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国立理系大学院生のM2が教える「研究テーマの見つけ方・論文の読み方・書き方まとめ」

こんにちは。国立理系大学院 修士2年のREOです。
私は大学で研究を進めるなかで、「どうやって研究テーマを決めるのか」「論文ってどこから手をつければいいのか」など、色々と悩んできました。特に日本の理系研究室だと、研究や論文執筆のノウハウが暗黙知化していて、先輩たちから口伝えで学ぶことが多いですよね。

さらに、理系の研究室には大きく分けて「指導型」と「放任型」があると感じています。一般的には教授がいくつかの研究テーマを用意し、それを先輩たちから代々引き継ぎ、チームで研究を進めるいわゆる“指導型”の研究室が多いかもしれません。一方、分野の大枠さえ合っていれば、学生が自分で研究テーマを決めて好きな研究をして良いという“放任型”の研究室も一定数存在します。私が所属しているのはまさにこの放任型で、自由に研究テーマを選べるのは魅力的な半面、右も左もわからない学生が一からテーマを模索するのはなかなか大変でした。

そこで、もうすぐ卒業を控えた僕が、研究初心者(学部4年生や学部3年生)に伝えている内容をここでまとめてご紹介しようと思います。ちょっとしたリサーチのコツや、私なりの“リサーチの仕方”“論文の読み方”“執筆のステップ”などをまとめましたので、「研究室に配属されたばかりで何から手をつければいいのかわからない……」という方の参考になれば幸いです。


目次

  1. 研究テーマの見つけ方

  2. 文献調査・検索のやり方と “論文の読み方”

  3. 研究計画の立て方

  4. 論文執筆の流れ

  5. 学会発表や研究室内での情報共有

  6. Notion を活用した研究管理

  7. 後輩に教えるときのポイント

  8. まとめ


1. 研究テーマの見つけ方

1-1. 自分の興味・関心を起点にする

  • 興味があるキーワードを書き出す
    まずは自分が「なんとなく面白そう」「気になる」と思うキーワードをざっくりリスト化。

  • 研究室の強み・リソースを確認
    所属する研究室で使用できる設備、先生や先輩の専門分野、データの有無などを考慮しつつ、自分の興味と結びつけていく。

1-2. 先行研究を俯瞰し、ギャップを探す

  • Google Scholar で幅広く検索

    • キーワードを広めに設定し、過去 2〜3 年の文献に絞って最新動向をキャッチ

    • 興味深い論文があれば、そこから引用文献・関連文献をたどって横展開

  • レビュー論文 (Review Paper) の活用
    分野全体のトレンドや主要課題を一気に把握しやすい。

1-3. どこが未解決なのかを整理(マッピング)

  • 先行研究でカバーしきれていない部分
    「この実験はA手法しか試されていない」とか「ここはまだ検証されていないんじゃないか?」といったポイントをメモ。

  • 自分が解決できそうかを検討
    研究室の環境や自分のスキル、スケジュール、予算などを総合的に考えてテーマを絞る。


2. 文献調査・検索のやり方と “論文の読み方”

2-1. 文献検索の基本

  1. Google Scholar を使いこなす

    • 「"deep learning" AND "medical imaging"」のようにクォーテーションマークやAND/OR/NOT を活用

    • “引用文献”や“関連する論文”から横方向に検索を広げる

    • 「過去◯年」に絞って最新の研究をチェック

  2. レビュー論文・専門書籍に目を通す

    • 分野を俯瞰するのに非常に効率的

    • 主要な歴史と用語を一度に把握できる

  3. 文献管理はNotionで行う

    • Notionのデータベースにまとめる、PDFも埋め込めるので便利

2-2. 論文の読み方のポイント

最初から最後まで全部読むのは大変。まずは以下の順序を推奨しています。

  1. タイトル / アブストラクト(要旨)

    • この論文を読む価値があるのかを 1 分で見極める。

  2. イントロダクション(序論)

    • 研究の背景、先行研究、目的がコンパクトにまとまっている。

    • “どんな課題を解決しようとしているのか”を理解する。

  3. 結論(Conclusion)

