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#158【4,000円前後〜15,000円前後のおすすめイヤホン/ヘッドホン】 有線もワイヤレスもリーズナブルで高音質!わたしが愛してやまないfinal 3000番台、全機種のご紹介

イヤホンは実用品か嗜好品か?

 身の回りのあらゆる家電製品が、かつては高級品だったことがある。ニーズが拡大していくとともに、多くのメーカーが参入し、やがては品質や性能の差が少なくなっていく。ライバルが増えて競争が起こり、同時に製造技術も進歩するため、価格はどんどん下がっていく。そのようにしてやがては、どれを選んでもそこそこ使える、という面白味のないジャンルに堕ちていく。コモディティ化というやつだ。

・実用品としてのイヤホン

 堕ちる、とは言ったが、消費者にとっては良いことだ。本稿で扱うイヤホンという製品も、こだわりがなければ1,000円、2,000円といった価格のもので、ちゃんと音楽を楽しむことができる。それも、SONYやパナソニック、JVCやオーディオテクニカといったAV機器大手から、そうした製品が販売されている。実用品としてのイヤホンは、さながらCASIOの腕時計のようなものである。1,000円、2,000円といった価格帯の商品で、必要な機能が満たされているのだから。

・嗜好品としてのイヤホン

 一方で、数十万円もするような高級イヤホンも存在する。そうした価格帯の製品を愛好する人々がいて、高くても売れるという現実があるため、いかにブランドを育てて高額な商品を売るか、という商売にチャレンジするメーカーも少なくない。

 これは、現在のポータブルオーディオ業界の中心地である、中国の過当競争が生み出した結果であろう。日本国内では実感しにくい(家電量販店で手に入る中華イヤホンは、日本代理店が間に入るため、現地価格と比べて割高になる。その代わり保証は受けやすいだろう)のだが、中華イヤホンはもはや血みどろのコスパ合戦、値引き合戦の様相であり、もはや普及価格帯のイヤホンでは利益が出ない。資金のある愛好家が振り向くような製品を作って、過酷な消耗戦を回避できる高額な商品を売りたいのだ。(そして、普及価格帯の方も、頻繁に改良版を発売して二度三度と購買させるのだ)そうしたイヤホンは、嗜好品である。

・すべてのジャンルはマニアが潰す

 この言葉は、ブシロードの木谷会長が低迷する新日本プロレスを買収した際に語った言葉だ。(興味があれば、こちらの記事を参照されたい)ポータブルオーディオもこのままでは、かつてのホームオーディオと同じ道を歩むだろう。イヤホンはハマると財産が無限に吸い取られる危険な趣味として認知され、若者からは無視され、偏屈な老人の趣味に成り果ててしまう。(そして、若年層のニーズはAppleのようなデジタル強者がかっさらっていく)

 もっとも、わたしには手の届かないような高級品が存在することや、それを承知で夢中になり、突っ走る道楽者がいることを否定はしない。それこそが趣味というやつだ。人の道楽にケチをつける野暮はしないが、わたし自身のスタンスは、ここまでの記述でおわかりいただけたであろう。

・実用品の価格帯で、オーディオの楽しさを伝えるイヤホンを紹介したい

 さて、本稿では何を語るか。過去に取り上げた紹介記事のリライトでもあるが、実用品として許容できる価格帯でありながらも、マニアが唸る音を出す、finalの3000番台を全機種紹介してみたいと思う。当然だが、ここで言う全機種というのは、あくまで本稿執筆時点での話である。その旨ご了承いただきたい。

 また、似た音質傾向の機種ばかりであるため、このイヤホンはこのジャンルにおすすめ!という書き方はせずに、文末にリファレンス音源を記載することにした。執筆にあたり、本来ゲーミング用途であるVR3000を含めて、全機種をこのプレイリストで聴き直している。

