山本太郎やれいわ新選組が「嫌いな人」にこそ水道橋博士を支持して欲しい~参議院全国比例区の仕組みを説明する~

 5月26日にお笑い芸人の水道橋博士が、れいわ新選組公認で「参議院全国比例区」から出馬することを表明した。選挙区からの立候補ではなかったので、これにより7月10日投開票予定の参議院議員選挙において、全国どこからでも比例票で「水道橋博士」に投票することが出来るようになった。私が水道橋博士を支持する理由については最後に述べる。
 さて、ツイッター等を見ていて、彼を応援する周囲の方々は参議院全国比例区の仕組みをあまり良く理解していないのではないかと感じたので、まずは参議院全国比例区の仕組みを丁寧に説明して行き、水道橋博士が置かれている状況についても解説して行こうと思う。今の状況で言えば、水道橋博士は必ず当選できるわけではなく、むしろ私が思っていたよりも厳しい情勢に置かれていることにも言及していく。

 まず参議院全国比例区は全体で50議席の定数があり、各政党や新規参入の政治団体が得た票数に応じて、ドント式で議席を割り振って行く仕組みである。ドント式に関しては、2年前に書いたこの記事で衆議院の北海道ブロックを例にして説明しているので、そちらを参照して頂ければと思う。端的に言えば、各政党が得た票数を1議席目は÷1、2議席目は÷2、3議席目は÷3していって、得票数が多い50番目までを各政党に割り当てて行く方式である。
 投票率で多少は左右されるが、過去の選挙結果からざっくり言うと、約100万票で各政党に1議席が入る結果となっている(詳しくは後日改めて記事にする)。なので、2議席取るには約200万票、3議席だと約300万票がその政党に必要となる。参議院議員選挙の投票率は概ね50%~60%の間なので、全体の得票数としては5000万票~6000万票が見込まれる。1議席を得るには、得票率で言えば、おおよそ各政党2%の得票率が必要だ。2議席ならば4%、3議席ならば6%がおおよその目安とはなる。

 次に、参議院議員選挙の比例区の特色としては「個人名」で投票も出来ることにある。衆議院議員選挙の比例区では政党名での投票しか1票としてカウントされないが、参議院議員選挙の比例区では政党名だけでなく、比例区から立候補した個人名でも1票にカウントされる。なので、参議院議員選挙の比例区においては、政党名の票数+その政党が公認した候補者の個人名での票数=その政党全体の比例票数となる。例えば、「れいわ新選組」「れいわ」と書かれた票数が100万票で、「水道橋博士」と書かれた票数が50万票だったとすれば、れいわ新選組という政党全体の得票数は100万票+50万票=150万票となる。この政党名と個人名を合算した票数で各政党に議席を配分して行くこととなる。
 なので、最初から「れいわ新選組」に投票しようと思って、候補者の中でも特に水道橋博士が好きだから、「れいわ新選組」ではなく「水道橋博士」と書いたところで、れいわ新選組全体としての票数は変わらないのである。本来ならば「自民党」や「立憲民主党」と書こうと思っていた人が、水道橋博士に頑張って欲しいと思ったので、「水道橋博士」と書いてもらえれば、自民党や立憲民主党ではなく、全体としては、れいわ新選組に1票が増えることになる。だからこそ、タイトルにした通り、れいわ新選組や山本太郎は嫌いだが、水道橋博士が好きな人にこそ、水道橋博士に投票して欲しいのである。もしくは、そもそもれいわ新選組なんて政党は知らないが、水道橋博士は知っているという人にこそである。そういう意味合いで、参議院議員選挙では各主要政党は芸能人や著名人を擁立したがるのである。
 そして、各政党内で当選する人は、その政党内で「個人名」の票数が多かった候補者から順次当選して行くことになる。つまり、個人名での得票数で各政党の候補者はお互いに切磋琢磨して競い合う関係性にもある。これに関しては、率直に言って、れいわ新選組の候補者内では、東京選挙区で出馬表明した山本太郎代表が急遽全国比例区に転じない限りにおいては、著名人の水道橋博士が党内の個人名の票数でトップになることは、かなり有力視されるであろう。

 次に2019年の参議院議員選挙で新たに設けられた制度として「特定枠」という仕組みがある。これも水道橋博士が当選するには抑えておきたい制度なので、説明しておこうと思う。特定枠とは各政党が最大2名まで、その政党内で優先的に当選出来る制度である。つまり、最も個人名の得票数を得た人よりも先に当選する仕組みとなっている。前回の参議院議員選挙で、れいわ新選組の山本太郎代表が個人名として99万票も得ながらも落選した理由は、山本太郎代表よりも優先的に当選する人が2名おり、さらにれいわ新選組の議席が2議席しか割り当てられなかったためである。
 私個人としての見解は、個人名で投票した人の民意が反映されない民主主義に反する制度なので、さっさと廃止にして欲しい制度ではある。また自民党のような十数議席を得られるような政党が使用するならばともかく、1~2議席を争うような政党では、事実上、当選者を党が固定して決定するようなものである。だから、NHK党はホリエモンの秘書に特定枠を使用するべきではないと私が述べたところ、立花孝志代表がNHK党としては使用せず、比例区の候補者個人を競わせることによって、党全体の票数を上積みさせる方針に変えた模様である。

