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精神障害者の交通機関に対する割引は必要かその2 ~交通割引の論拠はなにか?~


noteを見ていただいて、ありがとうございます。注意欠如多動性障害(ADHD)で精神障害者手帳2級のred_dash です。

 前回の記事では、精神障害者の中でも発達障害(ADHD)当事者として、私の実際の症状とそれに伴う困難の観点から、精神障害者への交通機関の割引の必要性を書きました。

 今回の記事では、精神障害者への交通機関の割引の必要性について論じていらっしゃる方をご紹介しながら、割引の必要性とその論拠を整理していきたいと思います。

 精神障害者の交通機関の割引の必要性ついて、個人としては金海銀之助さんとtak1974さんが、組織としては全国「障害者」解放運動共闘会議さんがまとめていらっしゃいます。(攻撃的と思われうる表現が含まれていますのでご留意ください。)

 交通機関の割引の必要性について金海銀之助さんは

割引が適用されない精神障害者と、すでに割引が適用されている身体・知的障害者との間の不公平が存在すること(障害者差別解消法等の趣旨に反する) 
(中略)
通院や福祉施設に通所するのには交通機関の利用が欠かせないが、低収入・無収入であることが多い障害者がその交通費を健常者並みに負担することは至難の業である。

精神を含む障害者の交通運賃福祉割引のあり方について再考 | 金海銀之助の忘備録~365日奮闘中~ より
日本も批准している障害者権利条約。その条約では、障がいのある人に対しての交通権、つまり移動に関する権利が次の通り保障されている。
「障害者自身が、自ら選択する方法で、自ら選択する時に、かつ、負担しやすい費用で移動することを容易にすること。」
障害者権利条約 第20条 (a)

交通運賃の障害者割引制度を早く整備して!(2019年) | 金海銀之助の忘備録~365日奮闘中~ より

と記載しています。

 tak1974さんは

現状、JR・大手私鉄に関しては、精神障害者手帳での運賃の割引がありません。身体障害者手帳・知的障害者手帳(療育手帳)では、101キロ以上の場合、割引があります。
大手国内航空会社は、近年、障害者の割引を「身体障害・知的障害のみ」から、精神障害まで拡大させ、現状では、3障害同一の割引の扱いとなっています。
これまで、精神障害の当事者や家族会の団体などが、ことあるごとに国会に請願を行いましたが、唾棄されてきました。

オリンピック・パラリンピックに伴い、国外から来る外国人障害者のJR・大手私鉄・航空会社の運賃割引は、どういう法律・通達にのっとって行われるのか?または、行われないのか。|tak1974|note


 全国「障害者」解放運動共闘会議さんは

①「精神障害者」の多くが仕事に就けず低収入な中、経済的に苦しい生活を余儀なくされていること、②交通運賃の割引が適用されないために、交通費が経済的に生活を圧迫し、社会生活を大きく制約し、自立生活を困難にしていること、さらに、③「身体障害者」と「知的障害者」には適用されているものが「精神障害者」にだけないということは差別であるということを指摘しました。

「精神障害者」にも交通運賃割引をしろ! しないのは差別だ! 〈申し入れ行動と交渉の報告〉 - zensyokyo ページ!

と記載しています。


 以上の3者の論拠をまとめると

1. 身体・知的障害者にはすでに交通機関の割引が適用されているが、精神障害者には適用されていないこと

2. 障害者権利条約 第20条 に従えば、移動に関する権利が保障されていること

3. 精神障害者は低収入で経済的な困難に直面していること

となります。以上の3つの論拠は、健常者・障害者ともに納得の上で交通機関の割引を行うに足る十分な論拠(合理的配慮の論拠)となり得るでしょうか。


 1. 身体・知的障害者にはすでに交通機関の割引が適用されているが、精神障害者には適用されていない については、

1-a. 身体・知的障害者と同程度に精神障害者が扱われる合理性があるか? 