・余談、ドンシャリチューニングについて

 実際、3000系は他社製品と比較すると個性的だが、むしろ同価格帯の他社製品のチューニングが過剰であり、そのほとんどが低音域と高音域を持ち上げた、所謂「ドンシャリ」である。これは一聴して迫力があるように感じるが、長期間使用するには向かないと思っている。聴いていて疲れるし、特定の音域を持ち上げるということは、その前後に聴こえにくくなる音域の谷が存在するということでもある。

 最近はAirPods Proを中心に、アクティブノイズキャンセリング機能付きイヤホンのユーザーも増えた(そして、AirPodsは音作りもまともだ)ため、あまり見かけない光景ではあるのだが、一昔前なら電車内でシャカシャカと音漏れを振り撒く人がいて、迷惑がられるというのは日常茶飯事であった。個人的な考察だが、あれは大音量で聴かねばボーカルが遠くてノレないから、という事情があったのかもしれない。実際、昔のわたしがそうだった。まさに、ドンシャリの谷が産んだ迷惑行為というわけだ。

(中華イヤホンの場合は、ボーカルが際立つような音作りがトレンドだ。また、イヤホンの中に複数のドライバーユニットを収める変態スペック合戦や、チューニング合戦もあり、トレンドが一周回ってドンシャリの最新機種が発売されたりもする。節操が無いようにも見えるが、トレンドを生み出したり、ヒット商品を真似するスピードは国内メーカーとは段違いだ。中華イヤホンを追いかける面白さはそこにある。つまりそれは、イヤホンスパイラルにハマるということでもあるのだが…)

・final 3000シリーズについて

 ここで、final公式サイトから、E3000の説明にある一文を紹介したい。E3000の特徴や設計思想とともに、finalがエンジニア主導のモノ作りをしている硬派な会社であることも、よく伝わると思う。

最新の音響工学、音響心理学の研究成果を踏まえ、音質設計を行いました。 高音の一部を強調するという一般的な音作りの手法を使うと、一聴して音の鮮やかさを感じさせるのですが、そのことによって、他の音域が埋もれて聴こえにくくなってしまいます。 E3000では、強調した音域を作らないことで、高い解像度と広いサウンドステージを実現しました。 低音から高音までバランス良く再生することで、ホールで音楽を聴いているような音の広がりを体感していただけます。 一聴したときのアピールよりも、長く使うほどに良さを感じる「定番」と呼ばれることを目指した、ナチュラルな音質を追求した製品です。

https://final-inc.com/products/e3000-jp

 というわけで、市場的には個性的でありながらも、むしろこちらがfinalの考えるナチュラルな音の一解答である、という存在がE3000であり、その特徴を受け継ぐのが3000番台の製品達なのである。長くなったが、堅苦しい前置きはここでおしまいだ。各機種の紹介に移ろう。

E3000(有線イヤホン)

※E3000Cはマイク付きのバリエーション

 やはり、何度も聴いても悔しいほどにいい音。くせになる音がするイヤホンです。はじめて聴いた時には、暗めのパッとしない、地味な音だと感じるかもしれません。しかし、聴けば聴くほどに、finalの目指した音が理解できてくると思います。強調した音域を作らないことで、他の音をマスクしない、ナチュラルな音です。

 わたしの印象としては、やや低域の主張が強めだと感じますが、音源データではない実際の演奏では、距離に対して減衰していく音があるわけで、そうした体験にも合致するリアルなチューニングとも言えます。まさに、finalが言う通りの、コンサートホールで音楽を聴いているような体験が味わえます。

 この雰囲気にハマれば、これじゃないとダメだとすら思える、素晴らしい音だと思いますが、市場の売れ筋とは全く違う音(地味!)を新たな定番として売り出すというのは、大変勇気のいる決断であったことだろうと思います。

 しかし、2017年に発売したこの機種は、いまや予算5,000円で買えるイヤホンの超定番機種。オーオタの必修科目のような存在とも言えるロングセラーになりました。

 なお、E3000には兄弟機というべき別チューニングのモデルとして、E2000があります。設計思想は同じですが、暖かみのあるE3000とは異なる、カラッとした明るい音で、聴き心地とノリの良さを両立した製品です。

