経済学でお金は儲けられない。
経済と金融リテラシーは別物。
先日、金融庁とインフルエンサーであるひろゆきさんのコラボ動画がいろんな意味で話題となった。内容としては資産形成の手段として、全世界や全米株式のインデックスファンドをNISAで保有する類のものであった。
個人的には全く同じ運用を取り入れているため、少なくとも個別株やFX、暗号資産と比べた場合、つみたてNISAのような20年に渡る長期で運用する前提であれば、リスクはゼロではないものの、それ以上のリターンが見込める、投資初心者でも手堅く運用できる内容だと感じた。
最近、金融庁がNISA拡充要望を出すなど、関心が集まっている中、Abemaでひろゆきさんと某経済ジャーナリストとの対談動画が公開されたが、少なくともコメント欄を読んだ限りでは物議を醸している。
この方はAbemaでの紹介時から反NISAであることは予想していたが、発言内容がツッコミどころ満載で、ある程度金融リテラシーのある人が見るとコントにしか感じられない。
私はNHKの受信料を支払いたくないため、テレビを保有しておらず、銭湯や乗務職場の休憩スペースで掻い摘んで見る程度であるが、民放のニュース番組では、景気変動時の特集として、経済ジャーナリストをゲストに招きいて、現状を解説している印象が強い。
確かに、景気が良い、悪いを分析して、何が起きているのかを解説するだけであれば、経済ジャーナリストの専門分野かも知れない。しかし、経済という大きな括りではなく、個人での関心が強い株式相場や資産運用に関しては、金融や会計など多岐に渡り、経済の知識が豊富なだけでは対応しきれないと考えた方が良い。
「経済に詳しい=金融リテラシーが豊富」とは限らないのである。
歴史上、金を儲けた経済学者は2人。
私は高卒で就職し、倹約生活と資産運用の両輪で、同世代の上位0.8%に位置する金融資産を築くまでに至ったが、工業学科出身のため、資産運用の知識は皆無であった。
当時は独学で個別株を取引していたものの、会社四季報の読み方が分からないなど、ことある毎に限界を感じる場面が多く、疫病を機に通信教育で金融リテラシーに関係する学問を体系的に学び、あわよくば大卒資格を取得しようと思い立った。
そうして経済学が履修できる大学に在籍する運びとなったものの、初歩的な内容を学んだ限りでは、経済合理性のみに基づいて行動する「経済人モデル」を基本とした学問であり、現実とはかけ離れている内容に感じてしまった。
冷静に考えて、経済学を学んでお金が儲けられるのであれば、数字に強い学生は皆、経済学部に在籍したがる筈だが、実際にそうはなっていないし、経済学者で巨万の富を築いたのは、歴史を見てもケインズとリカードだけである。
かつての私も想像していたし、世間一般でも何となくイメージしている「経済に詳しい=金融リテラシーが豊富」は、必ずしも一致する訳ではないと捉えた方が良い。
実際に大学で経済学を履修しても、私が欲する知識は得られないと察し、金融、会計、心理学に方針転換したが、実利が得られているため、この判断は間違いではなかったと感じている。実際に人は、経済人モデル通りには動かないことが、経済学と心理学をミックスした行動経済学で指摘されている。
金融教育なら経済学よりも簿記。
経済学と聞けば、世の中のお金のことに詳しいイメージが先行するのに対して、簿記の印象は地味だ。大人でも経理の人が身につけている特殊な帳簿スキル程度の認識で、実態がよく分かっていない人はそこそこ居る。
それこそ私は、工業学科を卒業して18歳で鉄道会社に就いたため、簿記が何なのか全く知らなかったし、知らなくても生きていく上で支障がないから、機会でもなければ学ぶことはない。
現に、簿記とは無縁な状態で、出世街道を歩んだ結果、会計の知識は皆無なのに偉いポジションに就いてしまい、数字をもとに判断することが出来ない、もはやゼネラリストとも言えない残念な上役も一定数存在する。
そんな簿記だが、企業の業績を読み解くのに重要な、決算書を作成する技術の根幹である。
私の大学は経営に強い特徴から、履修科目に内包されていたが、今まで触れてこなかったよく分からないものという先入観から、割と最後の方に手を付けた。しかし、もっとはやく知りたかったと、対面で教えてもらえる商業高校生が羨ましく感じた。
日商簿記3級レベルの基礎的な商業簿記だけでは物足りず、VOD機能のある専門学校の通信教育を併用して、高度な商業簿記と基礎的な工業簿記を理解した証の日商簿記2級を、社会人学生の傍らで取得した。
そのお陰で、損益計算書の売上総利益、営業利益、経常利益、税引き前当期純利益、当期純利益の違いも、貸借対照表の流動資産、固定資産、繰延資産、流動負債、固定負債の概念も分かるようになり、会社四季報に記載されている内容の意味を理解した上で読めるようになり、銘柄分析に大いに役立っているのは言うまでもない。
FPの方が資格名通り、より実生活に必要とされる知識という面で、金融リテラシーを高められるかも知れないが、会計の知識皆無で学ぶのと、ある程度、簿記の知識がある上で学ぶのとでは、ほぼ全ての科目に波及すると言っても過言ではないタックスプランニングにおける理解度に差が出る。
そのため、やはり、金融リテラシーを高めたいのであれば、経済学やFPよりも、決算の土台となる簿記を優先的に学ぶことが重要だと感じる。
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