    • 「この研究で何がわかったのか」を先にチェックすると、全体像がつかみやすい。

  4. 必要に応じて手法(Methods)と結果(Results)

    • 同じ手法を使うなら Methods をしっかり読む

    • 新規性や有用性の根拠を知りたいときは Results と Discussion に目を通す

Point: 最初は Abstract → Introduction → Conclusion を軽く読んでから、「読む価値あり」と思ったら深掘りしていくやり方が効率的です。


3. 研究計画の立て方

3-1. 研究の目的・仮説を明確に

  • “何を明らかにしたいか”を一文で言えるようにする
    例:「A手法とB手法のどちらが、〇〇の性能を向上させるのかを比較検証したい」

  • 先行研究と自分のアイデアの差分を意識
    どの部分が新規性になるのか、学術的・社会的にどんな意義があるのかを整理。

3-2. スケジュールを作る

  • 実験 / シミュレーション / 調査の工程を洗い出す
    測定 → 解析 → 結果考察 → 追加実験、という流れを想定。

  • バッファ期間を必ず設定
    研究にはトラブルがつきもの。余裕のないスケジュールは危険。


4. 論文執筆の流れ

4-1. 一般的な論文の構成

  1. Abstract(要旨)

    • 研究の背景、目的、結果、結論を簡潔に

  2. Introduction(序論)

    • 背景、先行研究、何が問題で何を解決したいのか

    • 特に背景は、世界全体や社会など大きな背景から、より具体的な小さな背景へと繋げて書くのがよい

  3. Methods(方法)

    • 実験条件やアルゴリズム、装置、解析手法などを詳しく

  4. Results(結果)

    • 実験やシミュレーションの結果を客観的に提示

  5. Discussion(考察)

    • 結果の意味や先行研究との比較、新たな示唆

  6. Conclusion(結論)

    • 研究の総括と今後の展開

  7. References(参考文献)

    • 関連する論文やデータソースを整理

4-2. 書き進めるコツ

  • 自分が書きやすい部分から書く
    例えば図表や表を先に作る → Methods → Results → Discussion → Introduction → Abstract の順番でもOK。

  • 査読を意識してチェック
    「先行研究とどこが違う?」「仮説をどれだけ裏付けられている?」といった観点で見直す。


5. 学会発表や研究室内での情報共有

5-1. 進捗報告会の活用

  • スライドで定期的に報告 → フィードバック → 修正
    研究内容を言語化・可視化する練習にもなる。

  • 質疑応答を自分の研究の棚卸しに
    他の人からの視点で気づきを得られる。

※「スライドで」と書いたが、報告のために毎回スライドを作るのは面倒なので、私はNotionにまとめて、画面共有で見せている。
スライドを作ることが目的ではないので、伝える手段は何でもいいはず、そこに時間をかけるのはもったいない。