 E3000は良くも悪くもシブい製品で、他社のイヤホンから乗り換えた際に違和感がある可能性は拭えません。一方、E2000はそうした心配がなく、しかもE3000より価格も少し安くなります。カラーバリエーションもあり、ブラックとシルバーの2色から選べます。また、E3000Cと同じく、マイク付きのE2000Cも用意されています。

 個人的には、E3000とE2000の2本があれば、あらゆるジャンルの音楽が楽しめると思っています。イヤホン沼にハマる前に、この2本があればコレクションが完結してしまいます。そのため、セットで買うというのもオススメです。

A3000(有線イヤホン)

 Eシリーズを成功させたfinalが、新たなラインナップとして開発したAシリーズですが、始まりはA8000(公式ストア価格198,000円の最高級モデル)でした。これは、Eシリーズの開発で得た知見をさらに発展させ、新しい研究成果として世に送り出したフラッグシップでした。

 そして、A8000の開発で得た知見を、普及価格帯のイヤホンに持ち込んだ製品がA3000やA4000といった、final Aシリーズです。(高級イヤホンの位置付けとは、このA8000のようであるべきだと思います)公式サイトを見る限り、相当な自信が伺えます。

A3000はこの価格ではあり得ないレベルの音質を実現するために、新たな開発・生産の拠点を設けるところから始めました。6mmΦのダイナミックドライバーを、部品だけでなく生産機器を含めて、全てを新たに設計しました。フラッグシップイヤホンであるA8000の開発時に確立したfinal独自の評価法を基に音質設計されています。ゆったりと広がる低域のなかに一音一音が輪郭を持って浮かび上がるように定位する、圧倒的にナチュラルなサウンドが特長です。

https://final-inc.com/products/a3000-jp

 ところで、イヤホンって家電やオーディオメーカー以外からも発売されていますよね。あのルイ・ヴィトンですらイヤホンを販売しています。これはもちろん、ルイ・ヴィトンが製造している訳ではないでしょうし、LVMHグループ内にオーディオメーカーがあるとは思えません。(PHILE WEBの記事によると、ヴィトンのイヤホンは、Master & Dynamicとの協業で制作されたそうです)

 引用したA3000の説明で分かる通り、finalは自社で企画設計から販売まで完結できるオーディオメーカーです。そしてやはり、エンジニア主導のロジカルな製品開発を行っていることが、finalの強みだと分かる一文ですね。

 さて、A3000の音質について。先に注意点をお伝えしておくと、E3000と比べて価格は高くなりますが、必ずしもE3000のパワーアップ版という訳ではありません。あくまで設計思想の異なるAシリーズの製品です。とはいえ、客観的に見て、価格差に見合うだけの音質は備えています。

 そして、Aシリーズの特徴(一応、A8000は無理でしたが、A4000とA5000は過去に所有していました。ちなみに、A4000を手放したことには後悔しています。あれはいいものだ…)とは、きめ細やかで繊細、音の粒が全くぶつかり合うことなく整列している、と例えたくなるほど細かい。そして何より、楽曲の立体感が際立っている。ジャズの生演奏なら、配置や距離感まで伝わるイヤホンです。

 E3000が、コンサートホールで音楽を聴いているかのようなリアリティのある「空気感」を表現するイヤホンなら、A3000は目の前でバンドが演奏しているかのようなリアリティのある「立体感」を表現します。

 それではなぜ、これが「3000」なのか。E3000の開発で得た、聴き心地の良さに繋がる要素を取り入れたモデルだからだと理解しています。先ほどの引用文の中に「ゆったりと広がる低域」というワードがありますが、これがまさに「3000」の証でないかと思います。

 とはいえこのA3000、個人的には3000番台のモデルで、最も個性の薄い音だと思っています。他の3000は「やや低域寄りだけど、高域までちゃんと鳴っている」という印象ですが、A3000はフラットなバランスで鳴っているように聴こえます。

