく、ほどけない事が大切だと気付き
雑な固結びがしっくりくる事にも気付いた。もうほどける事はないだろう。
(ですよね、先輩。)


今回この記事を書いたのは
(私なりに思う)プロの仕事について知って欲しかったからだ。

努力をする事はプロとして当然のことで
わざわざ大切だと述べる必要はないが
その裏にある意思には、とても大切な意味があると思う。
今回の記事でその事に少しでも興味をもってもらえれば嬉しい。




最後に告知的な事を。

例えばダイエットは1、2回運動した程度ですぐに効果がでるものではない。
それと同様に施術も、時間をかけゆっくりと整えるのが基本だ。

簡易的なモノと違い、先輩の施術は余計な負荷を身体に与えないように行うため、即効性は感じにくいにかもしれないが
時間と共に大きな違いを実感してもらえると思う。

個人なので予約がとれない事もあるが
お試しコースもあるので気になった方は是非施術を受けてみてほしい。
身体のバランスだけでなく、むくみも解消されるので。

びわきゅう新宮 
instagram ]
福岡県粕屋郡美咲2-1-41 (IKEAにわりと近い場所)


当時先輩がよく歌ってた曲、名曲なので貼っておく。


前回書いた記事も、思った以上に多くの方にご覧頂きビックリしました。
本当にありがとうございます。
近日中に続きを書かせて頂きますので、ご覧頂けると嬉しいです。

よければスキも頂けると励みになります。


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