5-2. データやノウハウの共有

  • 先輩のスクリプトや実験手順を参考に
    ゼロから自分だけでやるより断然スピードが早い。

  • 学会や勉強会への参加
    自分の分野だけでなく、他分野の研究動向にもアンテナを張るとアイデアが広がる。


6. Notion を活用した研究管理

私が特におすすめしているのが Notion の活用です。論文や研究メモの管理を一元化できるうえ、共同編集しやすいのが大きなメリット。

6-1. Notion で扱える内容

  • 文献リスト / 文献メモ

    • タイトルや著者、簡単な要約、URL をデータベース形式で管理

    • キーワードやタグを付けておけば検索性が高まる

  • 研究メモ / 進捗ノート

    • 毎日の作業ログやアイデアを記録

    • 重要な図や計算結果はスクショを貼り付けておくと後で見返しやすい

  • スケジュール / タスク管理

    • カンバンボードやカレンダー機能で締め切りやタスクを見える化

  • ミーティングの議事録

    • 先生や先輩とリアルタイムで共有・編集

    • 後から議事録を検索できるので振り返りが簡単

6-2. 共同編集のメリット

  • ラボメンバーと情報共有がスムーズ
    「このデータもうちょっと詳しく見たい」「この文献のリンクどこ?」などがすぐ解決

  • 先生や先輩からのフィードバックが即時にもらえる
    コメント機能で指摘やアドバイスが書き込まれるのが便利

6-3. 運用のコツ

  • テンプレートを作る

    • 「文献調査用テンプレ」「実験メモ用テンプレ」「ミーティング議事録テンプレ」など

  • 定期的な整理

    • 週1回程度、データベースやページの構造を見直すと情報が散らばりにくい

  • タグ・ラベルを意識

    • “分野”“ステータス”などで検索・絞り込みしやすくなる


7. 後輩に教えるときのポイント

  1. 実例やテンプレートを見せる

    • 口頭だけでなく、実際の論文やスライド、Notion ページなど“本物”を見せると理解が早い

  2. タスクを細分化する

    • 「まずは Methods のドラフト」「次は結果パート」など、週単位や日単位で進捗を管理

  3. こまめにフィードバック

    • 定期的なミーティングで書き方・読み方の疑問をすぐ解決する

  4. 失敗談や試行錯誤の過程も共有

    • 研究は思い通りにいかないことが当たり前。失敗したときのリカバリー策も学んでもらう


8. まとめ

  • 研究テーマ選び

    • 自分の興味 × 研究室の強み × 先行研究のギャップを見極める

  • 文献調査 & 論文の読み方

    • Google Scholar やレビュー論文を活用し、まずは Abstract → Introduction → Conclusion を優先

  • 研究計画の立て方

    • 目的・仮説を明確にして、バッファ付きのスケジュールを組む

  • 論文執筆の流れ

    • 論文の一般的な構成を押さえ、自分が書きやすいところから始める

  • 学会発表 & 研究室内情報共有

    • スライドやミーティングを通じて定期的に進捗を共有し、フィードバックを得る

  • Notion で効率アップ

    • 文献リストやタスク、議事録などを一元管理。チーム内共有がスムーズ

  • 後輩への指導

    • 具体例とテンプレートを用意し、タイムリーなフィードバックでサポート


いかがでしたでしょうか?
今回は、私が後輩(B4 など)に伝えている研究ノウハウを、noteでまとめました。大学の研究室では、暗黙知が多く、なかなか体系的に学べない部分があると思います。少しでも「研究テーマ探しのヒントが欲しい」「論文の読み方に迷っている」「スケジュール管理をうまくしたい」という方の助けになれば嬉しいです。

私が後輩用に作成したNotionの研究管理テンプレートを配布しています!

こんな感じです↓

以下のリンクから無料でダウンロードできます!

ぜひ、自分の研究スタイルに合わせてアレンジしてみてください。質問や感想などあれば、コメント欄やSNSなどでお聞かせいただけると励みになります!

それでは、快適な研究ライフをお送りください。最後までご覧いただき、ありがとうございました。

p.s. この記事の見出し画像は、AIで作りました。なかなか上手くできましたฅ⁠^⁠•⁠ﻌ⁠•⁠^⁠ฅ


おすすめの研究ツール(25.01.14 追記)

1. Overleaf
ブラウザ上で LaTeX を使って論文やレポートを執筆できるサービスです。インストール不要で共同編集ができ、バージョン管理も自動化されるので、複数人での作業や査読対応にとても便利です。
2. Google Scholar
論文検索の定番。キーワード検索はもちろん、引用文献をたどることで効率よく先行研究を見つけられます。「過去◯年」で絞ると最新の研究動向が把握しやすいのも魅力です。
3. Felo
新しい AI 検索サービスで、検索時に「論文で検索する」モードを指定できるのが特徴。通常のウェブ検索ではなく、論文ベースで結果を得られるため、自分の研究領域とマッチした情報をスピーディーに探せます。Notionとも連携可能

これらのツールをうまく使い分けることで、文献調査から執筆作業までを大幅に効率化できます。自分の研究スタイルに合ったものを見つけて、ぜひ活用してみてください。

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