 先ほどE3000とE2000のペアを購入することをおすすめしましたが、予算が許せばA3000もおすすめです。こちらは、この一本であらゆるジャンルを無難に鳴らせます。(A3000を検討する予算があれば、A4000とどちらが好みに合うか、聞き比べてみるのも良いかと思います。A4000も素晴らしいイヤホンです)

 また、Aシリーズはケーブルの着脱が可能です。イヤホンの故障で最も多いのは、ケーブルの断線ですが、A3000はその場合でもケーブルだけを交換して使い続けることができます。

 本稿で紹介する機種は当然、全ておすすめの機種なのですが、個人的な好みでは、音はこのA3000が一番好きですね。装着感も一番いいと思います。3000番台はいずれも聴き心地の良さが魅力ですが、その中でもなお良いと感じます。ただし、その繊細な音を楽しめる静かな場所で使う場合においては、という条件付きです。

 実はこの機種、見た目に反して遮音性が低く、音漏れもします。その弱点はEシリーズも同様なのですが、なにせAシリーズは見た目がIEM(インイヤーモニター)なので、きっと遮音性が高いのだろうと期待してしまいます。しかし実際には、どちらかというと低い部類に入ると思います。わたし自身は、だからといって音量を上げたりはせずに、ある程度は外音も聴こえるイヤホンとして付き合っています。

ZE3000(完全ワイヤレスイヤホン)

※本体カラーは白と黒が選べます

 うってかわって、遮音性が高く音漏れしない、ノリが良くて更に個性的な3000というモノも存在します。完全ワイヤレスイヤホンのZE3000です。有線と比べて、ワイヤレスは音質面で不利なのでは?という懸念があるかもしれませんが、全く問題ありません。驚くほど音がいいです。

 そして、確かに3000番台の音ではあるのですが、他と比べてメリハリの効いた、派手な音だと感じます。しかし、迫力があるのに疲れにくいという、不思議なイヤホンでもあります。

 形状はAシリーズに似ていますが、音の傾向はEシリーズの印象と同じです。個人的には、確かに3000番台の特徴を持ってはいるものの、その音は有線のE4000が最も近いと感じています。音質最優先でワイヤレスイヤホンを探しているなら、一押しの製品ですね。

 ただし、この機種には「音がいい」という以外に、特筆すべき点はありません。今どきのワイヤレスイヤホンなら、アクティブノイズキャンセリングや、スマホアプリによる設定のカスタマイズに対応しているものですが、そうした機能は一切ありません。

(ただし、ノイズキャンセルについては、もともとの遮音性が高いため、イヤーピースを低反発素材のものに変えることで、相当高くなります。個人的にはコンプライのTW-200Cを使用しています。このイヤーピースを付けたZE3000は優秀な耳栓と化し、ヒアスルー機能が無くて困るくらいに遮音します)

 そして、これは毎回書いているネタですが、タッチセンサーが敏感すぎるため、操作性はあまり良くありません。(アプリに対応していないため、カスタマイズもできません)ほんのちょっとイヤホンの位置を直したり、髪を触った時に指が触れてしまった程度でも、容赦なくタッチ判定が行われ、再生が停止します。購入直後はかなり戸惑うだろうと思われます。その点は慣れの問題でもありますが、購入を検討される場合は、そのクセに付き合う覚悟が必要です。しかし、慣れてしまえば、これほど音の良いワイヤレスイヤホンはそうそうありません。

 また、これも毎度のネタになりつつありますが、音が良くデジタル家電としての作り込みも、文句のつけ所がない製品が存在します。TechnicsのEAH-AZ40M2です。もちろん、ここまでアピールしてきたfinal 3000番台の製品とは異なる印象の音ですが、音質面で引けを取ることはありません。

