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 東京は日本橋の三井不動産の複合施設「コレド室町テラス」に、オープンした話題の書店にまだ行っていない。

 このところネット書店や電子書籍の隆盛でと、地方を中心に中小の書店がことごとく閉店の憂き目にあっている。影が薄くなりつつあった書店業界に、変革が起こったと噂になっている。

 「誠品書店日本橋」と名付けられたこの書店。

聞いたことがない名前にピンと来た方もいるかもしれない。そうここは台湾の有名書店なのだ。書店業界や書店好きの間では以前から注目の有名な書店で、実は筆者も台湾に旅行した際に訪れたことがあった。

 日系のデパートにも入っていてとても雰囲気の良い書店で、なぜだか記憶に残っていた。台湾旅行によく行く人は必ずと言ってよいくらい気づかずに普通に来店している。それこそが誠品書店ある台湾では本当におなじみの支持率の圧倒的に高い書店チェーンなのである。

 なお日本では三井不動産が誠品書店と共同でライセンスの保有会社を設置し、運営は一足早く東京ミッドタウン日比谷店で誠品とのタッグを組んでいた、神奈川の書店チェーン有隣堂書店が行う“現地法人”だ。

 何がそんなに魅力的なのだろうか。売場では単に本を置いているだけではなく、文具・雑貨をはじめ、セレクト商品、食物、レストラン、一角では本にわつわるワークショップを定期的に開催する。

そこに行けば生活に潤いをもたらす何かが発見出来る。

 実は現在50店舗ほどを運営していながら、画一的なチェーンの造りにはせず、その一店一店がどれも異なるコンセプトで、その店舗のある地域や風土に根ざしたオリジナルの店作りをしていることだという。

 でもそれって日本の書店でも最近は普通になりつつある光景なのでは、と思われるかもしれないが、実はそうした書店は皆、「誠品書店」に通いそのコンセプトを租借しながら日本的なモデルにしたからなので似ているはず。

 ここのオーナーは元は厨房機器を扱う輸入商社をしていたという。1989年にオープンした一号店は当初は、クリエイティブな分野の品揃えを充実させた日本で言うところの青山ブックセンターのような専門書店であった。が後に総合書店へと進化していく。TIME誌のアジア版で「アジアで最も優れた書店」に選ばれているほどに存在が示される。最近では香港や蘇州などの中国大陸にも出店をしていて、このたびは初めて中華圏以外に出店するということで注目度が一段と高い。

 本の販売を切り口にした領域は、台北駅の地下街の運営やホテルにまで及んでいるほど誠品モデルは浸透。

最新の台湾文化発信の地としてのこの誠品スタイルの存在が日本でも受け入れられるだろう。結果として書店の魅力、良さをアピール出来れば、活字文化の魅力向上にもつながる。台湾の店舗では普通に日本の書籍コーナーが広く獲ってあり、日本文化の普及にも貢献をしてくれている。

 日本の書店界の現状は個人営業の小規模店が出版取次企業の再編や、事業承継難もあり数が減少、大手巨大書店のシェアが相対的に高まった。一方で、各地に本のラインアップは少ないが、あるジャンルに特化したようなマニアックな若手経営者が運営する個人書店が静かに増えていて、ワークショップなどを収益化しつつ二極化と言える現象が起きている。

 日本独自の再販という書籍流通の仕組みがあるので、

 外資の参入はこれまでなかったが、その間にも欧米では書店自体が斜陽化しつつある。一部に“世界で最も美しい書店”が注目を集めつつ、“アジアで最も勢いのある書店”の進出はその対比的にも面白く感じる。

 売れ筋を大量に平積みしてまるで図書館のような大型書店とも、オーナー好みの個人書店とも異なるジャンルの書店誕生なら、それはそれで日本の都市の文化的バロメータの維持につながる。

やはりローカルでも文化のレベルが生き残りの鍵となる

 図書館や書店は都会から地方に移住する者にとっては、その行き先を決する際に考えるあったらいいなの上位に来る施設の一つである。

 東京でさえ、あの青山ブックセンターは閉鎖。今も昔もある一冊の本との出会いが生き方を変えるのは同じである。Amazonや電子書店を利用する場合に果たして、その貴重な一冊との巡り会いは生まれるのだろうか。表紙デザインも含めて実物が一堂に並ぶ書店で目に付いた一冊を手にとる出会いを感じて欲しい。

 広島市の郊外商業施設にTSUTAYAがプロデュースする「蔦谷書店T—SITE」

をオープン時に見て来たが、大型商業施設のキーテナントとして見事にライフスタイル提案型の切り口で書籍売場を創り上げていた。書店でもキーテナントになり得るというモデル。あくまで書籍は多くある商品の一部分。モノと本を編集の力でまとめるとまた魅力が増す。

 実はこれも誠品が編み出した手法ではあるのだが、本の並べ方も含めてこうやればまだまだモノは売っていけるという思いを強く感じた。逆に魅力ある製品でものづくりのドラマを秘めたものならば、ここでの販売スタイルは一般の物販店も参考になることは多くある本の編集的な販売スタイルの手法。いわば編集力こそが生き残りの肝なのではなかろうか。


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