問う必要があると私は考えます。この問いは、交通機関による移動に伴って、身体・知的障害者と同程度かそれ以上の困難が精神障害者に生じているか? と言い換えてもかまいません。


 2. 障害者権利条約 第20条 に従えば、移動に関する権利が保障されていること については、

2-a. 現状で精神障害者は移動に関する権利が不当に侵害されているか? 

2-b. 精神障害者の移動に関する権利は、交通機関の割引によって妥当な状態に回復するか?

を問う必要があると私は考えます。例えば、現状では精神障害者であることを理由に公共交通機関へのアクセスを制限されることはありませんが、それでは不十分なのでしょうか。不十分であるとすれば、何がどのように不十分であるのでしょうか。


 3. 精神障害者は低収入で経済的な困難に直面していること」については、

3-a. 他の手段によって経済的困難が回避可能か?

3-b. 精神障害者が特異的に経済的困難に直面しているとすれば、交通機関の割引という形でそれを保証することは合理的か? 

を問う必要があると私は考えます。例えば精神障害を含む障害に基づく経済的な困難を支援する方策として障害年金が設定されています。経済的な困難がある場合は、生活保護による保証も存在します。以上のような支援では不十分なのでしょうか?不十分であるとすれば、何がどのように不十分であるのでしょうか。


 以上の問いに、私はまだ答えを持ち合わせていません。考えていきたいと思います。皆さんのご意見をコメントしてください。


 精神障害者の交通機関の割引について考える際に、精神障害者側が一方的に権利を主張するだけでは健常者や身体・知的障害者の方からの理解と賛同を得ることは難しいです。精神障害者の交通機関の割引について、私が次に記事を執筆する際には「JRや私鉄、国は合理的配慮として交通機関の割引が実現可能な状態にあるか」を考えてみたいと思います。

 精神障害者の交通機関の割引についてまとめている方が上記3名以外にもいらっしゃるかと思います。ご存知の方は、コメント欄に書き込んでいただければ嬉しく思います。随時更新予定ですので、よろしくお願いいたします。


 健常者も障害者も、男も女もそれ以外も、老若男女問わず幸せに過ごせる合理的な社会を目指していきたいですね。

 それでは、よい1日をお過ごしください。


※本記事は、red_dash が2020年3月8日現在までに収集した情報に基づき作成されていますが、情報の正確さを保証するものではありません。

※リンク切れ、事実と異なる記載などお気づきの点を発見された際は、どうぞご連絡ください。

参考

精神を含む障害者の交通運賃福祉割引のあり方について再考 | 金海銀之助の忘備録~365日奮闘中~
https://www.kanamiginnosuke.net/blog/2016/09/22/welfare_reduction/

交通運賃の障害者割引制度を早く整備して!(2019年) | 金海銀之助の忘備録~365日奮闘中~
https://www.kanamiginnosuke.net/blog/2019/08/12/reduction-2019/

オリンピック・パラリンピックに伴い、国外から来る外国人障害者のJR・大手私鉄・航空会社の運賃割引は、どういう法律・通達にのっとって行われるのか?または、行われないのか。|tak1974|note
https://note.com/tak1974/n/nd15b4eac9303

「精神障害者」にも交通運賃割引をしろ! しないのは差別だ! 〈申し入れ行動と交渉の報告〉 - zensyokyo ページ!
https://zensyokyo.jimdofree.com/2015/09/20/%E7%B2%BE%E7%A5%9E%E9%9A%9C%E5%AE%B3%E8%80%85-%E3%81%AB%E3%82%82%E4%BA%A4%E9%80%9A%E9%81%8B%E8%B3%83%E5%89%B2%E5%BC%95%E3%82%92%E3%81%97%E3%82%8D-%E3%81%97%E3%81%AA%E3%81%84%E3%81%AE%E3%81%AF%E5%B7%AE%E5%88%A5%E3%81%A0-%E7%94%B3%E3%81%97%E5%85%A5%E3%82%8C%E8%A1%8C%E5%8B%95%E3%81%A8%E4%BA%A4%E6%B8%89%E3%81%AE%E5%A0%B1%E5%91%8A/

障害者の権利に関する条約(略称:障害者権利条約)|外務省
https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/jinken/index_shogaisha.html

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