 もしご興味があれば、こちらの過去記事を参照いただければと思います。個人的な音の好みでは、やはりZE3000を推しますが、ワイヤレスイヤホンとしての総合的な完成度を客観的にジャッジすると、Technicsの圧勝だと思っています。

UX3000(ヘッドホン)

※本体カラーは白と黒が選べます

 いろいろと紹介していますが、わたし自身の使用頻度が最も高い製品はどれか?というと、このUX3000です。特に(今は休職中の身ではありますが…)リモートワーク中は、ほとんど毎日使っていました。

 休日においても「ただ電源をオンにして装着するだけ」という動作が有線はもちろん、ワイヤレスイヤホンと比べても楽で、要するに音楽を聴きたいと思った時に一番手軽な道具が、このUX3000だったのです。

「UX3000」は、agブランドより好評発売中のノイズキャンセリングワイヤレスヘッドホン「WHP01K」を、海外別注モデルとして、finalのエンジニアによってサウンドを一新させた特別仕様の製品です。

https://final-inc.com/products/ux3000-jp

 ところでこのヘッドホン、他の3000とは誕生の経緯が異なります。上記の引用文から分かる通り、サブブランドのagが販売している機種(現在も併売されています)の、finalチューニング版を作り、海外で発売されました。それが好評だったのか、後に国内でも販売されることになりました。

 公式サイトを読み込んでも、EシリーズやAシリーズのバックグラウンドにある、プロジェクトX的な研究開発のドラマを感じない点には寂しさがありますが、音はなるほど、E3000の音がそのままヘッドホンのスケール感になったような印象で、間違いなくfinalの3000を名乗るに相応しい音がします。また、先ほどZE3000について物足りないと書いた、デジタル家電としての機能面は、UX3000の方が充実しています。

 先ほど、リモートワークで使っていたと書きましたが、スマホやPCと2台同時接続ができる、マルチポイント機能があるためです。個人のスマホで音楽を聴きながら、社用のスマホで電話を受けたりすることが、接続し直すことなくできるということです。これで電話やTeamsの会議にも参加していましたが、「〇〇さんの声が聞こえにくいのですが…」のような、通話品質を指摘されるトラブルはありませんでした。

 また、この機種にはアクティブノイズキャンセリング機能がついています。ただし、難点があります。ノイズキャンセルをONにした際、「チリチリ…ツツツーン…」のような機械ノイズが発生します。これが「サー…」のような音なら気にしなかったかもしれませんが、個人的にはかなり気になります。もっとも、音楽を再生すると聴こえなくなる訳ですが、曲間の無音部分では聴こえます。

 しかしこの機種は、有線接続時でもノイズキャンセリング機能が使えます。その際は、前述の機械音は発生しません。更には、ワイヤレスもノイズキャンセルもOFFにして、普通の有線ヘッドホンとして使うこともできます。電池が切れても、有線で使い続けられるということです。(しかしそもそも、最大35時間の連続再生ができる機種のため、わたしはまだ電池切れに遭遇したことがありません)有線接続用のケーブルも付属します。

 個人的に最もお気に入りの使い方は、有線接続&ノイズキャンセリングONで聴くことですね。(でも、その準備が面倒くさいので、ワイヤレス&ノイキャンOFFで使うことが多いですけどね…)上に掲載した写真の組み合わせは、わたしが何かに集中したい時の、定番セットになりつつあります。ただし、音漏れはありますので、遮音性の高さを活かして、セーフリスニングをするように心がけましょう。

※ちなみに、写真に写っているケーブルはこちらの商品です。長さは0.5mです。また、イヤーパッドにはEarProfitのPERFORM_1(M55)を装着しています。EarProfitはユニクロのエアリズムみたいな質感で、蒸れが軽減されます。

 ノイズキャンセリングのONとOFFで、音の違いはさほどありません。ノイキャンON時の方が低域の広がりが増すような気もしますが、わずかな違いです。有線と無線についても同様ですが、いいアンプに繋ぐとか、上流で音質向上の余地があるのは当然、有線の方になります。

