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オーストラリアでは救急車も消防車も無料ではない。まだ救急車は呼んだことがないが消防車は呼んだことがある。

日本の人は知らないかもしれないが、
オーストラリアでは救急車も消防車も無料ではない。
(多分アメリカもそうだ。貧乏人は具合が悪くても自力で病院に行くか、タクシーを呼ぶ。)

日本ではお気軽にタクシー代わりに救急車を呼ぶ人がいると聞いた。
そういう人は後々何らかの報いがあろう。

オーストラリアでは万が一救急車を呼ぶときのことに備えての保険もあるくらいだ。もちろん俺も保険のオプションに”救急車”を入れている。
一度呼ぶと、何千円とかじゃなく、何万円かとられるのだ。
怖ろしくて病気が悪化してしまうかもしれない(逆に治ってしまうかもしれない)。

かくいう俺は救急車は呼んだことはないが消防車は呼んだことがある。

「一回か?」って? Non, non, non!! 三回だ。

最初は2011年のこと。
前の日に買ったばかりのトースターでパン焼いたら、チャンネルを合わせていなかったために黙々と煙が…。
それで警報機が待ってましたとばかりにウォンウォンと雄叫びを…。

消防士が来て事情を3秒で説明した。
いや、3秒もかからなかったかもしれない。
俺が真っ黒に焦げたパンをつまんでブラブラさせたのを見た瞬間にすでにすべてを悟ったはずだ。言葉で説明するまでもなかったろう。

「ゴールドコーストなら$300以上はとられます。」
「$5000来ますよ。罰金。その後手紙を書いたら釈放されます。」
などと、以前聞いた恐ろしい言葉が脳裏を過る。

俺は心底怖ろしくなって去っていく消防士を呼び止めて聞いた。
$5000なんて取られたらどうやって生きていけばいいのか。
「俺は何かしなくちゃいけないですか?」

エレベーターに乗ろうとした男の消防士が振り返って言った。
「もう二度とパンを焼くな。」

このとき以来、トースターでパンを焼いていない。
ご存知のことと思うがまじめ一本でここまで生きてきている。

その真面目さを神様がご覧になっておられたのだろう、
罰金の請求が来ることはなかった。


やがて2度目が訪れる。
トーストを焼けなくなった俺はラーメン作成に夢中になる。
(いやいや、これは言い過ぎ)

ランチに「ラ王」を作ろうと、デスクの脇に置いてある湯沸かしポットのスイッチを入れた。すると警報機がウォンウォンと雄叫びをあげ始めるではないか。

「誰だよ、まったくこの昼休みの忙しい時にw パンでも焦がしたか。おっちょこちょいだな。」なんつって、自分のことを棚に上げて、沸いた湯をキッチンに持って行って、ラ王に注ぎ、レンジに入れる。

警報機は相変わらず鳴っていて、マニュアル通りなら全員避難しなければいけないところだが、どうせおっちょこちょいな誰かのちょっとしたミスで鳴っているだけだ。火事なんかではない。

それより何よりもうラ王を作り始めているのだ。こんな高級ラーメン普通には拝めない。伸びて食えなかったじゃ済まされない

ということで無事キッチンでラ王を堪能していると、エレベーターの到着の音がして消防士がズカズカとやってきた。

避難してないから怒られるかと思ったが、そんな俺の前を通過して、なんと書道教室に入っていく。

何、何、何?
と食べかけのラ王の入った器を持ったままキッチンから顔を出す。すると一人がドアから出てきて右手の人差し指を手前に動かして「ちょっと来い」の合図を送ってくる。

慌てて行ってみると、「この警報機が鳴った」と湯沸かしポットがあった斜め上の警報機を指さすではないか。そうなのだ。湯を沸かしたときの蒸気で警報機が反応してしまったのだ。

以来、ポットで湯を沸かさぬ日々を送り続けている。

前回はたまたま罰金を免れたが今度こそ、と覚悟はしていた。
しかしこのときも料金の請求はなかった。


そんなことでは終わらないのが俺の良いところでもあり、全然良くないところでもある。

3度目もやっぱり訪れる。

土曜日の朝。
書道教室、お稽古中。

俺は雰囲気づくりのためにアロマオイルを焚いていた。

器に水を入れてオイルを数滴たらす。
そして下から火の点いたキャンドルで温めるのだ。

その器は10年くらい前に日本に帰ってしまった元シェアメートから貰ったもので、少々年季が入ったがまだまだ使えそうな代物だった。

はずだった。

そこから突然火が上がったのだ。
たまたま近くにいたから驚いて水をかけた。
幸いすぐに火は消えたのだが、モクモクと酷く煙がとまらないではないか。

すぐに換気を試みたが時すでに遅く、警報機の知るところとなる。
そして数分後にはまた消防士と対面することになるのであった。

と、なんとこのときも料金を請求されることはなかった。
嘘のようだが本当の話だ。


消防車の料金請求はただの都市伝説なのかもしれない。


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