見出し画像

【簡単あらすじ】アリバイ崩し承ります(微ネタバレ)【大山誠一郎/実業之日本社文庫】

「時計修理承ります」の他に「アリバイ崩し承ります」の張り紙がある美谷時計店。

難事件に頭を悩ませる新米刑事は、どうにも困って、その店にアリバイ崩しを依頼してしまう。

ストーカーとなった元夫のアリバイ・郵便ポストに投函された拳銃のアリバイなど、七つの事件や謎を、店主の美谷時乃は解決できるのか!?



ーーー

『はじめに』
私は自他共に認める出不精です。さらに冬の寒さをひしひしと感じ、外出する頻度が減っているのですが、それに反比例して読書量は増加しています。
ですので、最近読んで印象に残っている本、買ったまま積んでいた本の感想を書こうと思います。
このレビューを読んだことで、その作品や著者に少しでも興味を持って頂ける内容にしたと思いながら書いていますが、登場人物やぼんやりしたあらすじなど、『微ネタバレ要素』を含む記載がありますので、その点にご注意ください。

全7話の短編集です。

各話、文字数としては短いのですが、無駄を省いているだけで大変楽しめる一冊です。


ーーー

第1話.時計屋探偵とストーカーのアリバイ

独り暮らしの医学部教授が自宅で殺された。

捜査により、ギャンブル狂の元夫がストーカーまがいの行為で被害者に付きまとっていたことが分かる。

捜査一課に配属されたばかりの僕は、自宅近くの商店街の散策途中に、「アリバイ崩し承ります」という奇妙な張り紙のある、美谷時計店に入店する。

第2話.時計屋探偵と凶器のアリバイ

某製薬会社に勤務の好青年が銃で殺され、事件に使用されたと思われる銃は、郵便ポストから発見された。

僕は、ポスト近くにある指定暴力団本部と事件が関係しているのではないかと疑うが…

第3話.時計屋探偵と死者のアリバイ

僕が夏の夜に散歩をしていると、暴走車に出くわす。

僕は何とか避けたものの、近くを歩いていた推理作家が巻き込まれ瀕死の状況になってしまう。

成り行き上、僕はその作家と救急車に同乗したが、作家は殺人を犯してきた帰りだったと言い残し、そのまま死んでしまう。

警察の捜査により作家の言葉の裏付けも取れた。

しかし、どう考えてもその作家には殺すことの出来ないアリバイがある。

これは作家による完全犯罪だったのか?

第4話.時計屋探偵と失われたアリバイ

ある分譲マンションの一室で、個人レッスン専門のピアノ教師が殺された。

容疑者である妹は姉が殺された時間、空を飛んだり・顔中撫でられたり・体を押さえられたり・暗い洞窟に閉じ込められたりした夢?を見て眠っていたと言う。

また、起きた時には手に誰かの血がついていたとのこと。

妹は夢遊病を発症しながら姉を殺したのか…

僕はいつもとは違う「アリバイ探し」を依頼する。

第5話.時計屋探偵とお祖父さんのアリバイ

非番のある日、時計が壊れてしまった僕は美谷時計店を訪れる。

店主の子供の頃の話で盛り上がっていたところ、店主が祖父から教わったアリバイトリック崩しの思い出を話し出す。

第6話.時計屋探偵と山荘のアリバイ

僕は長野県のスキー場で休暇中に、宿泊中の山荘で密室殺人事件が発生する。

疑われたのは、客の一人で中学生の原口君。

アリバイや状況証拠は原口が犯人ということを示しているが、それを信じることが出来ない僕は、捜査の権限が無い事件にも関わらずアリバイ崩しを依頼する

第7話.時計屋探偵とダウンロードのアリバイ

健康器具販売会社の元社長が自宅で殺されていた。

犯人の目星がつかないまま日時は過ぎ、事件の発生から三か月後、その敷地内から白骨死体も発見される。

白骨死体が親の大学生が元社長殺害の容疑者に浮上するが、彼には脆弱だがどうしても崩せないアリバイがあり…

ーーー

容疑者がアリバイを語る際は、当然時間を告げる。
つまり、アリバイは時間に関わるものであり、その限りであれば時計店が一番詳しく扱えるべき。


という、謎?理論を語る美谷時計店の店主「美谷時乃」は二十代半ばの時計職人で、小学三年生の時から、祖父から時計修理の技術もアリバイ崩しの技術も叩き込まれていました。

どことなくウサギを連想させる容貌の彼女に、僕は恥を忍びつつ何度もアリバイ崩しを依頼することになります。

ーーー

時乃は、僕の担当している難事件の話しを聞き、話が終わった後に少しの質問をしただけで、「時を戻すことが出来ました」という決めゼリフとともに、犯人を見つけ言い当ててしまいます。

つまり彼女は、自分では現場に出向かずに、話を聞いただけで真相を言い当てる「安楽椅子探偵」です。

各話とも、犯人に近づきながらもアリバイに苦しめられている僕の捜査話からちょっとした違和感を感じ取り、それを利用して解決するという、とても鮮やかですっきりする展開が続きます。

しかし、いくら難事件で迷宮入りしそうだからといっても、刑事(公務員)が一般人(時計店店主)に事件の内容を詳細に話してしまうのは、(本人も言っていますが)「地方公務員法三十四条の守秘義務違反」です。

ただ、そんな俗世界の小さな話なんて無視して読み進めれば、きっと満足出来る一冊です。



★他の小説レビュー★


この記事が参加している募集

休日のすごし方

記事を読んで頂いた方に、何かしらのプラスを届けたいと考えています。