VR3000(有線ゲーミングイヤホン)

 商品名から分かる通り、これはゲームやVRを楽しむためのイヤホンです。イヤホンやヘッドホンを装着した際の臨場感を高めるため、バイノーラル録音で製作されたコンテンツも増えてきました。これは音楽用ではなく、そうした現代のニーズに応える製品です。ゲームもVRもやらないわたしが、いったいこれを、何に用いるか。

・主にアニメを観るときに…

ガルパンはいいぞ

 映像視聴用に使う、という訳です。そして今回、改めて聴き直すにあたり、選定した作品は『ガールズ&パンツァー 劇場版』にしてみました。迫力のある砲撃音はもちろん、戦車ごとの走行音の違いや車体がぶつかり合う音など、オーディオ的な魅力も高い作品だと思っています。

 それらの距離や方向の分かりやすさ、音の分離感、セリフやBGMの自然さを評価しようと思います。それを、作品導入部である大洗市街戦(00:00:00〜00:26:10)で、A3000と比較視聴することで行います。先に視聴するのは、A3000の方からです。

 正直なところ、A3000はクセがなく、映像コンテンツであろうが何の不自然さも感じません。やはり、最も無難で万能な3000です。別にこれがあれば良くないか?という気もします。しかし、VR3000での視聴を開始した途端、その感想は遥か彼方に吹っ飛んでいきました。

・レベチ!(レベルが違う!)

 前述した評価項目の全てがあまりにも違いすぎて、もはや比較になりませんでした。すみません、全てにおいてVR3000の圧勝です。比較しようなどと思うことすら、不要なレベルでした。イヤホンで映像を視聴するなら、VR3000は最高です。

 ガルパンだけでは飽き足らず、『リコリス・リコイル』(たきな派だ)の3話と、『SSSS.GRIDMAN』(アカネ派です)の8話を見返しましたが、いずれも素晴らしかったです。アクションシーンのみならず、あらゆる場面において、レベチでございました。

ゲーム用や3Dサウンド用を謳うイヤホンの多くは、一聴した際の驚きを重視して低域や高域を誇張した音づくりがされています。しかし映像と共に使われる音はそのゲーム等のコンテンツの世界に没入することが目的であり、音に驚くことではありません。

https://final-inc.com/products/vr3000-jp

 公式サイトからの引用ですが、全くその通りだと思います。音に驚くことではなく、没入できることを求めているのです。その目標は、完全に実現されていると感じています。BGMやSEとセリフの分離が明瞭で聴き取りやすく、距離や方向の表現も、ステレオなのにサラウンドで聴いているかのようでした。

 さて、わたしが所有していない機種の話ではありますが、finalのラインナップには、他のゲーミングイヤホンも存在します。VR2000や、VR500 for Gamingといった製品です。final製品全体を見渡すと、3000番台は比較的リーズナブルな機種に付けられている型番ですが、現時点でゲーミングイヤホンとしては、VR3000は最も高額な機種になります。

 購入を検討される場合は、公式サイト等で特徴の違いを把握のうえ、ご自身の用途に合うものを選んでいただければと思いますが、VR3000が映像視聴用として有能であることは、わたし自身が所有し体験した結果、間違いなくおすすめであると、太鼓判を押させていただきます。

・音楽鑑賞用としてはどうなのか?

 音楽鑑賞の場合、やはりバランスがおかしいですね。音の分離が強すぎて、むしろ不自然だと感じることが多いです。また、ここまで紹介してきた3000系の音とは全く異なる、ややドンシャリな音だと思いました。そのドンシャリの中で、曲によってはボーカルが遠いと感じたり、目立ちすぎると感じたりもして、印象が安定しません。ともかく、音楽には向かないということです。

