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【簡単あらすじ】冷たい密室と博士たち(微ネタバレ)【森博嗣/講談社文庫】


『 手法はすべて自明。しかし、動機が理解不能 』


大学内で開催された、年度末に行なわれる試験問題を決定する委員会に参加した犀川創平助教授は、他の委員たちとの会話によって精神的に打ちのめされた。

へとへとになって自室に戻ると、同僚・喜多北斗助教授と学生・西之園萌絵からの誘いのメールがあることに気づく。

その誘いに乗り、集合場所となったファミレス内で三人は話し始めるが、その話題は、自然と、二週間前に学内で発生した密室殺人事件についての話になった…




『はじめに』
ついに東北南部も梅雨明けが発表され、それに伴い最高気温がぐんぐん上昇し、最高気温は30度どころか35度を超えることが増えています。
私は暑さに弱いため不要不急の外出は減らしている時期ですが、エアコンを起動し、自室で飲み物を飲みながら読書をするという、絶好のシチュエーションを得られる時期が到来したとも言えます。ですので、最近読んで印象に残ったり、買ったまま積んでいたりした本の感想を書こうと思います。
この感想で、その作品や著者に少しでも興味を持って頂ける内容にしたと思いながら書いていますが、登場人物やぼんやりしたあらすじなど、『微ネタバレ要素』を含む記載がありますので、その点にご注意ください。

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前作の「すべてがFになる」が大変面白く、新しい刺激を受けたことに味をしめ?、S&Mシリーズ第二作である本作にも手を出してしまいました。



建築学科の犀川創平助教授は、極地環境研究センタ(略して極地研)に在籍する、高校生時代からの親友であり悪友であり現在は同僚でもある、土木工学学科・喜多北斗助教授から、極地研を見学にこないかと電話で誘われる。

極地研の施設と実験内容に興味を持っていた犀川と、その電話の最中に偶然近くにいた学生・西之園萌絵は、その日の夜、極地研を実際に訪れる。

そこでは、消防士のような・宇宙服/潜水服のようなものを着込んだ学生らが、「低温度となった場所で、波や海流を起こした場合には構造物にどのような影響を与えるか」という実験を行っていた。

その実験を最後まで見学した犀川と西之園は、極地研・木熊教授に誘われ、実験の打ち上げに参加することになる。

犀川も西之園も、それなりに打ち上げを楽しんでいたが、実験に参加し助手的働きをしていた学生・丹羽健二郎と服部珠子が、いつまでたっても打ち上げに顔を出さない。

駐車場の車を移動させる必要があり、丹羽を探すことになった一行だったが、実験室に隣接する準備室で服部、搬入室で丹羽の死体が見つかる。

しかし、準備室も搬入室も密室と呼ばれる状況にあった…

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物語内では多くの事象が乱雑に発生するため、読者は混乱し易い(実際私は混乱している時間も多かったです…)と思いますが、発生した事象を正確に分析しつなげることで、真実に辿り着くという流れがとても好みです。

喜多助教授も西之園学生も、客観的な仮説を立てることが出来るキャラのため、両人とも作品の途中で推理を披露します。

どちらとも正解ではないのですが、どちらとも本質に近づくためのきっかけが隠されているところが、また面白いです。

本作は、前作と比較すると理系要素は薄まっていると感じますが、その分読みやすくなったとも感じます。
そして、喜多助教授国枝助手など、これからのシリーズの舞台背景に深く関連し、大きく展開するための人物が登場します。(こう思うくらい二人はキャラが立っているのですがどうなのでしょうか…)

一作品としての展開と結末だけでなく、ラスボスとの絡みについても興味が尽きないS&Mシリーズ、これからも追いかけたいと思います。



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