 一方で、れいわ新選組の山本太郎代表は前回に引き続き特定枠を1枠使用することを表明している。なので、れいわ新選組で最初に当選する人はこの候補者となり、れいわ新選組の議席獲得が1議席に終われば、この特定枠で擁立する候補者のみが当選となる。よって、れいわ新選組が1議席のみに終われば、水道橋博士は落選となる。れいわ新選組が前回同様に2議席を得られないと、個人名の記名得票数では間違いなく党内トップになるであろう水道橋博士でも当選出来ないのである。前回の山本太郎代表のような状況に陥るのである(だからこの制度はおかしい)。
 れいわ新選組が特定枠を使用しなければ、1議席目は水道橋博士の当選となり、少なくとも、れいわ新選組は、1議席は獲得が見込まれるので、水道橋博士は「アオシマ作戦」で寝ていても当選したかもしれない(なお、青島幸男氏が当選した当時は、現在の選挙制度とは異なる)。
 しかし、れいわ新選組として2議席目、目安として200万票をれいわ新選組という政党名+比例区の候補者の個人名で獲得しないと、水道橋博士は当選しないのである。現状の予測調査としては私が思っていたよりも厳しい情勢にあるようだ。だからこそ、水道橋博士候補は必死になって選挙活動(公示日前までは政治活動)を行って、「比例区は水道橋博士」(れいわ新選組に1票入る)で、1票でも多く獲得していかなければならない状況にある。

 そこで1票でも多く票を得るには、私は選挙掲示板を活用することだと考える。選挙でどういう候補者が立候補しているのか、またどの候補者に1票を入れるのか、最も考慮される物は選挙掲示板に貼ってあるポスターではないだろうか。選挙掲示板のポスターを見て、投票する人を決める有権者も多いことかと思う。もちろん、電話掛けやチラシ配り、公選ハガキも重要ではあるが、それだけでは全有権者に認知させることは難しい。水道橋博士のことを知っている人は全国に大勢いると思うが、水道橋博士が参議院議員選挙に出馬していることを知らない人もかなり大勢いるのではないかと思う。ましてや、普段、選挙に行く習慣が無いような人からすれば、なかなか知る術は無いだろう。なので、出馬していることを認知させる最大のツールは選挙掲示板にポスターを貼ることだと思う。
 通常、選挙掲示板に選挙ポスターを貼ることが出来るのは、選挙に立候補した候補者のみである。しかし、私が総務省に確認したところ、選挙掲示板のポスターに「比例区は○○」と、比例区の投票を呼び掛けること自体は特に違法ではないようである。各政党とも「比例区は○○党」へとの文言を入れているのもそのためである。さらに言うと、無所属で選挙区に立候補した候補者が「比例区は○○党」や「比例区は○○候補」と選挙掲示板ポスターに記載するのも違法ではないようである。その無所属候補者の政治的主張や思想信条として、比例区に立候補している特定の候補者を推すのはありのようである。であるならば、こうした形で選挙掲示板に「比例区は水道橋博士」と書かれたポスターを貼るのはどうだろうか。

 れいわ新選組の候補者が出馬している選挙区には「比例はれいわ」と書かれたポスターが貼られる予定であるから、れいわ新選組の公認候補者が出馬していない神奈川県や千葉県といった選挙区や、また水道橋博士の故郷である岡山選挙区などで、“無所属水道橋博士系候補者”を擁立することも一考である。無論、選挙区で出馬することになるので、供託金300万円(超絶高額)+ポスター代が1万枚で100万円と400万円の費用はかかることになるし、県内約1万箇所にポスターを貼る人員も必要となる。
 実際のところは水道橋博士陣営には採用されないかもしれないし、バッサリ不採用を宣告されるかもしれないが、これは何も水道橋博士候補に限らず、全国比例区から出馬している候補者にとっては、かなり有効な戦略ではないかと私は考えている。よって、NHK党から出馬する「ガーシー」にはパクられるのであろう(笑)。
 いずれにせよ、選挙にお金をかけるならば、選挙区に無所属の候補者を擁立させて、選挙掲示板ポスターに「比例区は○○」と書かれたポスターを貼るのが良い宣伝効果を生むと私は思う。

 最後に、私が水道橋博士予定候補に期待している最大の理由は、国民に対して政治をオープンにしようとしている姿勢にある。
https://reiwa-shinsengumi.com/hakasesuidoubashi20220526/)
 芸能人として25年間もの長きに渡って、日記を書き続けて来た上に、国会議員になったら、「国会に潜入したルポライター」として、政治の闇を白日の下に晒すと述べている。こうした形で著名人が国会で起きていることを国民に公開して発信して行くことは、民主主義国家において非常に重要なことであり、国民が政治に対して関心を高めることにも繋がる。
 また、れいわ新選組という政党は、山本太郎代表の私党的な印象も強く、党内で何が行われているのか、オープンになっていない部分も多々あると支持者として感じる。そうした、れいわ新選組の闇の隅々を白日の下に晒すことに対しても大変期待している。れいわ新選組がオープンな政党に生まれ変わり、今後飛躍して行く意味でも、私は水道橋博士参議院議員が誕生することを強く望んでいる。
 そのためには、先ほど述べたように、既存のれいわ新選組支持者が水道橋博士に投票するだけでは1票も増えない。むしろ、今まで山本太郎やれいわ新選組が嫌いだった人間にこそ、国会に潜入したいルポライター・水道橋博士に投票して欲しいと思う。れいわ新選組が2議席獲得して水道橋博士参議院議員が誕生した時にこそ、山本太郎代表やれいわ新選組も白日の下に晒され、真価が問われることになるであろうから...

 私が巻末に論文を寄稿している、野党の経済政策について、反維新タイガースで水道橋博士とチームメイトである及川健二記者がインタビューを行った著書は以下のリンクから購入できます。
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