 ちなみに、VR3000のような凄まじい音の分離があり、かつ音楽用にチューニングされた製品は無いのか?というと、(個人的な印象ですが)A5000がそのような機種でした。A5000でジャズや小編成のクラシックを聴くと、まるで目の前で演奏しているかのような臨場感がありました。ただし、かなりジャンルを選ぶイヤホンのため出番が少なく、買取価格が高いうちに手放してしまいました。

 さて、3000番台の全機種紹介はこれにて完結です。ここから先は、本稿執筆にあたって使用した環境の説明を述べた後、筆を置きたいと思います。

参考:再生環境とリファレンス音源

 本稿執筆にあたり、改めて全機種を聴き直した。その際に使用した機材は、Xperia 10ⅡとドングルDACのShanling UA3、イヤーピースは全て付属品のものを使用している。当然だが、A3000のケーブルも付属品のままである。(記事内の写真ではShanling M0 Proと一緒に写っているが、あれは実際に所有していることの証明として載せている)

 また、わたしの商品紹介記事全般に言えることだが、スペックの詳細は意図的に省略している。公式サイトやAmazonの販売ページを見れば良いことなので、書くまでもないという考えからだ。そんなことより、わたしの3000シリーズへの愛着を詰め込んだ記事にする方が、ブログやYouTubeに溢れる商品レビューとの違いが出ると思っている。そこに紙幅を使いたい。

 音源データは全てローカル音源でUSB Audio Player PROというアプリで再生、設定はビットパーフェクトをオンにしている。(ビットパーフェクトモードは、音源データを正確に再生する機能。当然、イコライザの類は使用できない)

 ワイヤレスのZE3000とUX3000については、Xperia 10ⅡからUSB Audio Player PROで再生している点は同じだが、Bluetoothのコーデックは、ZE3000はaptX Adaptiveを、UX3000はaptXを、それぞれ選択して接続している。また、UX3000のノイズキャンセリング機能はONの状態で試聴した。

 比較試聴に使用したプレイリストは以下ものである。選曲の理由は、個人的に最近よく聴いているアルバムから、なんとなく抜粋しただけである。そのため、ジャンルに偏りが生じてしまったが、聴き慣れている分、機種毎の特徴は分かりやすかった。なお、ジョン・コルトレーンの『A Love Spreme』はアルバム全曲を、アンドレア・バッティストーニのアルバムは、ベートーヴェン交響曲第5番の全楽章を聴いている。

曲名:灼熱にて純情
アーティスト:星街すいせい
収録アルバム:Specter

曲名:ギラメタスでんぱスターズ
アーティスト:でんぱ組.inc
収録アルバム:ワレワレハデンパグミインクダ

曲名:青春を切り裂く波動
アーティスト:新しい学校のリーダーズ
収録アルバム:一時帰国

曲名:CRAZY!CRAZY!
アーティスト:Rei with 東京ゲゲゲイ
収録アルバム:Quilt

曲名:残機
アーティスト:ずっと真夜中でいいのに
収録アルバム:沈香学

曲名:ブリキノダンス
アーティスト:Ado
(オリジナルアーティスト:日向電工)
収録アルバム:Adoの歌ってみたアルバム

曲名:悶々
アーティスト:Cody・Lee(李)
収録アルバム:心拍数とラヴレター、それと優しさ

曲名:空の青さを知る人よ
アーティスト:あいみょん
収録アルバム:おいしいパスタがあると聞いて

曲名:Mela!
アーティスト:ダズビー
(オリジナルアーティスト:緑黄色社会)
収録アルバム:Remindful.Two

アルバム:A Love Spreme
アーティスト:ジョン・コルトレーン

アルバム:[BEYOND THE STANDARD] ベートーヴェン:交響曲第5番「運命」/吉松隆:サイバーバード協奏曲
アーティスト:アンドレア・バッティストーニ指揮/東京フィルハーモニー交響楽団

★final公式noteによる3000シリーズ紹介記事はこちら

※E3000、A3000、ZE3000の3機種は、上記リンクの記事で紹介されている。購入を検討されている方は、こちらも参考になると思う。

それでは皆様、良いポタオデを。

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