【娯楽に金を払う】行為が舐められた事について~2022.8.30『爆裂夏祭り』~
はじめに
「中野サンプラザでプロレスがある」
そんな知らせを聞いたのは、初夏の頃だった。
興行の雰囲気がイマイチ読めないけれど、ポスターには船木誠勝や高岩竜一、佐藤光留の写真が入っている。
中野区民で、しがないプロレスファンの端くれとしては、何となく内容が気になっていたものの、行く気分までは中々高まらずにいた。
行くと決めたのは当日の朝だ。
2023年7月に閉館が決まっている中野サンプラザで、プロレスを観戦する。
チケット代は高めだったけれど、次にプロレスが行われる保証もアテもないなら、ここで払う5,000円なんて安いもんだろう。
閉館してしまったら、幾ら札束を積んだところで、そんな体験なんて出来ないのだから。
思えば、その選択が全ての間違いだった…。
演者が客を舐めていた事について
2022.8.30、運良く仕事も終えた私は、自由席5,000円を購入して中野サンプラザへ出向いた。
会場に入る手前、関係者用の入場レーンに列が出来ていた一方、一般来場者用のレーンが私1人という状況…。
この時点で、何となくこの日の興行の雰囲気を掴み取った私。
(招待客多いのかな…)
18時30分スタートという事だったが、場内では既にアイドルのライブが行われている。
今回はライブ等もあるとのことで、念のために係員の方に撮影可能か伺うと、プロレスの試合含め撮影禁止との回答。
正直、試合の写真が撮れない事に少なからずショックを受けた私だったが、そんなことは大した話ではなかった。
問題は、イベントの中身である。
今回私がnoteで観戦記を綴っているのも、Twitterの字数では色々書ききれない思いを感じたからなのだが、簡潔に結論を一つ…。
「金取るってレベルじゃねえよ!!!!」
早い話が、単純に人からお金を取って、その対価として見せる内容には程遠いものが舞台上で展開されていたのだ。
『学芸会』と言う批判が口をついて出そうになったが、よくよく考えると、『学芸会』に対しても失礼と思う有様。
『学芸会』は技法に拙さがあるだけで、相手を楽しませるためにクオリティを高める本質は変わらないと私は考えているので…。
その諸悪の根源は、ボクシングマッチと、クリエイターによるエンタメプロレスだった。
【格闘技に対するリスペクトの無さ】という方向で批判することも可能だったんだろうけど、それ以前に、私は別の点で深く失望した。
何故なら、アニメやゲームで名を成していると紹介されたクリエイター達が、軒並、人を楽しませるものをクリエイトできていない(しようとしていない)から。
まるで、「会社の飲み会で披露するネタ」レベルのものを、ブラッシュアップすらせず垂れ流しで披露するクリエイター達。
最早、「これくらいで良いだろう」と客を舐めているのではないか、という疑念さえ生まれた程だ。
私の琴線に刺さらなかったというのも否めないのだろうけど、金を取って人を楽しませる事へのやる気の有無が透けて見えてしまった。
そういう態度は、好き嫌いを超えて、肌感覚で人に伝わってしまう事に気づいた。
試合中、リハーサルの存在を開けっ広げに明かす場内実況。
後からeスポーツ実況の人だと知ったが、実況スキル以前に、【実況する対象への敬意や下調べ】が明らかに欠けていた。
その実況から話を振られたゲスト解説の女性も、ベストオブカラアゲニストという立場からこんな反応。
思わず、開いた口が塞がらなかった…
【エンタメ業界を引っ張る6人】と大々的に紹介された、クリエイターによる6WAYマッチでは、こんなやり取りが展開された。
自由席5,000円のチケットを買って、このやり取りを見させられる地獄。
『ジョジョの奇妙な冒険』や『鬼滅の刃』といった有名作品のゲーム等に携わる人達が繰り広げる、あまりにも幼稚なやり取りと見世物に、失礼ながら「この人たちは本当に何かをクリエイトしている人たちなのか…」という不安に駆られた。
「僕の知っているプロレスと違うんですよね…。」
絶望と失望が漂う中、20時30分過ぎにイベントのターニングポイントが訪れる。
中野区議会議員の酒井たくや氏による挨拶だ。
新日本プロレスのトレーナーの秘書を務めた経験もあるという酒井氏は、中野サンプラザの舞台上でこのような言葉を残した。
温和な口調で言葉を選びながらも、出演者に向けてハッキリと刺された釘。
後で氏の経歴を調べてみると、【アントニオ猪木営業軍団(プロレス興行のチケット販売)トップセールスマン】という輝かしい過去が載っているではないか。
そんな酒井氏が放つ「僕の知っているプロレスと違う」という言葉が、特段重い意味を持って響いたし、私の感じていたモヤモヤした思いも救ってくれた。
この一言で、チケット代が無駄にならなかったと私は言い切れる。
偶然か必然か、酒井氏の挨拶後、会場の空気が一変した。
直後にパフォーマンスを披露したHIDE×HIDEの2人は、この日初めて「金を払って良かった」と思える素晴らしい内容だった。
宴会ネタにまみれた場の空気を、一瞬で引き締めるプロのスゴさを目の当たりにした。
開演から約2時間半後の21時前に漸くスタートしたプロレス3試合も、それまでのエンタメ系()に比べて明らかに客席の反応が違った。
(※前述した撮影禁止については、プロレス3試合のみ写真OKとのアナウンスがなされました)
終わってみれば、宴会ノリと内輪ノリで埋め尽くされた前半部分が嘘のような満足感。
約3時間、スリリングな長編映画を見ているかのようなテンションの乱高下だった…(笑)。
まとめ
今回の『爆裂夏祭り』を見て私が考えさせられたのは、【人が娯楽に金を払う事の本質】だ。
金を取って何かを見せる事にストイックな人と、そうでない人の意識の差が、ハッキリと舞台上に現れていたのである。
この日、相手を楽しませることに徹していたのは、クリエイターやゲーム関係者ではなく、後半に登場したHIDE×HIDEやプロレスラー達だった。
今回の私の批判的なツイートに対して、他の人から「舌鋒鋭い(笑)」とか「そもそもメンツ的に予想できたことでは…?」という指摘を受けた。
言わんとしている事は、何となく分かる。
それでも、私が今回これだけハッキリ批判しているのは、出演した有名クリエイターと呼ばれる人たちが、金を取っている相手に見せる為の納品物を提示できていないどころか、それを放棄していた点にある。
それは、【好き・嫌い】や【刺さる・刺さらない】以前の問題であり、創作者として致命的ではないだろうか?
一部のゲーム・アニメのクリエイターや漫画家達が、客から金を取って楽しませる行為そのものを舐めていた事が、舞台上から透けて見えた。
その事に私は一番幻滅したし、腹立たしさを覚えたのである。
そして、金を払った上で演者から馬鹿にされ、それを批判したら、見ていない人に嘲笑される私。
地獄とはこの事を指しているのか…。
とはいえ、最初は5,000円を払って観に行ったことに後悔しか無かったけれど、酒井氏のマイクを聞いた時の感動や、プロレスの満足度、社会勉強を思えば、この体験は決して無意味では無かった。
その一歩が、今回のnoteである。
この5,000円を、ただの出費で終わらせるわけにはいかないのだ。
このズンドコ社会勉強を、私は決して無駄にはしません(血涙)
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